「失敗から学ぶ」ということは大切ですが、あらゆる失敗を自分で経験することはできません。他人の失敗事例からいかに学ぶべきか考えてみましょう。
届出書の電子送信の失敗でも賠償請求につながることはある
先日税務雑誌を読んでいて、税理士への賠償請求となった事例についての解説記事がありました。
内容は、
- 税理士が新設法人から法人設立届や青色申告承認申請書などの提出を請け負う
- 青色申告承認申請書のみ、電子申告での提出時に送信エラーとなっていたことを見落としていた
- 青色申告の法人税申告書提出後に、税務署より青色申告承認申請書が未提出との指摘あり
- 欠損金(損失)の繰越が認められず、賠償請求となる
といったものでした。
この件、何気なくTwitterでツイートしてみたところ、思っていた以上に反応があり、少し驚いています。
新設法人から依頼を受けた税理士が、青色申告承認申請書をe-Taxにより提出したが、送信エラーとなっていることに気づかず、提出漏れとなってしまい賠償請求を受けたという事例。
— 加藤博己@税理士・FP in 京都 (@katoh_tax) April 26, 2021
他人事とは思えない事例です。送信後には必ず「メール詳細」を確認しないと…。#税務通信
税理士の仕事をしていると、同様の事例が自分の身に降りかかる可能性はゼロではない、と感じ方が多かったのかもしれません。
電子申告による書類の送信エラーでも、当然賠償請求となり得る状況はあると思ってはいましたが、実例を目の当たりにすると、便利なツールである電子申告にも細心の注意を払うべき、ということがよくわかります。
こうした事例から学べることは多いと感じていますので、今回は「失敗から学ぶ」ということについて、少し考えてみましょう。
他人の失敗事例からの学び方
失敗やミスといったものは、もちろん起きない方がいいのですが、起きてしまったときにそのままにしてしまっては非常にもったいないものです。
そこから、
- 何が原因か?
- どのような改善策を打てるか?
- ミス発生後のリカバリーは十分だったか?
などいろいろなことを学ぶことができます。
とはいえ、自分ですべてのミスや失敗を経験する、というのは現実的ではありません。
ミスや失敗が多発している状態だと、そもそも事業として継続することができません。
そこで活用したのが、「他人の失敗事例から学ぶ」ということ。
通常は一部の書籍などを除けば、他の方がどのような失敗をされたのか知ることができる機会はそれほど多くありません。
ところが、税理士という仕事でいえば、税理士職業賠償責任保険という保険があり、毎年保険の支払い事例集が送付されてきたり、今回のような税務雑誌に事例が取り上げられるケースもあり、そうした情報を知ることが可能です。
せっかく知るチャンスがあるのであれば、そこから学ばないのは非常にもったいない。
漫然と読むだけでは、なかなか学び得ることはできませんので、そうした事例を確認する際に、個人的に気をつけているポイントが3つあります。
- 事例を読んだときに、その税理士の方だけの特殊事例として捉えないこと
- 「自分だったらこんなミスはしない」と自分を過信しないこと
- 事例から現在の業務の中で見直すべき点がないか考えること
せっかく事例に接する機会を持つことができても、
「そんなミスするのは、この税理士だけだよ」
「普通にきちんと仕事してたら、こんなミスしないよ」
といった気持ちで読んでしまうと、そこからの学びはありません。
ミスが起きるときは、本当にちょっとした手違いや勘違いが重なることで起きてしまうものです。
事例の中で起きたミスを、流出前に検出できるような仕組みになっているか、という視点で自分の業務を見直すことが重要です。
なんでも活用しようと考えられるかどうか
今回の内容、「その程度もうやってるよ」という方も多いかもしれません。
大事なのは、「活用できるものは、なんでも活用しよう」という意識を持っておくこと。
賠償請求の事例集を受け取っても、読まずに放置していれば活用することはできませんし、雑誌記事を読んでも、「ふーん、そうなんだ」で終わってしまえば、何も変りません。
日頃のちょっとした意識の持ち方で、目の前にある「素材」を活かせるかどうかは違ってきます。
身の回りに放置されたままの活用できる「素材」がないか、一度見直してみることで、業務の質を上げられないか検討してみてはいかがでしょうか。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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