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試算表のチェックポイントがわかったとしても、差額の原因を調べて解決するのは不慣れな方に取っては大変な作業です。チェック時の負担を減らすためにもミスが起きにくい経理の仕組みを検討してみませんか。

チェックポイントがわかればできるというものでもない

前回、所得税の青色決算書をチェックする際のポイントについてまとめました。

実際にはチェックポイントを理解できたとしても、いざチェックして合わない数字が多いと諦めそうになる人も多いのではないでしょうか。

合わない原因を見つけて解決するというのは、普段からこういう仕事をしているものにとっては当たり前でも、慣れていない方に取っては苦痛なはず。

(たまに慣れてる人間にとっても苦痛なほど複雑に絡み合ったミスというのもありますが・・・。)

ならば苦手な方ほど、できるだけミスが起きにくい経理の仕組みを作るのが大事です。

今回はこうした経理の仕組みを作る際に気をつけるべきポイントについて、主に個人事業者の観点から考えてみましょう。

ミスが起きにくい経理処理の仕組みのポイント

ミスが起きにくいポイントを考えるにあたり、今回も主な科目ごとに考えてみます。

現金

現金については身も蓋もない言い方になりますが、なくすのが一番確実です。

現金を使わない仕組み、いわゆるキャッシュレスというやつです。

特に個人事業者の場合、現金を事業用とプライベートできちんと分けるのは非常に難しいものです。

きちんと管理しないと残高がマイナスになったり、手元に現金がないのに現金残高が積み上がったりということが起こりえます。

管理が難しいのであれば回収や決済方法として現金を使わないというのが最も確実な方法です。

預金

預金については、通帳を見ながら入力していると入力漏れやミスが起きる可能性があります。

最近は銀行の入出金データと連携できる会計ソフトが増えましたので、やはりデータ連携は活用したいところです。

預金残高でミスが起きないようにするためには、データ連携をした上で

「預金の科目は絶対に修正しない」

というルールを守ることが大事です。

せっかく入出金データがそのまま会計ソフトに入ってきても、預金の科目を修正してしまうと残高が合わなくなってしまいます。

会計ソフトによっては連動した預金科目を修正できないものもありますので、自信がなければこうしたソフトを使うのもひとつの方法です。

さらに可能であれば定期的に残高をチェックした方がいいです。

ミスが積み重なると解決が大変になりますので、自力で解決できなくなるような状態になる前にチェックするのもポイントとなります。

売上

売上のモレを防ぐという観点では、会計ソフトと連動する請求書発行ソフトやレジサービスを使うのがひとつのポイントです。

お客様に発行した請求書のデータがそのまま仕訳として処理されるのがもっとも確実な方法です。

このとき注意すべきは

「請求するものは必ずソフトに入力する」

というルールを守ることです。

もし請求書を発行する前にお金が入ってきたとしても、請求データは必ず入力しましょう。

売上に関しては回収管理も大事なポイントです。これができていないと売掛金が正しくなりません。

この点に関しては

  • 入金データと請求データを消し込むことができるソフトを使う
  • 売掛金に相手先別の補助科目を設定し、相手先別の未回収残高を把握できるようにする

などの仕組みが必要となります。

また経理を煩雑にしないためには

  • 回収用の銀行口座はひとつに絞る
  • 現金での回収をできるだけ受けない

といった点も大事です。

預金口座の数が増えると照合が面倒になりますし、現金回収が発生すると現金残高の管理や銀行に入金に行く手間が発生します。

仕入・経費

仕入や経費については、個人事業者の場合は

「個人の財布から支払わない」

のがひとつのポイントです。

個人の財布で支払ってしまうと後で精算が必要になりますし、経費に計上することを漏らす可能性があります。

経費としての計上モレを防ぐためには

  • 事業用経費の支払口座をひとつに決めてそこからしか支払わない
  • 小口の経費については事業用のクレジットカード(もしくは電子マネー)を準備してそれで支払う

    というルールを決めた上で会計ソフトに連動させることを検討しましょう。

    支払った経費をExcelなどで集計して処理している方もいるかもしれませんが、この場合Excelへの入力を漏らす可能性はゼロではありません。

    事業用に支払ったものは自動的に会計ソフトに入ってくるという仕組みにした方が確実です。

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    土壇場で悩むのではなく先に仕組みを作っておく

    ミスが起きにくい経理の仕組みを作る際のポイントについて検討しました。

    全体としてまとめると

    1. 管理すべき範囲をできるだけ絞る、集約する(回収・支払口座など)
    2. 自動化できるところは自動化する、ツールを上手に活用する

    の2点がポイントとなります。

    経理処理はギリギリになって何もできていない状態では正直どうしようもなく、力業でなんとかするしかありません。

    だからこそ事前にきちんとまわる仕組みを作っておくことが重要です。

    「自分でそんな仕組みを作るのはムリ」というのであれば、仕組みを作るところだけ専門家の力を借りるのもひとつの方法です。

    今回の所得税申告で「もっと早く準備しておけばよかった・・・」と感じた方は、ぜひ来年に向けて経理の仕組み作りを検討してみてはいかがでしょうか。

    投稿者

    加藤 博己
    加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
    大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
    31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

    40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

    中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

    現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
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