インボイス制度が始まると手間が増えそうなことのひとつが立替精算です。今回はインボイス後の立替精算について考えてみましょう。
個人宛のインボイスでも問題ないの?
インボイス制度が始まった後に、社長や従業員が会社の経費を立替えた場合、立替精算の処理が必要となります。
「宛名が個人名になっているインボイスでも問題ないの?」という疑問が湧くかもしれませんが、これについては従業員から会社に対する立替金精算書などがあれば問題ないとされています。
つまり既に使っている立替精算などのフォーマットがあれば、それと個人宛のインボイスを保存しておけば問題ありません。
会社の経費を立替することについては、従業員の方だと嫌がるケースがあり、事前に仮払いしたり法人カードを導入していたりして、本人が立替えるケースはあまりないかもしれません。
その一方で社長が「とりあえず自分で立替えとくわ」といったケースはまだまだあるのではないでしょうか。
そこで今回は、インボイス制度が始まった後の立替精算に関して気になる点を確認しておきます。
コンビニは同じチェーン店でも対応が同じとは限らない
立替精算をする際に面倒なのが、レシートをひとつずつか確認しながらインボイスかどうかチェックする点です。
従来は「インボイスかどうか」というチェックは不要ですから、この点は確実に仕事が増えます。
この点について先日気になったことのひとつが、コンビニのレシートです。
セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートなどなどいろんなチェーン店がありますが、コンビニの多くは個人オーナーがやっている個人事業です。
オーナーが法人化されているケースもありますが、本部の直営店以外のものが多数を占めていることに変わりはありません。
つまりインボイスを発行するかどうかは、それぞれの事業者(オーナー)の方が判断することになります(すべてのチェーンを確認したわけではないので例外はあるかもしれません)。
お店のオーナーが
「お客のほとんどは一般消費者だろうからインボイスなんていらないでしょ。」
「税理士に申告とか頼んでないのでインボイスなんてよくわからん。何もしなくても問題ないだろう。」
といった判断をしてインボイス登録しないケースも考えられます。
そうなると例えば同じチェーン店であっても、A店のレシートはインボイスだけど、B店のレシートはインボイスではないということも起こりうるわけです。
これって経理処理する担当者は結構大変ですよね。
「○○(チェーン店)だから全部インボイスになる」という判断はできないので、レシートをきちんと確認して登録番号が書いてあるかといったチェックをしなければなりません。
立替精算についてどのように対応するかよく検討しておかないと、インボイスが始まってから経理処理の効率が大きく落ちるかもしれません。
こうした状況に対して会計ソフト各社は
「レシートを読み取ってインボイスかどうか自動判定」
といった仕組みを提供してくれています。
こうした仕組みを上手に活用することで対応できるのであれば、導入を検討すべきでしょうし、立替精算をこうした仕組みに載せるのが業務フローからすると大変ということであれば、別の対応を考えなければなりません。
立替精算を減らす仕組みも検討すべき
実際のところ立替精算に関しては、インボイスが始まると結構面倒になるんじゃないかと感じています。
毎月の仕入などと異なり、どの店を使うかバラバラになることが多く、今まで使ったことのない店が頻繁に出てくるでしょう。
新しい取引先が出てくるとその都度インボイスかどうか、登録番号が正しいかといったチェックが必要になります。
出張旅費については「出張旅費特例」という取扱いがありますので、分けて考える必要がありますが、備品の購入などの立替についてはできるだけ会社に直接請求が行くような仕組みにした方が、経理の負担は増えないんじゃないかと。
会社に直接請求がいくようにする方法としては
- 会社で契約したネット通販(Amazon、アスクルなど)での購入に切替え
- 外出先での急な購入に備えて法人カードを渡しておく
といった方法が考えられます。
中小企業や個人事業者で今回取り上げたような備品購入などの立替金額が少額であれば、ある程度割り切って処理してしまうのもひとつの方法です(コンプライアンスの厳しい大企業などではダメですが・・・)。
大事なのは、起きうる状況をきちんと想定してどのようなスタンスで対処するかきちんと決めておくことです。
検討していく中で、今回取りあげたような意外な点が問題になる可能性は他にもあるでしょう。
インボイスへの対応は事前に検討しておくことがポイントとなります。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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