デジタルインボイスに関する記事などを最近もチラホラと見かけます。具体的な製品はほとんどない状況ですが、実現したときのイメージを(あくまで想像ですが)確認しておきましょう。

デジタルインボイスって何?

デジタルインボイスについては何度かこのブログでも取り上げていますが、単にインボイスをデータでやりとりするということではなく

「Peppolという規格に対応したソフトやサービスであれば、デジタルインボイスをデータのままやりとりできる」

というものです。

詳細はEIPA(デジタルインボイス推進協議会)のホームページで確認できます。

デジタルインボイスとは | EIPA|電子インボイス推進協議会

デジタルインボイスが実現されれば、PDFファイルで受け取ったインボイスを見ながら会計ソフトに手入力するといった作業がなくなり、経理が大きく効率化できると言われています。

このデジタルインボイスの実現には、デジタルインボイスをやりとりするためのサービスを提供するPeppol Service Providerという事業者が必要となりますが、デジタル庁のサイトを確認すると2023年3月13日時点で26社が既に認定されています。

デジタル庁:日本における認定Peppol Service Provider一覧

また2週間ほど前の新聞記事ですが、銀行が送金システムの規格をデジタルインボイスに対応させることで送金データに請求書の情報を含めて送信し、債権の消込業務の効率化が期待できるといったものがありました。

今後2023年10月のインボイス制度の開始に向けて、デジタルインボイスに対応した製品が順次出てくるでしょう。

デジタルインボイスで一気通貫できると経理処理はどう変わる?

私が使っているものの中ではまだテストできる製品がなく、中小零細企業が気軽に使えるようになるのかわかりませんが、今ある情報からデジタルインボイス導入後の経理業務をイメージしておくことはムダではないでしょう。

デジタルインボイス普及後の経理処理については、経理処理の流れに沿って【請求・回収側】と【支払側】で分けて考える必要があります。

【請求・回収側】請求書発行業務

まずは請求書の発行業務ですが、デジタルインボイスに対応した販売管理ソフトなどで請求データを作成し、Peppol Service Providerが提供するアクセスポイントを通じて請求先企業にデータを送信することになるでしょう。

現状でも販売管理ソフトから直接メールでPDFファイルを送付する機能などがありますので、手間としては大きく変わらないかもしれません。

現時点で印刷した請求書を郵送している会社であれば、デジタルインボイスに対応することにより、こうした作業がなくなり経理の効率化が期待できます。

販売計上の会計処理についても、既に販売管理ソフトと会計ソフトが連動している会社であれば大きく変わらない可能性が高いでしょう。

【支払側】データの受入・記帳・支払

請求書を郵送であれメールの添付ファイルであれ受け取った場合には、現状では会計ソフトに記帳する際に

「請求書を見ながら手入力」

というケースが多いのではないでしょうか。

これがデジタルインボイスになると

デジタルインボイスのデータを受信
→購入部門が内容を確認して問題無ければ承認して経理に回付
→会計ソフトの仕訳処理ルールに応じて自動的に仕訳を作成
→仕訳処理に間違いがないか経理で確認の上、最終承認したものが仕訳に反映

という流れになるのではないかと考えています。

この流れの中で人が行う作業は「確認」だけです。

郵便物を開封したりだとか、経理に物理的に請求書を持って行くだとか、仕訳データを作成するという作業がなくなる可能性は十分にあります。

支払処理についてもデジタルインボイスから振込データを自動的に作成し、内容を確認して承認すれば振込完了という姿が期待できます。

従来であれば、少なくとも債務管理ソフトなどに請求書を見ながら入力するという手間があるでしょう。

規格に沿ったデータをデータのまま受け取ることで、振込データを作るという作業が不要となります。

【請求・回収側】債権消込業務

入金があった際に困るのは、どの請求書に対する振込かわからないという点ではないでしょうか。

月締めの合算請求書を発行してそのまま振込みされれば、このような問題はありませんが

  • 複数の請求書を発行している
  • 締めのタイミングのズレなどにより振込金額が一致しない
  • 振込側の処理ミスにより間違った金額が振込まれる

等の理由により請求金額と入金金額の不一致は起こりえます。

そのため照合(消込)は、意外と大変な作業です。

この点については銀行側が振込データに請求書データを含められるよう対応してくれるのであれば、振込データと元の請求データを自動的に照合できる可能性が出てきます。

回収金額に相違がある場合も人が差異の原因を詰めるのではなく、どの請求書が回収されていないかを示すリストが自動的に出力され、その内容に従ってフォローするという業務フローになる可能性があります。

さらにいえば振込側もデジタルインボイスに対応していれば、振込データを作成する際に入力誤り等により振込金額を間違うといったミスがなくなり、回収時の差異そのものが減ることも期待できます。

やるならワクワクする仕事をした方がいい

私の想像の範囲ではありますが、デジタルインボイスが普及した後の経理処理の姿をイメージしてみました。

インボイスへの対応自体は正直言ってつまらない仕事です。

どうせ仕事をするなら仕事がラクになる、やっていてワクワクする仕事をしたいものです。

今回イメージしたような経理の状況を実現することは、効率的な状態を目指すものであり手抜きでもなんでもありません。

今後人口が急激に減少することが予想される中で、機械に任せられる仕事はできるだけ任せて、人が本当にやるべき仕事に注力できるような環境を積極的に作っていくべきでしょう。

今回の記事がそうした環境を整える際の経理業務をイメージする参考になれば幸いです。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。