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1.iDeCo(イデコ)ってご存じですか?

皆さん、「iDeCo」(イデコ)という言葉聞いたことありますか?

「個人型確定拠出年金」の愛称として2ヵ月ほど前に決まったようです。「個人型確定拠出年金」というのは、自分が拠出したお金を自分が選択した商品で運用して、その運用結果により将来受け取る年金額が変わるという年金制度です。

従来は個人事業者が主な対象で、専業主婦(夫)や公務員、企業年金制度がある会社のサラリーマンの方は対象外でしたが、2017年1月からこうした方々も個人型確定拠出年金の対象に含まれることとなったため、にわかに注目を集め始めています。

かくいう私は、以前勤めていた会社が確定拠出年金を導入した際に、
「年金なんて本当にもらえるわからないけど、自分の運用次第で年金額決まるんならその分はもらいそびれることはないだろう」
という考えで加入しました(そのときは税金のメリット等は何も考えていませんでしたが)。

このとき加入したのは企業型確定拠出年金ですが、会社を辞めた際に会社型から個人型へ乗り換えて現在は個人型確定拠出年金に加入しています。

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2.個人型確定拠出年金の税制上のメリット

確定拠出年金の税制上のメリットとして挙げられるのは次の3点です。

1.掛金全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得金額から差し引いてもらえる
2.運用期間中の運用益に税金がかからない
3.将来受け取る際には、退職金もしくは公的年金と同様に取扱ってもらえる(税金計算上、控除が受けられる)

2については本来は各個人の資産残高に対して税金をかけることになっているのですが、現在は課税が凍結されている状況のため、将来的にもメリットとなるのかどうかわからない面はあります。

一番わかりやすいメリットは1です。生命保険などに加入しても、最高で1年間に12万円しか控除してもらえないのに対して、確定拠出年金は掛金全額がそのまま所得金額から差し引かれます。

例えば自営業者の方であれば毎月6万8千円まで掛金をかけることができますので、最大で年間81万6千円をその年の所得金額から控除することができます(掛金の上限は加入者の立場により変わります)。
所得控除のため、収入の多い人(=所得税率の高い人)ほど節税メリットを享受しながら、将来への備えができるという訳です。

但し、個人型確定拠出年金には手数料がかかります。手数料は毎月の掛金から徴収されますが、窓口となる金融機関ごとに手数料の金額は異なりますし、取扱っている運用商品も異なりますので(当然商品毎の信託報酬等も異なります)、加入される際にはこのあたりのコストや商品をよく検討してから申し込む金融機関を選ぶべきです。

3.本当にすべての人に税制上のメリットがあるのか?

退職所得控除額の計算に注意

個人型確定拠出年金は税金の面からはいいことずくめのように見えますが、加入する方の立場によっては気をつけないといけない点もあります。

特に気をつける必要があるのが退職金の額が大きいサラリーマンの方です。受給時に税制上のメリットをあまり受けられないケースも考えられます。

どういうことかといいますと、確定拠出年金は一時金若しくは年金として受け取ることができます。
一時金として受け取るケースで考えますと、受け取る金額から退職所得控除額といわれる金額を控除した残額の1/2に対して税金がかかります。

この退職所得控除額は次のように計算します。

●勤続年数が20年以下の場合: 40万円×勤続年数
●勤続年数が20年超の場合 : 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

ところが、勤めていた会社から退職金を受け取った年以後15年以内に確定拠出年金を一時金として受け取ると、勤務期間と加入期間が重複する部分については確定拠出年金を受け取った際の税金計算に使用する退職所得控除額から減額されてしまいます。

具体例で説明すると次のようになります。

●60才で21年間勤めた会社を退職して退職金1000万円を受け取る
(1)退職所得控除額 800万円+70万円(21年-20年)=870万円
(2)(1000万円-870万円)×1/2=65万円に対して税金がかかる

●その後65才で個人型確定拠出年金500万円を一時金として受け取る(加入期間15年、会社勤務との重複期間15年)
(1)通常の退職所得控除額 40万円×15年=600万円
(2)会社勤務と加入期間の重複期間による調整金額 40万円×15年=600万円
(3)今回の退職所得控除額 (1)-(2)=0円
(4)(500万円-0円)×1/2=250万円に対して税金がかかる

会社から退職金を受け取っていない場合には、本来退職所得控除額が600万円あるため確定拠出年金の一時金500万円には税金がかかりませんが、このケースでは会社から退職金を受け取った際にすでに退職所得控除額を使ってしまっているため確定拠出年金の一時金に税金がかかるということになります。

退職時期と確定拠出年金の受給時期を15年超ずらすことは恐らく難しいと思いますので、会社から退職金を受け取る方はこうした点も意識しておく必要があります。
なお、2つの別の会社からそれぞれ退職金を受け取る場合には、5年超の期間を空ければ上記のような退職所得控除額の調整は必要ありませんが(ただし別の調整が必要となるケースもあります)、確定拠出年金についてはなぜか15年遡って適用することになっています。

そのほかに気をつけるべきことは・・・

また個人事業者の方も含めてもう一つ気をつけるべき点は、確定拠出年金の支給額は各個人の運用結果がそのまま反映されます。そのため受給金額が掛金合計を下回る可能性も十分にあるわけです。

この場合、仮に運用上の損失が発生していたとしてもその点は全く考慮されず、一時金が退職所得控除額を超える場合には税金を支払わなければならないということになります。

メリットが大きく宣伝される確定拠出年金ですが、上記のようなケースも起こりうるということは頭に入れた上で、加入すべきかどうか判断する必要があります。

とはいえ、掛金全額が所得控除の対象となるというのは非常に大きなメリットであることに変わりありませんので、メリット・デメリットをよく比較・検討した上で加入の是非をご判断下さい。

なお、判断される際には上記の他にも

・原則として途中解約できない
・掛金の拠出を途中で止められない(運用指図者となれば掛金拠出をストップできますがその期間中も手数料はかかります)
・60才になるまで給付を受けることはできない
・確定拠出年金は公的年金に上乗せの年金であるため、国民年金の保険料を納付していることが必要

などの特徴も考慮して判断が必要となりますのでご注意下さい。

なお、退職所得控除額の計算には他にも特例があり、また年金で受け取った場合には税金の計算は異なります。
各人の事情により税金のかかり方は異なりますので、詳細につきましては専門家にご相談下さい。

また、この記事は確定拠出年金への加入を推奨・勧誘するものではありませんので、その点ご理解いただきますようお願いいたします。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
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