今年の10月以降、すべての地方公共団体で電子納税が可能となります(一部税目を除く)。これにより納税業務全体が効率化できるかどうか考えてみたいと思います。
目次
いままで電子納税を勧めてこなかった理由
普段から「効率化しましょう」と書いているのですが、法人の電子納税については、お客さまにお勧めしていません。
その理由は、「地方税の電子納税の環境が整っていない」からです。
法人税や消費税などの国税については、銀行の窓口に行かずに電子納税をすることも可能でしたが、地方税(住民税・事業税など)は地方公共団体ごとに対応が異なり、電子納税できないケースがほとんどでした。
そのため国税だけ電子納税に変更しても、結局地方税については納付書を持って金融機関の窓口に行ってもらう必要があったため、トータルとして手間が増えると考えていたためです。
地方税についても電子納税できるようにならないかな、と長いこと待っていました。
2019年10月から地方税の電子納税の何が変わるのか?
そうした中で、今年の10月以降、「地方税共通納税システム」という仕組みが稼働することとなり、すべての地方公共団体について電子納税が可能となりました。
(ただし今のところ、固定資産税や自動車税は対象外となっています。)
現在のところ、eLtaxのホームページに掲載されている資料は、
- 地方税共通納税システムの概要
- 地方税共通納税システムに関するQ&A
の2点であり、実際の操作方法などについてはまだわかりませんが、掲載されている資料から、納税業務を効率化できるか考えてみたいと思います。
主なポイントを確認してみましょう。
- 2019年10月1日からすべての地方公共団体で電子納税が可能となる。
- 納税可能な税金は、法人都道府県民税・法人事業税・地方法人特別税・法人市町村民税・事業所税・個人住民税(特別徴収分・退職所得分)。
- 納付方法は、インターネットバンキングとダイレクト方式のみ(クレジットカードやコンビニ納付は未対応)
- 納税者は、納付時の手数料負担なし。
- 複数の地方公共団体の税金をまとめて支払可能(同一税目・同一申告区分・同じ事業年度単位(特別徴収の個人住民税は同一支払年月)の場合)
- e-Tax(国税)分とeLtax(地方税)分を、まとめて支払うことはできない。
- ダイレクト方式であれば、代理人が納税手続き可能。
- 納税手続きは、PCDESK(インストール版・WEB版)か対応する市販税務ソフトで行うことになる。
地方税共通納税システムにより、期待できる点・心配な点
期待できる点
すべての地方公共団体が対応し、かつ同一支払年月分であれば複数の地方公共団体の税金をまとめて支払可能であることから、個人住民税(特別徴収分)の納税については、効率化できる可能性が高いと思われます。
個人住民税(特別分)については、概要資料の中に
「納税者が納付金額を直接入力し納付する税目」
との記載があるため、納付金額は納税者側で入力する必要があるようです。
給与ソフト等で納税額を管理されている企業であれば、納税データはありますので、あとはソフト側がデータインポートに対応してくれれば、効率化は進むでしょう。
(もし、PCDESKにデータインポートできなければ、まったく意味のない仕組みになってしまいますが・・・)
心配な点
一方、申告書を提出して納税する法人住民税や事業税などについては、予想はしていましたが、やはり法人税・消費税などの国税とまとめて支払うことはできません。
そうなりますと、法人都道府県民税と事業税をまとめて支払できると仮定しても(この点資料からはどうなるかわかりません)、一般的な企業であれば、申告書を提出した後に、
- 法人税の納付手続
- 消費税の納付手続
- 都道府県(住民税・事業税)に対する納付手続
- 市町村に対する納付手続
と最低4回の手続きが必要となる可能性があります。
申告・納税を自己完結されている企業であれば、申告からそのまま納税手続きに進めますので、問題はないと思いますが、税理士に申告を依頼されている場合、納税業務が本当に効率化できるのか、少し疑問が残ります。
ダイレクト納付の届出をしておいて、税理士がダイレクト納付の指示までしないと、
「何回も納税手続きするの面倒だから、今まで通り納付書もらって、金融機関で支払った方がラク」
といわれるのではないかという不安が・・・。
このあたりは、操作方法が明確になった時点で効率的な運用方法を検討する必要がありますが、今の時点では市販の税務ソフト会社に期待することにしたいと思います。
(PCDESKに期待するのはちょっと無理かなと)
蓋を開けてみたら、全国に支店を持っているような企業しか効果はなかった、ということがないことを祈ります。
やっぱり国税もまとめて支払いたい!
今回は、現時点でオープンにされている情報だけで判断していますので、推測の域を出ない内容が多々あります。
詳細についてはまだまだわからないことが多いですが、それでもすべての地方公共団体で、電子納税ができるようになることは大きな改善だと考えます。
一方で、納税者の視点に立てば、
「国税も地方税も同じ税金なんだから、まとめて支払できればいいのに」
という考え方もあるでしょう。
この点は今回は実現しませんでしたが、行政手続きコストの削減に向けて今後の改善に期待したいと思います。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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