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「手順を省略すれば仕組みは使いやすくなる」と思っていましたが、そうとは限らないと感じる事例がありました。「使いやすい」とはどういう状態か改めて考えてみたいと思います。

「使いにくい」のは、自分が想定したとおりに動かないから

地方税関係の届出などは、eLTAXという仕組みを使ってデータで提出することができます。

このeLTAXですが、Webでログインする画面とダウンロードしたソフトで提出できる帳票が違ったりと、少しクセのある仕組みです。

先日、ダウンロードしたソフトからしか提出できない書類を作成する機会がありましたが、内容チェック用に、一旦PDFファイルを作成しようとしたときの話。

通常のソフトやアプリであれば、

「印刷」メニューを選択 → プリンターの選択画面がでてくる → Adobe PDFを選択 → 「印刷」ボタンを押す

という流れでPDFファイルを作成します。

ところが、「印刷」と表示されているボタンを押してみてもプリンターの選択画面が表示されません。

しばらくすると、プリンターが突然動き出して、書類が紙に印刷されてしまいました。

一瞬何が起きたか理解できず、ネットで調べてみたところ、eLTAXのサイトに次のような説明が。

eLTAXよくあるご質問:PCdesk(DL版)を利用して印刷を行う際、「印刷」ダイアログが立ち上がらない、または反応がありません。

Q:PCdesk(DL版)を利用して印刷を行う際、「印刷」ダイアログが立ち上がらない、または反応がありません。

A:PCdesk(DL版)から印刷を実行した場合、操作端末において「通常使うプリンター」に設定されているプリンターに自動的に出力しています。

これ読んだときの感想はひと言、「え、なんで?」。

印刷処理をする際に、プリンターの選択画面が出てこないのは初めてでしたので、かなり戸惑いました。

なぜこのような変った仕様になったのか考えてみましたが、私の想像では

「印刷するたびに、プリンターを選択するのは誰でもメンドウだと感じているはず。プリンターの選択画面を表示させずに、通常使うプリンターで印刷処理すれば、みんな便利だと思うはず。」

といった考え方でつくられたのではないかと(間違ってるかもしれませんが・・・)。

「使いやすい」とはどんな状態?

このとき感じたのは、

「作業工程が減るからといって、使いやすいと感じわけではない」

ということ。

何らかの作業をするにあたり、工程が10個あるよりも、半分の5個の方が負担も少なくラクではありますが、闇雲に工程を減らしても「使いやすい」と感じるとは限らないということです。

では、「使いやすい」と感じるのはどんなときか?

それは、「作業をすることにストレスを感じないとき」ではないかと。

誰でも作業する際にアタマの中に、「次はこうなるだろう」という予測・イメージを多かれ少なかれ持っているものです。

作業の流れの全体像を意識していなかったとしても、個別の作業において

「このボタンを押したら、多分こうなるんだろうな」

というイメージは無意識であっても持っているはず。

そうした予測やイメージとかけ離れた動作に直面してしまうと、

「えっ、なんで思った通りに動かないの?」

となってしまい、結果として「使いにくい」と感じてしまうことになるのではないかと。

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相手の「使いやすい」を少しだけ考えてみる

このように考えると、自分が誰かに仕事を依頼する場合なども、相手の想定と異なる方法で依頼してしまっていて、「使いにくい」「やりにくい」と思われている可能性も否定できません。

相手のアタマの中身を知ることはできませんので、相手の予測を想定して対応することは不可能ですが、こうした観点を持っておくことも大事なんじゃないかと。

人それぞれ感じ方も違いますので、万人が「使いやすい」と感じる仕組みを作ることはなかなか難しいことだと思います。

とはいえ、相手が作業する際に、できるだけストレスを与えないやり方の方が「使いやすい」と感じてもらえる可能性が高いわけですから、その点は意識しておきたいな、と。

今の仕事の依頼の仕方や仕組みが、相手にとって「使いやすい」「やりやすい」という状態になっているか、ちょっとだけ見直してみませんか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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