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上司承認・稟議といった手続きなしに設備購入やサービス契約などを決められる立場にある場合、何をもとに判断を行うべきでしょうか?

自分ひとりで判断できる環境って気楽?

前回の記事で、kintoneを試してみて導入するかどうか検討中、といった内容について書きましたが、そのときこうした投資判断の基準はどうあるべきかといったことを少し考えていました。

(以下、「投資」という言葉を使いますが、これは設備の購入や新規サービスの契約を指す意味で使用します)

個人事務所やひとり会社の社長、もしくは数人で運営している会社の社長など、設備投資や新規サービスの契約について、誰からもチェックを受けることなく、自分で決められる環境の方はそれなりにいらっしゃるでしょう。

こうした環境にいると、ついつい「便利そう」「面白そう」といった感覚だけで決断してしまう可能性があります。

こうした状況について、組織で働いていて投資をするたびに

「稟議書をまず書け」「投資金額もっと減らないのか」「何ヶ月で回収できるんだ」

などと細かく詰められる方達からすると、「なんてうらやましい環境なんだ」と思われるかもしれません。

もちろん「自分で決められる」という点は大きなメリットではありますが、逆に言えば

  • 投資すべきでないものであっても、誰も止めてくれない
  • 投資内容について、客観的な意見を聞くことができない
  • 見極めが甘いまま投資すると、事業資金が足りなくなる可能性がある

といったデメリットと背中合わせのメリットなわけです。

自分で決められる環境であっても判断基準は決めておくべき

先ほども書きましたが、特に大きな組織の場合、ある程度の金額を投資するとなると、

  1. 稟議書の作成
  2. 投資効果の見極め
  3. 責任者による決裁

といった手順を踏まないと、投資を実行することはできません。

会社によっては、「1年以内に回収できない投資は認めない」といった内部ルールを設けているところもあるでしょう。

こうした仕組みやルールって、もちろん権限のない社員が勝手に大きなお金を動かすことがないようルールとして決めているわけですが、それと同時に過去の投資の失敗なども踏まえて、組織としてのノウハウなどを織込み、成功する確率が上がるようにしている側面もあります。

例えば先ほどの「1年以内に回収できない投資は認めない」といったルール。

会社のトップがこうした方針を事前に決めておけば、投資決裁の権限委譲をした際に、判断する人によって判断基準がブレるといったリスクを減らすことができます。

そう考えると、自分ひとりで投資を決められる環境にあったとしても、事前に投資判断のためのルールを決めておくというのは有効な方法になるはず。

その一方で、ルールを決めるとすると、効果を金額で測定する必要があります。

これが難しい場面もあり、例えば「○ヶ月で投資を回収できる場合のみ投資する」というルールを決めたとしても、単純に当てはめられないケースもあるし、戦略的に投資が必要なケースも稀にあるでしょう。

そうした場合であっても、ルールを事前に決めておけば

「今回のケースは、あえてルールからはみ出して行う」

という点を意識することはできます。

もしその投資がうまくいかなかったとした場合、次からは

「ルール外の投資はやはり禁止することにする」

といったルールのアップデートができますので、将来の投資判断の改善につながります。

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ルールは組織でなくても活用しよう

「ルール」という言葉を聞くと、どうしても「組織に必要なもの」と考えてしまいがちですが、個人事業主やひとり社長であっても活用すべきものでしょう。

ルールを決めることで、

  • ルールを決める過程で自分の仕事のやり方を見直せる(自分の考え方の整理)
  • 判断をルーチン化することによる判断時間の短縮(生産性向上)
  • 判断に迷った際のものさし(過去の自分はどう判断したかの言語化)

といった効果が期待できます。

「ルールになんて縛られるのはイヤだ、自由にやりたい」と思う方もいるかもしれませんが、ルールは自分を助けてくれるものです。

「なんとなく業務用のモノ買ったり、新しいサービスを次々契約してしまって、資金繰りが苦しい気がする」とお感じであれば、一度購入を決める際のルールを決めてみてはいかがでしょうか。

ルールを決める過程で、新たな気づき・発見があるかもしれません。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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