「節税したい」「税金を減らしたい」と考える方は多いと思いますが、税金を減らすには「利益予測」が大事なんですよというお話です。
計画と実績の間を埋める「予測」
会社を経営する上で、きちんと事業計画や経営計画といったものをつくっているのが理想ですが、規模の小さな会社ではないことの方が多いものです。
計画を立てるメリットとしては、月次の実績が出たあとに
- 目指している数字のどこまで進んでいるか進捗管理ができる
- 事前に立てた計画と実績で、何が違うのか分析できる
- 分析した結果に基づいて必要な対策を打つことができる
といったことが挙げられます。
とはいえ、1年が終わってから数字を分析していたのでは意味がありません。
そのため計画と実績の他に、予測(着地見込みといったりもします)が必要となります。
「節税したい」と考える経営者の方は多いと思いますが、節税を考えるのであれば、この予測が大事ですよというのが今回のお話です。
税金は後出しでは減らせない
何をもって「節税」とするかという議論はありますが、所得税の青色申告特別控除のような支出なしで経費を認めてもらえるものはほとんどなく、多くのケースは何らかのお金の支出をすることで税金を繰り延べる、要するに先送りするものです。
支出をすること税金が減るケースはありますが、支出した額以上に税金が減ることはありませんので、税金を減らしたものの、それ以上に手元のお金が減ったということにならないよう注意が必要です。
何らかの追加支出によって税金を減らそうとした場合、こうした支出はその年度が終わる前に行う必要があります。
法人税の申告書をつくってから
「思ったよりも税金が多いので減らしたい!」
と思っても、何もできません。
例えば、「決算賞与」を例にとると、期末月に支給するか、従業員に通知して翌月支給するかは別として
「今期は利益がこれくらい出そうだから、税金が増えるくらいなら頑張ってくれた従業員に報いることにしよう」
といった検討をその年度が終わる前にすることになります。
こうした検討をするためには、今期の利益がいくらになるかという利益予測が欠かせません。
この数字がないと、そもそも決算賞与を出すべきか決めらず、年度が終わってから
「こんなに税金が多いのなら、もっと従業員に還元しておけばよかった」
となってしまうわけです。
さらに利益予測がないと、節税のために支出をしようと思っても、「いくら」支出をすればいいのか検討がつきません。
このように「節税」を考えたい場合には、年度が終わる前に対策をする必要があり、その前提として「利益予測」が必要となります。
もちろん、利益予測の精度が悪いと、最終的に思ったよりも利益が出ずに「お金を払わなきゃよかった」とか、逆に利益が出すぎて「もっと払っておけばよかった」となる可能性はあります。
精度の高い予測をするのは意外と簡単ではありません。
このときに計画があれば、残りの月は一旦計画の数字で利益予測をしよう、ということができます。
計画は何らかの根拠を持って作った数字ですから、予測の数字についても納得感があります。
もし計画をつくっていないのであれば、実績数字を月数で按分(9ヶ月分の数字がまとまっているときは9で割って12をかけるなど)して、他に大きく影響しそうな要素をさらに加味するのもひとつの方法でしょう。
予測は簡単ではありませんが、数字が何もないと何も決められません。だからこそ、多少精度には目をつぶっても、利益予測をまずはつくることをオススメしています。
数字があるから決断ができる
今回は「節税」という観点から「利益予測」が必要というお話をしましたが、利益予測は節税のためだけに必要なわけではありません。
経営管理をする上でも「これくらいの数字になりそう」というイメージがないと、経営者が何らかの判断をすることは難しいものです。
本当は早急に何らかの対策をする必要があったのに、数字が見えていないために放置したということになると、あとで後悔することになりかねません。
もちろん予測が外れて、誤った判断となる可能性もゼロではありませんが、行動すれば何が悪かったのかあとで検証することができます。
このご時世、何も決めずに放置していて会社がよくなることはあり得ません。
節税だけでなく経営管理という観点からも、「利益予測」の重要性をご理解いただければと思います。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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