前回ホームページでの集客の話について書きましたが、セミナーの中で「専門性を前面に出すべき」との説明がありました。
他の税理士さんのホームページも色々と拝見させていただくことが多いのですが、よく見かけるのが「節税やります」というアピールです。
今回は「税理士が行う節税」について考えてみたいと思います。
1.節税しなけりゃ税理士じゃない?
最初に結論から言えば、税理士であれば「節税」を検討するのは当たり前、というのが私の意見です。
お客様から申告書作成のお仕事を受ければ、法律上問題なく適用できる節税策については積極的に検討していくことになります。
例えば、相続税でいえば「小規模宅地等についての課税価格の計算の特例」という規定があります。
例としてはご夫婦で住んでいた土地を配偶者の方が相続すれば土地の評価額を80%減額できるという制度です。
(他にも適用できるケースがありますので、詳細をお知りになりたい方は専門家にご相談ください。)
この制度は土地の金額が「評価額の80%」になるのではなく「評価額を80%減額」するため非常に効果が大きいです。
従って税理士が相続税の申告書を作成する際、相続税額を減らすためにまず最初に検討するといっても過言ではない「節税策」であり、この検討をしない税理士はいないと思います。
そしてこうした対応をすることについて税理士として「節税!」とアピールすべきことなのかどうかについては悩ましいところです。
もちろん税金の話ですから、節税のための対策が適用できるかどうか法律上グレーなケースは当然出てきます。そうした場合でも「グレーゾーンを白黒付けてきっちりやります!」というのが「節税に強い税理士」ということになるのでしょうか?
2.白黒きっちりつけるよりも・・・
私はどちらかというと取り得る方法が2つ以上ある場合には、リスクとリターンをお客様にご説明して税理士としての意見・見解も述べた上でお客様に選んでもらうというスタンスを取っています。
そういう意味では「白黒きっちりつける」ような「節税税理士」にはなれません。
この点についてはお客様との相性があると考えています。
「先生、全部任せるからちゃんとやっといてよ」というお客様もいれば、「説明をちゃんと聞いた上で自分で決めたい」という方もいらっしゃいますので、自分の考え方・スタンスについては少しずつこのブログで発信していくつもりです。
「法律上問題なく節税できることはきちんとやる」というスタンスで行動していますので、事務所紹介の中にも「節税頑張ります!!」とはっきり書いてないのですが、先般のセミナーでも「ユーザー目線を大事にすべき」とも言われていましたので、自分の考え方が整理できた段階で事務所紹介の中にも追記していきたいと思います。
3.節税するよりも大事なこと
「節税」を検討する一方で、「節税」のことばかり考えていると、そのお客様の経営に取って最適な提案ができないのでは?という心配もあります。
極端な例でいえば、経費を増やせば利益が減って税金は減りますが、事業が拡大基調にある経営者に対して当面必要でない経費にお金を使うようにアドバイスすることが税理士として本当に正しいのかどうか?
状況によっては、税金が減らなくてもトータルとして手元のキャッシュを増やす方向にアドバイスすることも必要だと考えています。
「税金減りました、でも資金も減りました、だから次の事業拡大に向けた投資ができません」なんてことになったら本末転倒です。
税理士だから適法な範囲内でできるだけ税金減らすのは当たり前、でもそれだけじゃない。
経営者が将来に亘り経営を継続できるようアドバイスしていくことこそが最も大事だと考えています。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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