所得税の確定申告で公金受取口座の登録ができます。登録の際にいくつか注意すべき点がありますので確認しておきましょう。

所得税の確定申告書の様式が変更されてます

所得税の確定申告書の様式については、毎年細かい変更があります。

令和4年(2022年)の申告書(第一表)を確認すると、右下の「還付される税金の受取場所」欄の下に

  • 公金受取口座登録の同意
  • 公金受取口座の利用

という欄が追加されています。

「公金受取口座」という言葉については、聞いたことある人がいるかもしれません。

マイナンバーカードを作って公金受取口座を登録すると、マイナポイントがもらえるとされている、あの「公金受取口座」と同じものです。

マイナポイントホームページより

公金受取口座とはマイナポータルの説明では

公金受取口座をあらかじめ登録しておくことにより、今後の緊急時の給付金等の申請において、申請書への口座情報の記載や通帳の写し等の添付、行政機関における口座情報の確認作業等が不要になります。

とされていて、国からの給付金の支給などをスムーズに行うために銀行口座を事前に登録しておくというものです。

この登録は本来マイナポータル上で行うものですが、登録する金融機関を記入して「公金受取口座登録の同意」欄に○をつけることにより、所得税の確定申告書でも行うことができます。

ただ記載方法について、確定申告の手引きを見ても30ページに基本的な解説があるだけで細かい注意点などは書いてありません。

いろいろ探してみたところ、国税庁のホームページではなくデジタル庁のサイトに

よくある質問:所得税の確定申告手続における登録について

として注意点がまとめられていました。

確定申告という観点ではなく、あくまで公金受取口座の登録のためのQ&Aの一部ということでデジタル庁のサイトに掲載することになったのでしょう。

このQ&Aを読んでみるといくつか注意すべき点がありましたので、ざっと確認しておきましょう。

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所得税の確定申告におけるQ&Aを確認

所得税のどんな申告でも登録できる?(Q3-1,Q3-24)

残念ながら所得税の申告ならなんでもいいわけではなく

  1. 還付申告
  2. 更正の請求

の場合しか公金受取口座の登録はできません。

要するに税金を返してもらう手続きの時しかできませんよ、ということのようです。

還付金振込口座と別口座を登録できる?(Q3-2) 

還付申告の際に還付金の振込口座を記入しますが、これ以外の口座を所得税の確定申告で公金受取口座として登録することはできません。

別口座を登録したい場合はマイナポータルでの手続きが必要となります。

確定申告書等作成コーナーで該当項目が表示されない(Q3-4)

国税庁が提供する確定申告書等作成コーナーでは該当するメニューが表示されないケースがあるとのこと。

  1. 還付される金額があること。
  2. 還付金の受取方法で「ゆうちょ銀行以外の銀行等への振込み」若しくは「ゆうちょ銀行への振込み」を選択していること。

の2つの条件を満たしたときに、意思確認のための画面が表示されるとのことです。

既に登録済みでも申請すると登録口座が変更される(Q3-15)

既にマイナポータルで公金受取口座を登録済みであっても、所得税確定申告書で登録申請をすると後から申請された口座に変更されるとのことです。

変更・削除、登録結果の確認はマイナポータルから(Q3-6~8)

確定申告の際に登録申請した結果の確認や、違う口座に変更したいもしくは登録自体を削除したい場合には、マイナポータルで手続きを行う必要があります。

「確定申告で手続きしたんだから税務署に言えば変更してもらえる」と思うかもしれませんが、税務署では公金受取口座変更の手続きはできないとのことです。ご注意ください。

登録できなかったときは申告書の再提出?(Q3-11)

記入した金融機関の情報などが間違っていたりするとe-Taxから公金受取口座登録の登録ができなかった旨のメッセージが届くとのことです。

この場合、改めて確定申告書を提出する必要はないのですが、公金受取口座の登録についてはマイナポータルで直接行う必要があります。

公金登録口座と還付口座のどちらが優先される?(Q-22)

確定申告の前に公金受取口座をマイナポータルで登録済みの方は、「公金受取口座の利用」に○をつけて申告書を提出することにより、公金受取口座に還付金が振込みされます。

ところが

  • 「公金受取口座の利用」に○をつける
  • 還付金の振込口座に別の銀行口座を記入する

とした場合には、記入した別の銀行口座に還付金が振込みされるとのことです。

つまり公金受取口座で還付金を受け取りたい場合には、「還付される税金の受取場所」欄には余計な情報を書いてはダメということです。

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思い込みはミスの元

今回は所得税の確定申告で公金受取口座の登録や利用をする際の注意点について確認をしました。

特に最後の公金受取口座と別の銀行口座のどちらが優先されるかについては、個人的には公金受取口座が優先されると思っていましたので意外でした。

どちらにせよご本人の銀行口座に振り込まれるので大きなトラブルにはなりませんが、思い込みには注意が必要です。

ちなみに税理士が代理申告する際にもこれらの欄に○をつけることはできる(Q-13)のですが、今回は依頼者の方に説明して意思確認してる時間もないので一切○はつけてないです。

確定申告に関する内容が国税庁ではなくデジタル庁のサイトに掲載されていましたので、今回取り上げてみました。

確定申告書を作成する際の参考になれば幸いです。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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