消費税の申告書を作成する際に、自らが支払った消費税は控除することが出来ますが、この控除には帳簿と請求書等の保存が必要です。どういったものを保存する必要があるのか基本的なポイントを確認します。

消費税を計算する際の基本的な仕組み

消費税を納めなければならない納税義務者となっている方は、消費税の申告書を作成して税務署に提出する必要があります。

税務署に納める消費税を計算する方法は、単純化して書きますと、

売上に伴いお客さんから預かった消費税 - 仕入などに伴い支払った消費税 = 税務署に納める消費税

となります。

※実際の消費税の計算は、支払った消費税を全額控除できないケースもありますので、正確な計算については専門家にご相談下さい。

で、この計算ですが無条件にできるかというと、そういうわけではありません。

支払った消費税を預かった消費税からマイナスするためには、帳簿と請求書等の両方の保存が必要とされています。

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消費税の控除を認めてもらうための条件は?

では具体的に、どのような帳簿や請求書等を保存する必要があるのか確認していきます。

なお、今回は一般的な国内での取引に限って解説します。取扱いが異なるケースもありますので、その点ご注意ください。

【2019年12月2日追記】

以下の解説は、軽減税率導入前の制度に基づいた内容となっています。2019年10月1日以降の変更点については、下記記事をご参照ください。

帳簿に書かなければならない内容は?

仕入などに伴い消費税を支払った場合には、以下の項目を帳簿に書かなければなりません。

  1. 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  2. 課税仕入れを行った年月日
  3. 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
  4. 課税仕入れに係る支払対価の額(消費税額及び地方消費税額に相当する額を含みます。)

堅苦しい書き方になっていますが、要するに

  • 仕入をした相手の名称
  • 仕入を行った日付
  • 仕入をした内容
  • 支払った金額

の4項目を帳簿に記載しておく必要があるということです。

保存しなければならない「請求書等」とは?

保存が必要なのは、『請求書「等」』とされています。そのため、必ずしも請求書という名目の書類でなければならないということではありません。

法律上は

請求書、納品書その他これらに類する書類で次に掲げる事項(かっこ内省略)が記載されているもの(消費税法第30条9項より抜粋)

とされているため、必要事項が記載されていれば納品書などでも認められます。

そしてそれらの書類に記入が必要となるのは、以下の5つの項目です。

  1. 書類の作成者の氏名又は名称
  2. 課税資産の譲渡等を行った年月日
  3. 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
  4. 課税資産の譲渡等の対価の額
  5. 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

これもカンタンに言うと、

  • 請求書などを作成した会社の名前
  • 商品などを販売した日付
  • 販売した内容
  • 請求金額
  • 売上の相手先の名称(仕入をした相手の名前)

ということになります。

なお、小売業・飲食業・タクシーなど不特定多数の方を相手にする業種の場合は、5については書かなくてもよいことになっています。

コンビニなどのレシートには宛名の記載がありませんが、それで問題はないということです。

どんなケースでも請求書等の保存が必要なのか?

では、いかなる場合であっても請求書等を保存しなければならないのか?

法律上は、以下の2つの例外を設けています。なおこれら以外にも、災害等により保存できなかったケースも認められますが、今回は割愛します。

  • 1回当たりの支払金額が3万円未満である場合
  • 支払金額が3万円以上でも、請求書等をもらえないことについてやむを得ない理由がある場合

これらのケースでは、帳簿が保存されていれば問題ないとされています。

なお、1回当たりの支払金額が3万円未満というのは、1回当たりの取引金額が3万円未満かどうかで判断しますので、例えば、1万円の商品と2万円の商品を同時に購入した場合には、請求書等の保存が必要となります。

また、請求書等をもらえないやむを得ない理由というのは、自動販売機で商品を購入した場合や交通機関を利用して切符が回収されてしまう場合などを指します。

このやむを得ない理由がある場合には、帳簿に先ほど説明した項目に加えて、

  • やむを得ない理由
  • 取引相手の住所または所在地

を記載しなければならないことになっています(一定の取引先を除く)。

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備えあれば憂いなし。不備がないか一度確認を。

今回は、消費税の控除を受けるために必要な基本的なポイントを確認しました。

実際に税務調査などの場面で、今回解説したような内容がどこまでチェックされるかというのは、実際の場面にならないとわかりません。

しかしながら法律に書いてある以上は、指摘を受ける可能性はあるということです。

税務調査の場面で指摘を受けてから慌てたりすることがないよう、帳簿の記載事項や必要な請求書等が保存されているか、一度確認されてみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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