業務を効率化するためには、その前段階として現在抱えている課題を明確にする必要があります。その課題発見に必要な質問力について考えてみたいと思います。

RPAは力業での効率化が可能なツール

以前ほどではなくなりましたが、業務効率化のツールとしてRPAが取り上げられることがよくあります。

うまく使えば非常に強力なツールですが、RPAは操作そのものを自動化できるため、気をつけないと非効率な業務をそのまま自動化してしまうという危険性があります。

「非効率な業務でも自動化してしまえば、人がやらずにすむのだからそれでもいいのでは?」

という考え方もあるかもしれませんが、そのような進め方ではいろいろと問題も生じます。

少し極端な事例かもしれませんが、次のような業務フローで考えてみましょう。

【会計事務所での会計ソフト入力完了までの業務フロー】

  1. 顧客から資料を預かる
  2. 顧客から預かった資料に基づき、Excelの一覧表にまとめる
  3. 作成した表を紙に印刷する
  4. 印刷した紙を見ながら会計ソフトに仕訳を入力する
  5. 会計ソフトへの仕訳入力を完了する

この業務フローに対して、RPAを導入することになり、3→4の部分に対して

  • 印刷した紙をスキャナーで読み取り、OCRでデータ化
  • データ化したデータに基づき、RPAが会計ソフトに自動的に入力

という自動化を実現したらどうなるか?

もちろんこれも自動化であることには変わりありませんが、OCRの精度に問題があったりすると、会計ソフトへの入力処理が終わった後に、人が仕訳を全部チェックすることになるかもしれません。

これでは自動化しても、効率化したことにはなりません。

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適切な質問は、本当の課題を見つけてくれる

先ほどの事例で問題だったのは、業務フローを効率化する前段階での質問の設定の仕方です。

4→5のフローに対して、

「仕訳入力の自動化ができないか?」

「そのためには、印刷した紙をOCRで読み取ってデータ化できないか?」

という質問を設定して、その答えに基づいてRPAを導入してしまったため、中途半端な効率化で終わってしまいました。

そうではなくて、2→3→4の流れの中で、

「そもそもExcelから紙に印刷する必要があるのか?」

「Excelに入力したデータを、印刷せずに直接会計ソフトに取り込めないか?」

という質問を設定できていれば、RPAを導入しなくても、会計ソフトのインポート機能だけでコストをかけずに目的を達成することができたはずです。

さらにいえば、1→2の段階で

「そもそもこのExcelデータと同じようなものを、お客さんが既に作っていないか?」

という質問が設定できていれば、お客さんが作ったデータを共有ドライブに保存してもらい、そのデータをRPAが自動的に読み込んで会計ソフトに入力、といった業務フローが構築できたかもしれません。

このように、業務フローの適切な位置に、適切な質問を設定することによって、現在抱えている課題を明確にすることができるわけです。

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適切な質問をするためにはどうすればいいか?

では、適切な質問を設定するためにはどうすればいいか?

今回の事例は非常に単純なため、文字で書いたものを読んでもすぐに質問を思いつくかもしれませんが、実際の業務フローはそれほど単純ではありません。

そこで必要となるのが、「業務フローを可視化すること」です。

例えば業務フローをまとめるために、フローチャートにまとめるというものひとつの方法です。

今回の事例をフローチャートにすると、次のようになります。
(以下、本来のフローチャートの書き方とは異なる部分もありますが、業務の流れを把握するための便法として使っていますので、ご了承ください)

この流れを見ながら、ひし形で表現される条件分岐をどこかに入れられないか考えていきます。
(「条件分岐」ではなく、一般的には「判断」と説明されていますが、本記事ではあえてこの表現を使います)

最初の失敗例では、 「入力を自動化できないか?」という質問を 4→5の間に、置いてしまったために、印刷した表を使うことを前提として、その後の検討がすすんでしまったわけです。

同じ「入力を自動化できないか?」という質問であっても、これを2→3の間に置けば、

その後の流れは、紙の印刷を前提とせずに検討を進めることができます。

一方で2→3の位置に質問を置いたとしても、その質問内容が

「もっと早く手入力できないか?」

だとしたら、その後の検討内容は、

  • 従業員にタッチタイピングの練習をさせる
  • 仕訳辞書を大量に登録して、入力スピードを上げる

といった結論になるかもしれません。

このように業務上の課題を見つける上での適切な質問とは、繰り返しになりますが、

  • 業務フロー上の適切な位置に
  • 適切な内容の質問を置く

という2つの要素を満たす必要があります。

業務の現状整理がうまくいかないときに、業務の流れを図表に落とし込んで、そのフローの中で

「なぜこんな作業をしているのか?」

「こんなことはできないのか?」

という質問をはめ込むことで、頭の中でモヤモヤしていた課題が一気に明確になることがあります。

課題整理がうまくいかないとお悩みの方がいらっしゃいましたら、ひとつの方法として、参考にしていただければと思います。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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