やろうとしてなかなかできないことの一つに「ペーパーレス」があります。ペーパーレスが難しい理由について、特にペンにまつわる問題について今回考えてみたいと思います。

ディスプレイが紙の代わりにならない理由

ペーパーレスを推進しようと思っても、なかなか踏み切れないケースは多いでしょう。

ディスプレイに紙の代わりをしてもらう必要がありますが、その場合の課題として以下の3点があると考えています。

  1. ディスプレイの視認性の問題
  2. ページめくりの問題
  3. ペンの規格が複数ある問題

1.ディスプレイの視認性の問題

見た目が紙と違うため、長時間画面を眺めていると目が疲れる。もしくは紙と同じような感じで見ることができないという問題。

これについては、ディスプレイの技術の進歩を待つしかないのかなと思います。

現状でできる対策としては、反射を抑えるフィルムを貼るなどの方法はありますが、対症療法でしかありません。

2.ページめくりの問題

紙をめくるようにページを繰れないため、サッと全体に目を通したり、探している情報を短時間で探すことができないという問題。

これについては、データであれば「検索」という形で必要な情報を探すことができます。

実際には、人がサッと目を通したときに情報を見つける能力も捨てたものではありません。

悩ましいところではありますが、当面は検索機能を上手に使って、電子ファイルのページめくりの技術が良くなることを期待、といったところでしょうか。

1本のスタイラスペンで複数の端末に書き込みできるか?

今回は、3のペンの規格の課題についてもう少しくわしく考えてみたいと思います。

ペーパーレスを進めるには、スタイラスペンを使って紙と鉛筆のような感覚で電子ファイルに書き込みできるようになる必要があります。

ところが実際にスタイラスペンで書き込もうとすると、

  • ペンそのものの書き心地が違う
  • 規格が複数あるため、1本のペンで異なる端末に書き込めない
  • 同じ端末を複数持っていても、都度切替が必要

といった問題がでてきます。

最初の書き心地の問題については、今後技術が良くなって改善されることを期待するしかありません。

次の規格が複数あることについては、統一する方向で業界が動いてくれるのを待つしか無いのでしょう。

前回ご紹介したUSI規格のスタイラスペンについては、ワコムやIntel、Googleといった会社が加盟しているようですので、今後ある程度統一されていくのではないかと期待しています。

外付けディスプレイにも同規格が採用されて、スタイラスペンで書き込みできるようになったりすると、ペンで書き込みできる環境が大きく変わるのではないか、とか勝手に妄想したりしていますが。

最後の都度切替が必要な問題ですが、ペンの種類ごとに現在の状況を整理してみます。

ApplePencilの場合

例えばApplePencilを1本持っていて、複数のiPadを所有している場合。

iPadを2枚並べて別の書類を同時に表示して、書込みができないか調べてみたのですが、この場合、別のiPadで書込みをするたびに、ペアリングしなおす必要があるようです。

そのため、iPadを複数台準備して複数の書類を表示させて書き込むというのは、切替の手間を考慮すると現実的ではありません。

Surfaceペンの場合

Surfaceペンについては、手元にSurfaceBook2とSurfacePro6があるため、実際に試してみましたが、事前に両方のパソコンとペアリングが完了していれば、再度ペアリングしなおす必要もなく使うことができました。

Surfaceペンのボタンも設定通りに両方のパソコンで動作しましたので、特に問題は生じていません。

複数のパソコンに同時に書類を表示させて書き込むという場合、Surfaceペンだと実現できそうですが、複数のSurfaceパソコンを準備しなければならないため、コスト的に現実的ではないでしょう。

Chromebookの場合

Chromebookについては、実機が1台しかなく、規格も複数あり、かつ情報もありませんでしたので、現時点では不明です。

ただ、今使っているスタイラスペンは、最初に画面タッチするだけで設定完了しましたので、再度ペアリングなしに使えるのではないかと期待しています。


端末を切替える際に再度ペアリングが必要かどうかという点については、残念ながらネット上で仕様等を調べても、ほとんど情報がありません。

実際の動作としては異なる可能性もありますので、その点ご了承ください。

複数の端末で複数の書類を開いて書き込むというケースが想定されていないのかもしれませんが、紙と鉛筆であれば複数の書類を並べて、同時に書込をするということは当然ありえます。

それがデジタルに置き換わるのであれば、当然そうしたケースも想定して対応してもらわないと、ペーパーレスへの移行が進まない一つの要因になるのではないでしょうか。

今回調べた限りでは、コストも含めて現実的に対応できそうな方法は、残念ながら見つかりませんでした。

技術の進歩を待つか?それともとりあえずやってみるか?

ペーパーレスが難しい理由について、主にスタイラスペンでの書き込みについてまとめましたが、規格の統一や技術の改良で解決できる問題だと考えています。

そう考えたときに、問題が解決して苦労なく使えるようになってからやり始めるか、それとも現状でとりあえずやってみるか。

個人的には、やってみないとわからないことは多いと思っているので、とりあえず今やってみることをオススメしています。

やってみてダメだと判断すれば、その時点でやめればいいですし、やってみたことにより多少なりともノウハウや判断基準を持つことができます。

ただ気をつけないといけないのは、

「以前やってみてだめだった。だからずっとダメなはず。」

という思考では、状況が変わったときに対応が遅れます。

自分の経験からくる思い込みに囚われないよう、その点だけは注意すべきですね。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。