なかなかよい解決策が見つからない課題というのはあるものです。そんなとき少し違う方向から考えてみませんか。

銀行データはネットバンキングからしか取れない?

かなり以前になりますが、仕事の上で悩んでいたことのひとつが

「どうやって記帳のための入力作業を減らすか」

ということでした。

人を雇ってガンガン拡大していくつもりはありませんでしたので、入力作業のためだけに人を採用しようとは思いませんでしたが、その一方で全部自分でやっていてはすぐに限界が来るのも事実。

そのように悩んでいた時期が、ちょうどクラウド会計の普及時期でした。

データさえあれば通帳の入力作業を減らすことができるということで、

「解決するためにクラウド会計導入していこう」

と考えたのは自然な流れでした。

ところが次に問題となったのは、

「ネットバンキングの契約をしてもらえないケースが一定数ある」

ということ。

私からすれば、窓口まで行かずに振込できたり、残高確認できるなんて大きなメリットだと考えていましたが、いろいろ事情があったり、メリットを感じないと言われたりして、ネットバンキング契約がなくクラウド会計が使えないケースがありました。

当然のことながら

「入力作業減らしたいので、クラウド会計導入します。ネットバンキング契約してください。」

と説明して、「はい、わかりました」と言っていただける方が稀でしょう。

クラウド会計を導入する、ネットバンキングを契約する、といったことに対して相手側に明確なメリットがなければ了承してもらえるはずもありません。

この相手側のメリットを見つけられずに、「クラウド会計導入できない」と悩んでいました時期がありました。

「データがなければ作ればいい」という発想

そんな風に悩んでいる内に、「クラウド会計を導入すること」自体が目的化してしまっていたような気がします。

つまり

入力作業を減らしたい → そのためにはデータが必要 → 銀行データはネットバンキングからしかとれない → ネットバンキングと取込みのためのクラウド会計が必須

という思考です。

でもある日、

入力作業を減らしたい → そのためにはデータが必要 → データがなければ自分でつくればいい!

と気付きました。

預金データはネットバンキングからしかとれない、と思い込んでいましたが、当初の目的は「入力作業を減らすこと」。

ネットバンキングのデータがとれないからといって、何もできないと決めつける必要はありません。

クラウド会計で自動仕訳ルールをきちんと整理した上で、Excelに通帳の日付・金額・摘要を入力したものを取り込めば、1行ずつ仕訳を入力する作業と比較すれば、格段に早くなります。

さらにその後STREAMEDという紙の帳票をデータ化するサービスが登場しました。

これも当初は「レシートをデータ化するサービス」と思い込んでいたのですが、よくよく調べると通帳のデータ化も可能。

そうなると、コストはかかりますが、自分でExcelに入力する必要すらなくなりました。

ここでも「STREAMED=レシートのデータ化」という思考から、「STREAMED=通帳のデータ化に使えるもの」と考え方をずらすことで、さらに入力作業を削減することができたわけです。

ちなみに極端な例かもしれませんが、ネットバンキングは契約しているけれども、クラウド会計と連携したくない、というお客様がいる場合、ネットバンキングの明細を送れば、STREAMEDではデータ化してくれます。

クラウド会計ソフトとネットバンキングを連携してもらえないからといって、入力作業の効率化を諦める必要はないわけです。

課題を解決して「何を」実現したいのか再確認する

課題解決に行き詰まるときは、往々にして思い込みや考え方が固定化してしまっていることが多いものです。

そんな時に、「視点をずらしてみたらどうですか?」というのが今回のテーマですが、では実際にどうすれば視点をずらすことができるのか。

今回例に挙げたケースでいえば、きっかけは「入力作業を減らす」という当初の目的に立ち返ることでした。

つまり目の前にある課題を解決して、最終的に「何を」実現したいのか改めて考えてみることが大事ではないでしょうか。

平凡な内容かも知れませんが、行き詰まったときは原点に返ってみる。

やはりこうした基本動作って大事だと思います。

「いい解決法が見つからない」と悩まれている方がいらっしゃいましたら、その課題を「何のために」解決しようとしているのか、改めて整理してみてはいかがでしょうか。

 

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。