他の税理士の方とお話をした際に、時々聞く意見が「クラウド会計は使えない」というものです。なぜこのような意見が出てくるのか、さらにこうしたツールを導入する前に何をしなければならないのか、といったことについて考えてみたいと思います。

クラウド会計の導入を成功させるためのポイントは何か?

クラウド会計についてよく聞く話として、

「クラウド会計入れたのに、全然楽にならない」

「入力は、圧倒的に弥生会計などの従来型ソフトの方がラク」

といったものがあります。

クラウド会計は、「データ連携」を前提に仕組みが作られていますので、「入力」を前提に導入してしまうと、以前よりも業務効率が落ちてしまう可能性があります。

例えば、銀行口座からの入出金やカード決済がほとんどなく、現金商売中心の方がクラウド会計を導入しても、恐らく効果はないでしょう。
(現金取引が既にExcelや他の仕組みでデータ化されている場合は別ですが)

そもそもクラウド会計を導入する場合には、従来の考え方・仕事の仕組みのままでは導入はうまくいかず、クラウド会計に合わせるように業務や仕事の仕組みを見直す覚悟が必要です。

仮に税理士が関与していたとしても、税理士・企業側ともにこうした点を理解せずに、なんとなくラクになりそうだということで導入すると、

お客さま:「クラウド会計への入力メチャクチャ時間かかって大変なんだけど」 

税理士:「やっぱクラウド会計使えないですよね」

みたいな会話になり、「クラウド会計は使えない」という意見につながっているのではないかと。

きちんと効果がでるように導入しようとするのであれば、現状どのような業務があり、それをどのような手順で行っているかという整理をして、どこを変えるのか決めなければなりません

そしていかにして最低限の入力作業で帳簿を作成するか、こうしたことを「導入前」に検討しないと決してうまくいかないでしょう。

あくまで個人的な意見ですが、「クラウド会計は使えない」とおっしゃっている方の多くが、こうした事前検討のステップを省いて導入してしまい、期待していたほど業務がラクにならなかったため、このような発言につながっている気がします。

RPAだって導入するだけでは何も変わらない

クラウド会計以上に最近話題となっているのがRPAですが、これもライセンスを購入するだけでは何も変わりません。

動かすためには、作業を自動化するロボットをつくる必要がありますが、これがプログラミングの経験が無い方には大変です。

お金に余裕のある企業であれば、ロボットを作るところも外部業者にやってもらうのでしょうが、これも注意が必要です。

特に中小企業などでは作業や仕事について、マニュアルなどの形で言語化されていないケースも多いでしょう。

外部業者にロボット作成を依頼するには、 「何を」自動化して欲しいのか明確に伝えないと、期待したものが出てこない可能性が高いわけです。

ところが、マニュアル化などの文書化に慣れていないと、自動化する作業内容がうまく伝わらず、「導入したけど思ったほどラクにならない」となってしまうかもしれません。

「なんかよくわからないけど、今やっていることを自動化してほしい」ではRPAの導入は絶対に成功しません。

逆に、RPAを導入しようとして、業務内容を整理すると、そもそもRPAを使わなくても仕事のやり方を変えるだけで効率化できるというケースも考えられます。

そもそもRPAで自動化するのがベストなのかといった検討も行ったうえで、導入の是非を判断する必要があります。

ちなみに個人的な意見ですが、RPAは小規模の企業にとっては、コストと必要となる工数を考えると、今の価格と仕組みのままでは、普及するのはかなり難しいのではないか、と考えています。

「業務の棚卸」を含めた事前の検討が成否を決める

今回クラウド会計とRPAの導入について取り上げましたが、共通するのが導入前に現在の業務をきちんと整理することが必要という点です。

一般的にいうところの「業務の棚卸」が欠かせないというわけです。

クラウド会計もRPAもツールに過ぎませんので、導入しただけで魔法のように業務が改善されることはありません。

どんなに高価な料理道具を揃えたとしても、それだけで料理がうまくなるわけではなく、使う素材の選択、材料の下ごしらえなどの前工程があって初めて、高価な道具も効果を発揮するわけです。

クラウド会計やRPAといったツールの導入についても、どれだけ事前の検討と準備ができるかによって、導入後の成果は変わってきます。

こうしたツールの導入を検討されている方は、「取引先が導入して成功したから」とか「導入しただけでラクになりそうな感じがする」といったイメージをお持ちであれば、そうした考えは捨ててください。

業務の内容・流れを整理して、導入後にはどのように変わるのか、そうした事前の検討をきちんと行うことをオススメいたします。