税務署の窓口で書類を提出して受付印をもらった経験のある人はそれなりにいるのではないでしょうか。2025年1月以降、税務署の窓口では受付印を押してもらえなくなりますので、その内容について確認をしておきましょう。

税務署窓口での受付印が廃止されます

税務署の窓口で書類を提出する際に、提出書類とそのコピー(控え)を準備して、控えの方に受付印を押してもらっている方もいるのではないでしょうか。

電子申告が普及して、税務署の窓口に書類を提出する機会はかなり減っていますが、税務署に提出した「証拠」として、日付印をもらうケースは一定数残っています。

実は2025年1月以降は、税務署の窓口に書類を持って行っても、この受付印(税務署の説明では「収受日付印」といいます)を押してもらえません。

この内容については

令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて|国税庁

において説明がされています。

実施する理由としては

  • 国税庁は政府の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和6年6月21日閣議決定)等を踏まえ、税務行政のDXを推進している
  • その一環として、令和7年1月から書面提出された申告書等への収受日付印の押なつを廃止する

とのことです。

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具体的にどのように変わるのか、FAQで確認

年明けから具体的にどのように変わるのか、実務的に気になる点を中心に

申告書等の控えへの収受日付印の押なつの見直しに関するQ&A(令和6年11月22日更新)

で確認をしておきましょう。

書類を提出した場合、何ももらえないの?(問3・問7)

2025年1月以降に税務署の窓口で書類を提出した場合、当分の間の対応として申告書等の控えそのものには収受日付印の押なつはしないものの、希望すれば「リーフレット」に申告書等を収受した「日付」や「税務署名」を記載したものを渡すとされています。 

リーフレットの様式は、次図のものになるとのことです。

「申告書等の控えへの収受日付印の押なつの見直しに関するQ&A」より

リーフレットに記載されるのは「日付」と「税務署名」だけですから、「何を」提出したかについては、ご自身でこのリーフレットに記入する必要があります。

「メモ欄」がありますので、ここに提出した書類を書いておいた方がよいでしょう。

個人的には、わざわざリーフレット渡すくらいなら、受付印押した方が窓口の方もラクなのではないかと思うのですが・・・。

このリーフレットですが、あくまで「希望者」に渡すとされていますので、こちらから要望しないともらえない可能性があります。

税務署側もトラブルを避けるために、希望しなくても渡すといった運用をする可能性はありますが、念のためご注意ください。

提出したのに「提出していない」と税務署から言われたんだけど(問3)

収受日付印の押なつがなくなることで、多くの方が心配しているのは、書類を提出したのに「出していない!」と税務署からいわれることではないでしょうか。

この点については

仮に、申告書等を提出したにもかかわらず、税務署等から、「申告書等が提
出されていないのではないか」といった問合せがあった場合などには、納付
状況や他の証拠書類を確認しつつ、税理士及び納税者の方からの聴き取りな
どを行った上で、そのリーフレットと申告書等の控えなどを確認させていた
だくことで、原則として、その日に税務署に来署し、申告書等を提出された
ものとして取り扱います。

と説明されています(太字は筆者)。

うーん、今までは収受日付印のある控えを見せればすんでいたはずですが

  • 税金の支払いがあったか等を確認
  • 税理士や納税者に聴き取りを行う
  • リーフレットと申告書等の控えを確認する

などを行った上で、提出したものとして判断すると。

なんかものすごく手間が増えるという印象を受けます。希望者にしか渡さないリーフレットも、提出したか確認するための資料として使うとなってますし・・・。

郵送で書類を提出する場合はどうすればいい?(問7)

郵送で書類を提出した際に、リーフレットをもらうには、切手を貼付けした返信用封筒を同封するよう求められています。

従来は

  • 書類の控え
  • 返信用封筒

を同封していましたが、申告書などの控えには押なつしないため、控えの同封は不要となるようです。

リーフレットを紛失したんだけど再発行してもらえる?(問7)

リーフレットを紛失等して再発行を依頼した場合には、

日付・税務署名の記載されていないリーフレットを交付」

するとされています。

日付も税務署名も記載のない、紙切れ1枚をくれるだけですので、再発行する意味はなさそうです。

もらったリーフレットはなくさないよう注意しましょう。

銀行から収受日付印のない控えは認めないといわれた(問4)

税務署に提出した書類の控えを銀行などに提示する際に

「収受日付印がないとダメ」

と言われるケースがあります。

この点については、国税当局が

「税務署では受付印押さないことにしたから、その前提で対応して」

と説明をしてきたとされていますが、「それでも日付印がないと困る!」といった要望をされる可能性はゼロではありません。

こうしたケースを把握した場合は国税当局から個別に説明を行う予定とされていますが、急いで借入れをする必要があるとか、補助金の申請が間に合わない、といった場合は、そんな悠長なことをいってられないのではないでしょうか・・・。

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今回の対応は「納税者の利便性の向上」のため?

税金に関する手続きがデジタル化されていくことには賛成ですが、今回の対応が

「納税者の利便性の向上等」(問1)

につながっているとは思えません。

今回の対応変更にあたり、e-Tax上で過去に提出した書類のすべて(書面を含む)を確認できるようにしてくれていれば、利便性の向上といえるでしょう。

将来的にはそういった検討もされているようですが、こうした環境が整う前に、窓口での書類の受付方法だけ変更するといった対応が、本当に適切なのかどうか疑問は残ります。

とはいえ、年明けからの変更は既に確定していますので、税務署の窓口に行ってから戸惑うことがないようご注意ください。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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