先日、法人成りのお手伝いをしていて、法人設立届を作成しながらイライラ・・・。決められた書類の提出作業はつまらないものですが、そうした作業を少しでも早く終わらせるための方法や心構えについて考えてみました。
法人設立届出書は3カ所に提出が必要
法人を設立した後に提出する書類のひとつに、「法人設立届出書」というものがあります。
この書類、都道府県や市町村の場合は、書類の名称や記入内容が少し異なる部分もありますが、ほぼ同じような内容の書類を、
「税務署」、「都道府県」、「市町村」
の3カ所に提出する必要があります。
都道府県と市町村に対して電子申告で提出する様式は同じなのですが、使っているシステムの仕様のせいか、記入したデータをコピーする方法が見つからず、まったく同じ内容を2度入力。
結局、税務署に提出するものと併せて、3回入力作業をすることになってしまいました。
面倒な作業だなと思いながら、『そういえばこれって、「行政のワンストップ化」という名目で、以前議論されていなかったか』と思い、検索してみたところありました。
この資料を見る限りでは、
「マイナポータルを通じ、必要情報を各手続きが共有」
「必要な全手続きが、1つのシステムで1回で完結。」
首相官邸HP 「法人設立手続きオンライン・ワンストップ化検討」より
などの説明がありますので、実現すれば今回のようなイライラはなくなることでしょう。
(ただ、マイナポータルを使うという点に、一抹の不安を覚えますが・・・)
「-2019年度中:設立後の手続きをワンストップサービスを開始。」(原文ママ)との記載もありますので、できるだけ早く実現することを願います。
届出書などの書類の提出作業は、誰もトクをしない仕事
法人設立届出書のような行政への提出書類については、法律に定められているから提出するわけであって、商売をする上で提出することにメリットがあるわけではありません。
そのため、きちんと提出したとしても、お客さまから感謝されることはまずありません。
提出したことを報告しても、
「法人設立届出しときました!」
「あ、はい、どうも」
くらいのやりとりで、普通は終わります。提出することで、お客さまにとってメリットがあるわけではありませんので、当然このような反応になります。
(逆に、激しく感謝されたりすると、こっちが驚きます。)
また私の場合、顧問契約を結んでいるお客さまについては、こうした書類の提出に対して、通常はお金をいただいておりませんで、正直なところ時間をかけずに終わらせたいと考えています。
このように、こうした行政への提出書類は、作成する税理士にも、提出する義務があるお客さまにとっても、双方にメリットがない仕事ということになります。
行政の変化が必要なときでも、何かできないか考えてみる
誰にもメリットがないので、さっさと終わらせたいのですが、ワンストップ化は今の時点でまだ実現していないため、3カ所に提出するという作業は、残念ながらやらざるを得ません。
こうした場合、
「行政の対応を待つ以外に、何もできないじゃないか」
と諦めてしまいがちですが、少しでも作業を減らして効率化できるよう、足掻いておきたいものです。
今の時点で、できることとしては、
- 電子申告での提出(紙で提出しない、郵送しない)
- 定款の写しなどの添付書類も、別送せずにイメージデータで提出する
の2点でしょう。
電子申告での提出をされている方は多いと思いますが、定款の写しを別途郵送で送っている場合は、イメージデータでの提出を検討してみてください。
Webゆうびんを使えば、ポストまで行かずとも郵送は可能ですが、それでも税務署・都道府県・市町村の3カ所への郵送を指示する必要がありますので、イメージデータで提出してしまった方がはるかに早いです。
なお、定款等の写しのイメージデータでの提出は、仕組みとして認められていますので、問題ありません。
e-Taxホームページ:イメージデータで提出可能な添付書類(申請・届出等(法人税関係))
ただ、税務署によっては、履歴事項全部証明書の提出を求められるケースもありますので、これもイメージデータで提出できるかについては、事前に提出先の税務署に確認されることをお勧めします。
(今回は、イメージデータの提出で問題なしとの回答をもらいました)
少し話がそれてしまいましたが、「仕組みが変わらないから何もできない」という考え方では、仕事の効率化は絶対に進みません。
仕事をする以上は、人から喜ばれる仕事をしたいものです。そのためには、喜ばれないけどやらざるを得ない仕事を、いかに早く終わらせるかが重要です。
そのためにできる小さな改善は必ずあります。ぜひ諦めずに探していきましょう。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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