税理士試験の受験時代の勉強法について何度か書きましたが、税理士試験が終わったからといって税理士としての勉強が終わるわけではありません。
今回は、税理士試験に合格した後の税理士としての勉強法について考えてみたいと思います。
税理士試験受験時代の勉強範囲
税理士試験の試験範囲は受験する科目に関する法律全部が対象となります。
法人税法を受験するのであれば、法人税法及び関連法令全てが試験範囲となるわけです。
従って、受験時代は本人が好むと好まざるとに関わらず全般的な範囲を勉強することとなるため、受験する科目については科目の全体をある程度網羅した知識を習得することができます。
ここで「ある程度」と書いたのは、受験対策として勉強するためどうしても出題されやすい範囲に偏る傾向があることは否めないためです。
それでもかなり広い範囲をカバーすることには変わりありませんが。
受験が終わったら税理士としての勉強法はどうすべきか?
試験に合格して税理士になった後では、受験時代に身につけた知識のうち自分の担当業務やお客様に関連するものは当然使うわけですが、受験生時代には何度も解いた問題であっても、普段の実務ではほとんど使わない知識もあるわけです。
人間の記憶力にはやはり限界がありますので、使わない知識はどうしても記憶から薄れていってしまいます。
こうした点を考慮した上で、税理士という税の専門家としての品質保証のため、さらにはお客様への価値あるサービスの提供のために勉強法をどのようにすべきか?
自らの商売やお客様への価値提供という側面を考えれば、強みを作るための専門特化型の勉強が不可欠といえます。
ここだけは他に負けませんという部分がないとそもそもお客様から選んでいただけません。
しかしながらその一方で、税理士としての最低限の品質保証という面を考えれば、最新の税制へのキャッチアップや普段使わない知識も広く浅く理解しておく必要があります。
例えば、法人が自己株式を取得した場合の処理ですが、受験対策としてはこれでもかというほどやらされます。
規模が大きな事務所で働く方は実務でも接する機会が多いと思いますが、小規模な企業を主な顧客とされる事務所では普段はお目にかかることがほとんどないと思います。
しかしながら、オーナー企業で相続が発生すれば相続人からの買取請求といった形で処理が必要となる可能性は十分にありますから、いざというときに対応できるよう必要最低限の内容は理解して知識を保持しておく必要があります。
広く浅く勉強するための手段は?勉強時間をいかに確保するか?
結論からいえば、専門特化型の勉強も必要だし広く浅く税務関連の知識をアップデートしておく必要もある、ということになってしまうのですが、働きながらそれだけの勉強時間を確保することは難しいという方がほとんどだと思います。
そこでまずは税理士の品質保証としての広く浅い知識を習得するための勉強法についてまとめておきたいと思います。
1 税理士向け研修
税理士登録をされている方は現在36時間の研修受講が義務づけられていますが、これも研修内容は自分で選択できるため自分の興味がある内容(=実務でよく取扱う項目)に偏るリスクがあります。
もちろんこうした研修を受講すると「目から鱗が落ちる!」という類いの話を聞けることもありますが、広い分野をカバーするには不向きです。
2 書籍
これも研修受講と同じでどうしても自分の興味のある本を買ってしまいますし、興味の無い分野の本は読んでいても睡眠導入剤にしかなりません・・・
3 税理士向け雑誌
個人的には、今回の目的にはこれがベストだと考えています。
税務に関する最新情報の他に普段実務で取扱うことのない(または少ない)分野についても記事が載っています。
雑誌であれば一つの記事は数ページですから、興味が薄い分野でも軽く目を通すことは可能でしょう。
意識してそうした分野にも目を通しておけば何らかの知識は頭の中に残るはずです。
4 勉強時間をいかにして確保するか?
とはいえ「雑誌を読む時間もなかなか確保できない!」というケースもあると思います。
私はそうした時間の確保のために、雑誌を読む時間を固定することにしています。
具体的には、毎日仕事を始める前に15~20分程度の時間を確保してそこで読むという風に決めています。
(朝時間が取れなくて昼休みに読むという日も無いわけでは無いですが・・・)
これは別に朝で無いといけないわけでは無く、昼休みでも通勤時間でも自分の都合に合わせて決めれば良いのです。
時間を決めれば習慣化されて、習慣化できれば続けることができます。
税務に関する知識は範囲が広くてかつ変更が多いため追いかけるのが大変ですが、やはり続けることが大事です。
「継続は力なり」というよりも「継続こそが力なり」と考えて進めていけば、その積み重ねは大きな力になると思います。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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