何か新しい挑戦をしたいと思っても、日々の忙しさに忙殺されて手がつかないことは多いものです。現状を変えるためには、プラスする前にまずマイナスすることを考える必要があります。
目の前の仕事に追われると将来に向けた準備ができない
みなさん、こんにちは。京都の税理士、加藤博己です。
カレンダーも最後の一枚となったこの時期、税理士業界にとって避けて通れないのが「年末調整」の業務です。
毎年、この時期になると「あぁ、今年もこの負担が重い季節がやってきたな」と実感します。
もちろん、少しでも効率的に進める方法を模索し、ITツールを導入したりフローを見直したりと工夫は重ねています。
しかし、毎年のように行われる税制改正(改悪?)や、チェックすべき項目の増加など、どうしても工数は増加の一途をたどるのが実情です。
油断すると、文字通り「仕事に追われる」状態になってしまいます。
ビジネス書の名著『7つの習慣』を読んだことがある方は多いでしょう。
その中で提唱されている「時間管理のマトリックス」では、緊急ではないが重要なこと、いわゆる「第二領域」に時間を使うべきだと説かれています。
将来に向けた種まきや、自分自身の研鑽などがこれにあたります。
しかし、目の前の「緊急かつ重要」な第一領域、あるいは「緊急だが重要ではない」第三領域に振り回されていると、第二領域に割くエネルギーは残らなくなってしまいます。
年末調整が第一領域と言えるほど重要な領域に属するかは議論の余地がありますが、少なくとも「目の前の作業」をこなすだけで一日が終わってしまうような状態では、新しい未来を作るための準備など到底できません。
水があふれそうなコップに追加の水は入らない
「もっと効率化すれば、第二領域の時間も作れるはずだ」と考えるかもしれません。
しかし、効率化には必ず限界があります。
確かに、1時間を50分に、50分を40分にする努力は大切です。しかし、物理的な時間には限界がありますし、人間の集中力にも限界があります。
効率化だけで全てを解決しようとすると、どこかで必ず限界がやってきます。
そこで必要になるのが、「やめる」という選択肢を持つことです。
極論を言えば、「年末調整の仕事そのものをやめる」という選択ができれば、第二領域に充てる時間は劇的に増えるでしょう。
しかし、現実はそう簡単ではありません。顧問契約を結んでいただいているお客様に対して、「年末調整だけはやりません」と突っぱねることは、信頼関係の上で難しいケースも多々あります。
だとするならば、全体的なボリュームそのものを調整することを考えなければなりません。
よく例えられる話ですが、水で一杯になったコップに、さらに新しい水を注ごうとしても、ただ溢れていくだけです。
新しい水、つまり「新しいチャレンジ」や「理想の働き方」をコップに入れたいのであれば、まずは今入っている水を捨てるしかありません。
新しいことを始めようとするとき、私たちはどうしても「何をするか(What to do)」ばかりに目を向けがちです。
新しいスキルを身につけよう、新しいサービスを開発しよう、新しい顧客を開拓しよう……。
しかし、それらを詰め込む前に、「何をやらないか(What not to do)」、あるいは「今やっている何を減らすか」を明確に決めなければ、新しいものは入ってこないのです。
何かを新しく始める決断をする以上に、「何をやらないか」「何を減らすか」を決めることの方が、実ははるかに難しく、そして重要なのです。
自分の方向性を決められるのは自分だけ
「やらないこと」を決めるのは勇気がいります。周囲からの期待に応えられなくなるのではないか、売上が下がるのではないかという不安がよぎるからです。
しかし、私たちの時間は有限です。そして、自分の時間を何に割り振るかを決められるのは自分だけであり、その決断が将来の自分の姿を決めることになります。
「忙しい、忙しい」と口にしている間は、実は思考が停止している状態に近いのかもしれません。
「忙しい」という言葉を盾にして、本当に向き合うべき「捨てる決断」から逃げている可能性はないでしょうか。
もし、来年こそは新しいステージに進みたい、もっとワクワクする仕事に時間を使いたいと願うなら、まずは年末のこのタイミングで、自分のコップの中身を棚卸ししてみましょう。
- 惰性で続けている習慣はないか。
- 本当は他人に任せられるのに、自分で抱え込んでいる作業はないか。
- 今の自分にとって、すでに役割を終えた仕事はないか。
溢れんばかりのタスクの中から、思い切って手放せるものは何か。一度立ち止まって「やらないこと」について考えてみませんか。
投稿者

- 加藤博己税理士事務所 所長
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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