効率化のために導入したツールが、自分のこだわりと微妙に噛み合わない。そんな「道具とニーズ」の優先順位の差について、実務の視点から考えてみました。

総勘定元帳の摘要はカタカナ?それとも漢字?

みなさん、こんにちは。京都の税理士、加藤博己です。

会計実務に携わる中で、成果物のひとつである「総勘定元帳」の見た目には、人それぞれのこだわりがあるかもしれません。

これはあくまで個人的な好き嫌いの話かもしれませんが、私は総勘定元帳の「摘要欄」が通帳のカタカナ表記のまま並んでいるのが、あまり好きではありません。

「カンサイデンリョク」「ニホンセイメイ」「ドコモケータイ」……。

もちろん、内容が伝われば問題ないという考え方もありますが、後から振り返って見たときに、やはり読みにくい。

直感的に何の内容かがスッと入ってこないのは、帳簿としての質に影響する気がしてしまいます。

そのため、私は記帳をする際、できるだけ「自動仕訳ルール」を活用して、摘要を漢字などに変換するようにしています。

「カンサイデンリョク」であれば、「関西電力」に置換する。

銀行データとの連携機能を使っていれば、多くの場合はスムーズに変換できます。しかし、通帳をスキャンしてデータ化したり、CSVを取り込んだりする場合、元のデータに微妙な揺れが生じることがあります。

例えば「カンサイデンリョク」が、スキャン精度や元の印字の関係で「カンサイテンリョク」と、濁点が抜けて取り込まれてしまうケース。

こうしたイレギュラーに対処しようと思えば、ルール設定を工夫します。

具体的には「ンリョク」という文字列に部分一致した場合、すべて「関西電力」に置き換える、といった設定です。

これなら、多少の読み取りエラーがあっても、対応が可能となります。

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弥生スマート取引取込の摘要置換の仕様はイマイチ?

一般的なクラウド会計ソフトであれば、上記のような「ンリョク」に部分一致というルールを作れば、元の文字列が何であれ、全体を「関西電力」という指定した文字列に丸ごと書き換えてくれます。

ところが、弥生会計の「スマート取引取込」を使うと、そうは問屋が卸しません。

具体的にどうなるか。

  • 摘要: 「ンリョク」を含む

  • 置換後の摘要: 変更する(関西電力)

このルールで「カンサイテンリョク」というデータを取り込むと、

「カンサイテ関西電力」

になってしまいます……。

初めてこの仕様に気付いた時は、文字通り開いた口が塞がりませんでした。

要するに、弥生会計の仕様では「部分一致でヒットした箇所の文字列『だけ』が置換される」仕組みになっているのです。

「いや、そうじゃないだろ……」と心の中で突っ込みながら、回避策がないか必死に調べましたが、弥生公式のサポートページには次のように書かれていましたので、どうやら仕様のようです。

適用する条件を部分一致(「を含む」)で「フリコミテスウリョウ」と設定し、取り込まれる取引の摘要が「フリコミテスウリョウ12ガツブン」の場合「振込手数料12ガツブン」と変更されます。
「12ガツブン」が不要な場合は、適用する条件を完全一致(「と一致する」)で「フリコミテスウリョウ12ガツブン」と設定すると「振込手数料」に変更されます。

(引用元:弥生サポート「仕訳ルール設定とはどんな機能ですか?」)

つまり、「後ろに付いている月数などを残したい」というニーズを優先した設計になっているようです。

しかし、これでは先ほどの「読み取りミスによる揺れの吸収」には全く使えません。

結局のところ、弥生スマート取引取込を使うのであれば、摘要を漢字に直すという個人的なこだわりは捨てるしかない、というのが今のところの結論です。

あるいは、スマート取引取込自体を使わずに、Excelなどでデータを整形してから「仕訳日記帳」に直接インポートする方が、摘要を完全にコントロールできる分、ストレスがありません。

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部分一致ルールは何のため?

そもそも、システムにおける「部分一致ルール」とは何のために存在するのでしょうか。

私は、入力データの不備や表記の揺れをカバーし、多少のミスについてはカバーできるようにするためのものだと考えていました。

しかし、弥生のこの仕様は、おそらく「データの揺れに対応する」よりも、「元の摘要を活かして、より詳細な情報を残せるようにする」という点に重点を置いているのでしょう。

「フリコミテスウリョウ12ガツブン」の「12ガツブン」という情報を残したいケースも確かにあるでしょうが、それ以上に、表記の不備や揺れに対応できる方が、現場のニーズとしては圧倒的に多いように思います。

逆に、「この仕様だからこそ、こんな場面で助かっている!」という活用事例があるのなら、ぜひ教えていただきたいくらいです。

もし可能であれば、今後のアップデートで「部分一致した箇所を置換する」のか、「部分一致したら全体を置換する」のかを、ユーザーが選択できるようになれば嬉しいところです。

弥生の摘要置換に直面するたび、機能の多さよりも「根底にある設計思想」の重要性を痛感せずにはいられません。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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