国税庁ホームページには2024年以降の確定申告において給与データを自動的に取得できるようになるとの案内が出ています。今回はこの点について確認しておきましょう。
マイナポータル連携で給与データは自動入力?
最近国税庁のサイトに新しいページができました。
所得税の申告をする際に国税庁が提供する「確定申告書等作成コーナー」を利用する方も多いのではないかと思いますが、2024年2月、つまり2023年の所得税申告からはマイナポータル連携を使って給与データを自動的に入力できるようになる、とされています。
今までは会社から受け取った源泉徴収票を見ながら必要な項目を手入力する必要がありましたが、そうした手間が不要となり給料をもらっている方の確定申告は楽になります。
※源泉徴収票をカメラで撮って読み込む機能もあるようですが、使ったことないので便利なのかよくわかりません。
ただ、給与データの連携については注意すべき点もあるので、今回はその点について確認しておきましょう。
全員がデータ連携できるわけではない点に注意
注意点と言っても難しい話ではなくて、要するに
「すべての人がデータ連携できるわけではない」
ということです。
具体的には、勤め先が給与の源泉徴収票を税務署に決められた方法を使ってデータで提出している方でないと連携できません。
例えば紙で源泉徴収票を提出しているケースでは確定申告時にデータ連携できませんし、他にもマイナンバー・氏名・住所・生年月日等の必要な項目が漏れなく提出されていることも条件となっています。
せっかくデータで提出していても
「面倒なのでマイナンバー登録せずに送っちゃえ」
とかしているとダメみたいですね。
「ウチの会社はe-Taxの仕組みを使って源泉徴収票を提出しているって聞いたから、対象になるよね」と思った方、実はもう一つ注意点があります。
税務署に提出する給与データ(給与所得の源泉徴収票)については、一定の収入以上の方だけ提出すればよいことになっています。
国税庁タックスアンサー:No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等
例えば年末調整を受けた従業員の場合は、1年間の給与等の支払金額が500万円超だと提出が必要です。
今までは提出する必要がない人の分までは、一般的には税務署に提出するようなことはしていません。
今回こうした仕組みを導入するにあたり、国税庁からは提出義務がない人についてもデータで提出してくれれば、確定申告時にデータ連携できるようになるよという案内は出ています。
事業主の皆さまへ 給与所得の源泉徴収票をe-Taxで提出する従業員の方の確定申告がさらに簡単に!!
ただ、事業者にとって特にメリットはありませんので、どこまで対応するかは不明です。
こうした背景がありますので、年明けに確定申告をする際に
「給与のデータ連携ができると思っていたのにできない」
というケースがかなりあるのではないでしょうか。
市町村に提出するデータはなぜ使えない?
ここまでの話を読んで
「でも、給与データって全員分提出してるって聞いたけど」
という方がいるかもしれません。
実は税務署ではなく従業員の方がお住まいの各市町村に対しては
「給与支払報告書」
という資料を全員分(一部例外はありますが)提出することになっています。
これは住民税を計算するために提出することになっているのですが、提出する情報は基本的に税務署に提出する源泉徴収票と変わりありません。
「だったらそのデータを連携してくれれば対象になる人は大幅に増えるのでは?」と思いますよね。
その通りなんです。これについては国税庁が公表している
税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像 2023-
という資料の中で令和9年(2027年)2月から対応するとしています(11ページ)。
少しでも早く便利さを体感してほしいということで、国税庁として手元にあるデータを使って給与データの自動連携を始めてくれるのだと思いますが、対象外となる方が意外と多く出てきて、逆に混乱するだけではないかと心配しています。
「巧遅は拙速にしかず」という言葉もありますが、それであれば各市町村に提出しているデータを「拙速」な状態でも使えるようにして欲しかったなと。
具体的な仕組みはわかりませんが、使うデータを途中で変更すると開発費用も余分にかかるんじゃないかという心配もあります(様式が同じだから問題ないのかもしれませんが)。
所得税の確定申告の仕組みは年々便利になっていますが、給与データの連携については
「あれ、なんで連携できないの?」
と感じる方が多いかもしれませんので、その背景について確認しました。
ご参考になれば幸いです。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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