税理士会の会報に掲載されていた寄稿文を読んで、いろいろと思うところがありましたので、少しまとめておきたいと思います。
税理士会会報の特別寄稿について思うこと
定期的に税理士会から会報が届きます。
最新の会報の中で、デジタル庁の方がデジタルインボイスについて寄稿されている記事がありました。
デジタルインボイスについて触れた後で、税理士とデジタル化との関わりについて
- 「ITの専門家じゃないから、デジタルよくわからない」という話を税理士から頻繁に聞く
- 税理士がシステムエンジニアになる必要は無いが、ITツールやシステムを「見極める力」は必要
- 今後は、システムの法令やその改正への対応が適切かどうかについて、出力された申告書や帳票などの確認だけでなく、システムの仕様そのものについて税理士によるチェックが必要となるかも
といった内容が書いてありました。
デジタル庁として中小零細企業のIT化に向けて
「税理士さん、もっとしっかりしてよ」
という尻叩き的な意図もあるとは思いつつ、書かれている内容そのものには共感しています。
読みながら
「そういえば、以前似たようなことを考えたことがあったような」
と思い、過去のブログ記事を探してみると・・・ありました。
4年ほど前に書いた記事で、切り口はかなり異なりますが、当時から
「税理士って中小企業のIT化の相談相手になれないんだろうか?」
という意識は持っていたわけです。
大きな方向性としては間違っていなかったと思うとともに、実際に相談相手になろうとするために必要な能力・スキルについて、以前の記事では深く触れていませんでした。
そこで今回は、税理士が中小企業のIT化の相談相手となる際に必要なスキル、に焦点を当てて考えてみたいと思います。
※余談ですが、4年ほど前の記事を改めて読み返してみると「読みにくい、文書下手!」と感じます。今の文章でも「読みやすい」と胸を張れるほどではないものの、やはり量をこなすことで変わってくるものだと実感します。
中小企業のIT化の相談相手になるために必要なスキルとは?
税理士が顧客のIT化の相談相手になるために必要なスキルは3つあると考えます。
具体的には
- ITそのものについての知識・スキル
- 会社の業務フローを把握・整理するスキル
- コミュニケーションスキル
の3つです。
1については説明は不要かと思います。
ITそのものを知らない、極端な例でいえば「Excel使うの苦手」という人が相談相手になるのはさすがに無理でしょう。
ただ、会報の記事にあったように、システムエンジニアとなって自分でシステム開発できる、というレベルまでは必要ないかと。
あくまで目指すべきは「導入の際の相談相手」。
導入するツールがその会社にふさわしいものか「目利き」できる能力が大事です。
2については、先ほどの「目利き」とも関連しますが、その会社の業務フローを把握・理解できていないと、導入するツールが適切かどうか判断ができません。
現状の業務フローが抱える課題を浮き彫りにした上で、ツールを導入することで課題が解決できるのか見極める。
IT化において絶対に必要な手順となります。
だからこそ、現状をヒアリングしつつきちんと整理できる能力は、相談を受ける立場としては欠かせません。
3については、ITに限ったことではありませんが、会社の現状を把握した上で、導入しようとするツールが適しているのか、それとも適していないのかについて、きちんと説明できる能力は必須といえます。
「あの税理士さん、ITには詳しそうだけど、なんか説明が難しすぎて何いってるのかわからない」
と思われるようでは相談相手としてふさわしいとはいえません。
相手にわかりやすく伝えるコミュニケーションスキルはいつだって欠かせないものです。
税理士って意外とこうしたスキルを既に持っているのでは?
税理士が中小企業のIT化の相談相手となるのに必要なスキルについて考えてみましたが、実は多くの税理士の方は既に2と3のスキルはお持ちではないでしょうか?
普段は業務フローについてまでは確認していなくても、会社の社長と話をするために会社の現状を把握することは日常茶飯事のはず。
また難しい税務の話を、少しでもわかりやすく伝えようとする努力をしていれば、コミュニケーションスキルもきっと磨かれていることでしょう。
そう考えると、足りないのはITについてのスキルだけ。
「それが難しいから、できないんだ!」という意見もあるかもしれませんが、私からすれば税務の方がよほど難解です。
大事なのは「まず興味を持つ」こと。
「そういえば以前ITツールについて相談されたことあったけど、よくわからないからごまかしたことあるな」
という経験をお持ちであれば、少し勉強するだけで大いにお役に立てるようになるかもしれません。
一方で、経営者の方。
「ITツールの話なんて、税理士の先生に相談するようなことじゃないしな」
と思われているのであれば、一度思い切って相談してみてはいかがでしょうか。
思った以上に有益なアドバイスが返ってくるかもしれませんよ。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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