新規のお客様で貸借対照表をチェックしたときに「内訳がわからない」というケースに遭遇するときがあります。なぜこうした状況が問題となるのか確認しておきましょう。
B/Sの確認は最初に行うベことのひとつ
新規のご契約をいただいた場合などに最初に行うことのひとつが、貸借対照表(以下、B/S)の内訳が明確になっているか確認することです。
法人の場合、法人税申告書に「勘定科目内訳書」という書類が添付されていますので、貸借対照表と見比べながら内容が明確になっているか確認を行います。
ただ、場合によっては勘定科目内訳書に内訳が書いていない科目があったり、書いてないので基礎となる資料を確認しても残高と一致しないというケースも実際にあります。
こうしたことって、最初にお伝えしておかないと、何年か経ってからだと
「どうして最初に言ってくれなかったんですか!」
みたいなことになってしまいます。
クレームを受けるだけならまだいいですが(ホントはよくないですが)、実際にB/Sの中身がきちんとしていないといろいろと困った状況になりかねません。
経営判断に使う数字の基礎があやふやだと、その数字に基づいて判断をすると間違えてしまう可能性もあるわけです。
貸借対照表のすべての科目には内訳があるべき
B/Sの中身については、「うるさく言う人」と「そうでない人」に割と分かれているような気がします。
私は正直、結構、細かくうるさく言う方だと思ってます。
利益計算(損益計算書)は年度が変わればリセットされますが、B/Sは間違った処理をすると、その内容を正すまでずっとおかしな数字が累積していきます。
大昔の話ですが、会社員として働いているときに、海外出向中B/Sについては苦労しました。
「売掛金の内訳がよくわからない」
から始まって、固定資産台帳の現物確認をさせたら
「モノがどこにあるかわからない」とか「かなり昔に廃棄した」とか。
こうなると決算の数字が本当に正しいのかも怪しくなってきます。
これも会社員時代の上司から言われたことですが
「B/Sのすべての科目には内訳が無いとおかしい」
と。
さすがに繰越利益剰余金は内訳はないかもしれませんが、例えば資本金であっても株主名簿と定款(1株当たり金額)が内訳になります(増減資しているとややこしくなりますが)。
このようにB/Sについては、いろいろと苦労したり指導を受けてきましたので、科目の内訳がないという状態が気持ち悪いわけです。
そのためB/Sの内訳については、普段から口うるさくお伝えするようにしています。
内訳がきちんとしていないと困ること
B/Sの中身がきちんとしていないと困ることとしては、次のような点が考えられます。
1. 想定外の損失が隠れている可能性がある
B/Sの科目の中に、本来過去に処理しておくべき損失が隠れている可能性があります。利益が出ると思っていたら、こうした想定外の損失で最終的に赤字なんていう可能性もあるわけです。
こうした状況では業績の予測精度が悪くなりますし、そもそも処分に費用がかかるようなものが隠れていた場合、業績が急激に悪くなるリスクもあります。
要するにB/Sの中にゴミが溜まっているような状況ですね。
2. 資金繰りに悪影響が出る可能性
売掛金の内訳がきちんとしていないと、本来回収が必要なのに対処が遅れたり、逆に回収済みのものが残高として残っていると、資金繰りで当てにしていたものが入ってこないことになりかねません。
こうした状況は、想定していたとおりの資金繰りとならずに、資金繰りが予測よりも悪化する恐れがあります。
3. 会社を売りたい場合に困る
頻繁には無いかもしれませんが、後継者難と言われる現在、最終的に会社を売却したいというケースもあるでしょう。
こうした場合に、B/Sの中身がきちんとしていないと、会社を買ってもらえないリスクがあります。
売却交渉の中でデューデリジェンスという手続きにおいて、会社の財産については細かくチェックされます。
身ぎれいにしておかないと、将来会社を売ることもままならなく可能性があります。
経理については
「会計ソフトに入力すれば後は勝手に集計してくれるんでしょ」
「そのうちAIが自動で処理してくれるんでしょ」
といった意見があるかもしれません。
こうした意見について完全に間違いと言うつもりはありませんし、最近では会計ソフトが
「この数字間違ってない?」
と指摘してくれるケースもあります。
ただそれはあくまで集計や基本的なチェックであって、中身の妥当性まですべて自動化してくれるわけではありません。
要するに、経理ってきちんとやろうとすると結構大変なんです。
たかが経理、されど経理。あなたの会社のB/Sの内訳、きちんと説明できますか?
投稿者
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- 加藤博己税理士事務所 所長
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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