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クラウド会計ソフトの導入検討を進めてきましたので、現時点での機能の違い等をまとめてみたいと思います。

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1.検討対象とするソフト

まず比較するソフトですが、今回はMFクラウド会計とfreeeの2つに絞ります。
弥生会計クラウドも検討していたのですが、固定資産を1件別に入力しないと固定資産の残高を設定できないため、一旦検討対象から外しています。

当事務所としての使い方としては、固定資産や減価償却費の管理はJDLのソフトで行っているため、他のソフトへの二重入力や二重管理はしたくないためです。

従いまして、弥生会計クラウドで固定資産の1件別管理まで行う方については、検討の余地はあると思います。

※クラウド会計ソフトはインストール型ではなくWEB上で提供される機能であるため、厳密には「ソフト」というよりも「サービス」というべきかもしれませんが、「クラウド会計ソフト」という呼び名が一般的に通用しているためこの呼び方をすることにします。

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2.freeeとMFクラウドの主な相違点

銀行やクレジットカードなどの明細を自動で取得できて、使えば使うほど仕訳入力の手間が減るといった基本的な共通点については今回は割愛させていいただき、導入検討する中で見えてきた相違点に今回は焦点を当てたいと思います。

(1)仕訳承認機能(freee:機能あり MFクラウド:機能なし)

ある程度の規模の会社になってくれば、経理担当者が仕訳を作成して上司が仕訳を承認するといったフローになっていると思います。

こうしたワークフローの機能についてはfreeeには実装されていますが、MFクラウド会計には未実装となっています。

(2)補助科目(freee:なし MFクラウド:あり)

freeeの特長としてよく取り上げられる所ですが、freeeには補助科目という考え方がなくすべてタグで管理することになります。

MFクラウドはタグ管理が可能であると同時に、補助科目の設定も可能となっています。

補助科目を捨ててしまうというfreeeの考え方は斬新で興味深いのですが、この点が後で述べる総勘定元帳・仕訳帳の見栄えや弥生会計とのデータのやりとりに影響を与えています。

(3)総勘定元帳・仕訳帳

これは個人の好みの問題もあるかもしれませんが、弥生会計の総勘定元帳や仕訳日記帳を見慣れた人がfreeeの総勘定元帳や仕訳帳を見ると「見づらい」と感じるかもしれません。

その理由は、補助科目の代わりとなるタグや仕訳番号、消費税区分といった情報が全て摘要欄に表示されるため、摘要欄が雑然とした印象を受けるためです。
せめて仕訳番号と消費税区分を別欄に外出ししてもらえるともっと見やすくなると思うのですが・・・。

(4)税理士の登録方法

MFクラウドではお客様にアカウントを作成してもらってから税理士を招待してもらう形になります。

一方freeeではMFクラウドと同様の方法もありますが、アドバイザーとして登録された税理士から招待する形で設定をすることも可能です。

ITに強いお客様であれば良いのですが、苦手な方に「まずアカウント作って下さい」とは言いづらいものがありますので、税理士の立場としては招待する形での設定の方が好ましいです。

(5)弥生会計からのインポート

弥生会計で「複合」勘定を使用せずに複合仕訳を入力していた場合、freeeにそのままインポートすると空白行を詰める仕様となっています。
仮に同一仕訳番号で2種類の複合仕訳が登録されていた場合、空白行が詰められてしまうために仕訳が崩れて、そのために摘要欄の割り付けされる行がおかしくなるという問題があります。

MFクラウドではこの空白部分をそのまま空白として取込んでくれるため、この問題は生じません。

ただし、freeeでも取込前に取込データの空白行に「複合」勘定を埋め込むことによりこの問題は回避することが可能です。

(6)弥生会計へのエクスポート

クラウド会計ソフトを使い始めればあまり弥生会計に戻ることは無いと思いますが、総勘定元帳などの資料だけは弥生で出力したいとなる可能性はありますのでやはりエクスポート機能も必要です。

この点についてfreeeでの問題点は、「自動で経理」で設定した「品目タグ」が弥生インポート形式で出力した際に「補助科目」の欄に埋め込まれてしまうことです。

弥生会計から移行した後に弥生会計に再度データを戻そうとした場合、このような補助科目は設定されていませんので弥生会計での引込の際に、科目マッチング不一致となり引込時に調整がかなり必要となります。

MFクラウドでは、金融機関とのの自動連携を設定した場合、補助科目名が「銀行名+普通or当座+口座番号」となるため弥生での引込時に補助科目がマッチングしないことになるのですが、元々別の名称で弥生会計に補助科目が登録されているはずですから、大きな問題にはなりません。

(7)Amazon・楽天の出品者への対応

最近はお客様の中にもAmazonや楽天に出品される方がいらっしゃいますが、売上データ等の取込についての対応状況は次の通りです。

freee: Amazon-対応済み 楽天-未対応
MFクラウド: Amazon・楽天-対応済み(但し楽天はRMS WEB SERVICEへの加入が必要)

(8)帳簿のPDF出力

細かい話ですが、総勘定元帳などのPDF出力を行った場合、freeeは作成完了したらメールで連絡が来て、MFクラウドは画面上で完了したことを知らせてくれます。

クラウド会計についてよく言われる反応の遅さという点については、入力時にはあまり感じないのですが、こうした帳票作成時に「待たされる」という印象があります。

待たされることを前提にするのであれば、freeeのようにメールが届くのを待ってその間別の作業をしていれば良いのかもしれませんが、この点については作成速度の改善をお願いしたいところです。

(9)請求書作成機能

freeeは請求書発行機能を実装していますが、MFクラウドは別サービスとして提供しています。

MFクラウドでも連携はそれほど悪くないのですが、会計と請求書機能を同時に使用する場合にはブラウザーのタブを切り替えて操作しないといけませんので、機能として一体化しているfreeeの方が使いやすいと感じます。

(10)スキャナーによる領収書等の読込

税理士の仕事としてはお客様から領収書等を預ってまとめて処理するようなケースも未だにあります。

こうしたケースでは、スキャナーでまとめて読み込んでOCR処理できると助かります。

freeeはこの点スキャナーで読取ったファイルをファイルボックスに登録すればOCR処理をしてくれます。
もしくはスマホのfreeeアプリで写真を撮ってファイルボックスにアップロードすれば同じ事が可能です。

MFクラウドもスキャナーで領収書を読取ってアップロードできるのですが、この場合にはOCR機能はありません。
別サービスとして提供しているMFクラウド経費にはOCR機能があるのですが、上記のような税理士側での使い方には向いていません。
(ScansnapCloudとの連携もあるのですがOCR機能が無く、MFクラウド経費に力点を置いているためこの機能が放置されている印象を受けます。)

(11)番外編:ファームバンキングへの対応

これは相違点ではないのですが、検証していて意外だったのがファームバンキングへの対応でした。

電子証明書方式のファームバンキングの場合、入出金明細の自動取得にはどちらも対応できていません。

明細を取得するためには、専用ソフトを立ち上げて操作する必要があります。

セキュリティの関係で対応は難しいのかもしれませんが、明細の自動取得はクラウド会計ソフトの目玉の一つですから今後の改善を期待したいです。

3.ケース別おすすめソフト

上記の比較を踏まえての現時点での結論は次の通りです。

・弥生会計からの移行(特に期中での移行)を検討している場合 →MFクラウド

・弥生会計と帳票含めた操作性を大きく変更したくない場合 →MFクラウド

・上司による仕訳の承認が必須の場合 →freee
※MFクラウドで仕訳帳を印刷して、そこに上司の印鑑をもらうという荒技もあるにはありますが、アナログすぎてクラウド会計とは合わない気が・・・

・お客様から領収書を預ってまとめて処理する必要がある場合 →freee

・請求書発行と会計処理をシームレスにつなげたい場合 →freee

弥生会計からのスムーズな移行を重視するのであればMFクラウド、会計処理だけではなくワークフローの機能を重視するのであればfreeeといったところでしょうか。

同じように括られる「クラウド会計ソフト」ですが、結構違いがありますのでそれぞれの特長に応じた使い分けができるように引き続き検討していきたいと思います。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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