最近読んだ本で、説明の仕方について改めて考えさせられるものがありました。人に対する説明において、平易な言葉で言い換えることの大切さについて考えてみたいと思います。

母国語でない言葉でのコミュニケーションは難しい

「ずるいえいご」(青木ゆか・ほしのゆみ著、日本経済新聞社)という本を最近読みました。

この本のスタンスは、「難しい単語を使わずとも、簡単な単語で言い換えれば英語は十分に伝わる」というものです。私も仕事で英語で使っていた時に、同様の考え方を持つようになっていましたので、非常に共感できる内容でした。

そして、この本を読み終えて改めて感じたのが「言い換える力」の大切さ。

会社員時代に欧州に出向していたことがありましたが、現地スタッフとのコミュニケーションは当然のことながら英語。
最初の出向先こそイギリスでしたが、そのあとはチェコとスロバキアで働いていました。

チェコ、スロバキア共にどちらも英語を母国語としない人たちです。
欧州と聞くと、「向こうの人は誰でも難なく英語を話す」といったイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、実際のところそうではありません。

日本人の大部分の方は、欧米人から「日本人だから中国語話せるだろ」と言われても困ってしまいますよね。それと同じように、これらの国でも英語が得意な人もいれば、全くダメという人もたくさんいました。

さらに、こちらも日本人ということで、お互い母国語でない言語でコミュニケーションをとるわけですから、会話がチグハグになることもしばしば。

そのため英語で話をする際に私が心がけるようになっていったのは、「たとえ文章が長くなったとしても平易な単語でわかりやすく説明する」ということ。

仮に難しい単語を知っていたとして、その単語がその状況に最も適切な言葉であったとしても、相手に伝わらなければ意味がありません。
だからこそ、伝えたい内容のポイントをまず自分の中で明確にして、それを簡単な単語で伝えるよう心がけていました。

この時大切なのは「どの単語を使うか」よりも「伝えたい内容をいかにわかりやすく噛み砕くか」という点です。

伝えたい内容さえ明確になっていれば、使う単語のニュアンスが多少違ったとしても内容はなんとか伝わるものです。

だからこそ、「今自分が相手に伝えたい情報は何か?」という点を重視して英語を話すようにしていました。

税法の「意訳」こそ税理士の腕の見せ所

一方話は少し変わりますが、税理士とお客様の関係を考えてみると、税理士は税法を母国語とするネイティブスピーカーです。

それに対して、お客様にとっては税金の話は何度聞いてもよくわからない外国語のようなものであるケースがほとんどでしょう。

そうなりますと、税理士がお客様に説明する際の姿勢としては、英語を母国語とする人が母国語としない人に話しかけるときと同じものが必要となります。

つまり先ほど書いたように、「伝えたい内容を自分の中で明確にした上で、それをできるだけ平易な言葉で説明する」という姿勢です。

お客様にいきなり「租税特別措置法では・・・と規定されています」とか「法人税の別表では・・・」なんて説明しても伝わるわけがありません。

仮に、「租税特別措置法では・・・と規定されています」という内容を英語で説明してくださいと言われても、そのまま訳すことはできません。

日本の税法用語の全てが英語の単語として存在するわけではありませんので、そのまま訳すこと自体にそもそも無理があります。

英語の和訳を習う時に「直訳」と「意訳」というのがありましたが、税法を英語に「直訳」できないように、日本人の一般のお客様に「直訳」した税金の話を説明しても、お客様の頭の中の辞書には税法用語や税金についての細かい知識がないケースが多いですから、どうしても伝わらないということになります。

そのため説明する際に、税金の話をわかりやすく「意訳」する必要が出てくるわけです。

この「意訳」するというのは、「文章の内容を理解した上で、相手に伝わりやすいように訳する」ということですから、まさに「言い換える力」がポイントになります。

税法を「意訳」した上で説明して、お客様から「ああそういうこと、よくわかったよ。」とどれだけいってもらえるかが、税理士の腕の見せ所ということですね。逆にいえば、税法を「直訳」して説明しているようでは税理士としてまだまだということでしょう。

とはいえ、説明の仕方に正解はありませんので、こうしたスキルはこの仕事をする上で常に磨いていかなければなりません。試行錯誤を繰り返しながら、少しでも理解いただける方法を模索していくことが重要だと改めて考えさせられました。

以上、「言い換える力」の大切さ についてでした。