税理士というと「毎月試算表を持ってくるだけの人」と思われているケースがたまにありますが、実際のところはどうなのでしょうか、というお話です。
税理士を変更したお客さまが驚いたこと
過去に別の税理士に依頼した経験があるお客さまから、たまにこんなことを言われることがあります。
「前の税理士さんって、訪問するときに試算表を持ってくるだけだった」
「(税理士を変更した後に)数字を確認しながら、いろいろと細かい点まで説明を受けたり、話をすることに最初驚いた」
実を言えば、私も税理士になったばかりの頃は、試算表だけを持っていって
「売上は対前年比○%で・・・」
みたいな話しかしていませんでした。
ただこれだと話がすぐ終わってしまうし、説明を受けた側もその数字をみて何をすればよいのかさっぱりわからないという状況になってしまいます。
要するに、数字があっても話が全然広がらないんです。
「こんなことをしていても意味がない」と思い、提供する資料を検討したり、どういう風に話を進めればいいか学んだりなど、いろいろと試行錯誤を繰り返して、現在のスタイルに落ち着いています。
試算表を見ながら話せることはあるか?
実際、今でも例えば試算表だけ渡されて
「お客さんと話をしてください」
と言われても、大した話はできないです。
話をしても、せいぜい前期比較をみながら
- 売上が増えているのかどうか
- 経費が増えているのかどうか、増えている場合どの科目で増えているか
- 預金残高や借入金残高が増えているかどうか
くらいではないでしょうか。
こうした話をしても、話を聞いた人が、その後具体的に何をすべきかがまったく見えてきません。
会社を経営した結果を数字で確認して、そこから浮かび上がる課題について行動に移さなければ、会社の状況は何も変わらない、下手したら悪化することになります。
税理士の側も定期的に数字を見ながら経営者がどのようなことを考えていて、どういった点に問題があると感じているかなどを聞かなければ、その会社の状況を把握することはできません。
こうした打合せを定期的に行っていないと、経営の相談を受けるといっても、壁打ち相手にすらなれないでしょう。
よく「税理士の報酬が高い」という話を聞くことがありますが、そりゃ試算表だけ持ってきて、それで終わってしまえば高いと言われてしまいますよね。
それこそ税理士のことを「試算表作成マシーン」みたいに思われたら、記帳代行会社に頼めばいいやと判断されかねません。
とはいえ、依頼する側からすると
「具体的に何をしてくれるのか?」
という点がわかりにくいのも事実。
こうした点は、サービス提供側がわかりやすく
- できること
- 提供できる価値
などを発信する必要があるのだろうと思います。
「税理士」という資格がサービスをわかりにくくする?
依頼する側が、税理士から受けられるサービス内容についてわかりにくい原因のひとつに、税理士という資格そのものがあるのかもしれません。
資格は、その業務を行うのに必要な一定の能力があるかを示すものです。
「一定の」というところがミソで、その後どういった知識を身につけるかとか、どういったサービスを提供するかは人それぞれです。
ところが、依頼する側からするとどうしても
「税理士ってこういうもの」
という先入観があるケースが多いのではないでしょうか。
「税理士」という資格により、どんなことをしてくれるのかある程度イメージしやすくなっているわけですが、逆にそのイメージによって、実際のサービス内容が見えにくくなっているのではないでしょうか。
実際に複数の税理士に依頼した経験がある方であれば、
「税理士と言っても千差万別」
ということを理解できると思いますが、初めて税理士を選ぶ場合や、1人の税理士しか知らない方にとっては違いはわかりにくいものです。
最初に紹介したお客さまの言葉のように、意外と違いは大きいものです。
これから初めて依頼する方や変更を検討している方は、「税理士」についてあまり先入観を持たずに話を聞いてみるのがいいのではないでしょうか。
投稿者

- 加藤博己税理士事務所 所長
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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