今回は業務上のコミュニケーションのうち、特に仕事内容を説明する際の方法について考えてみたいと思います。

1.イギリス人から仕事の説明を受けると・・・

30才過ぎた頃から2年間イギリスの製造子会社に出向していたのですが、イギリスのローカルスタッフとのコミュニケーションには非常に苦労しました。

もちろん私の語学力が足りなかったことが大きな理由ですが、業務内容や取引の処理の仕方について説明を求めてもとにかく何が言いたいのかよくわからないという状態が続きました。

いろいろと質問をしてもこちらの聞きたい内容に対する答えがストレートに返ってこずに内容がうやむやなまま話が終わってしまう、という感じでした。

そうした悩みを当時一緒に出向していた日本人上司に相談したところ「経理の仕事なんだから、わからなかったら仕訳を書かせたらいいんだ」との一言。

この言葉を聞いてからかなりコミュニケーションが改善した覚えがあります。

話がわからなくなったり逸れそうなときは、「結論として、この取引はどう仕訳を切るの?」という一言で大体は話を求める方向へと持って行くことができました。
(ただし、「仕訳」を英語でどう言えば良いかわからず、最初は辞書をみて「Journal」という単語を使っていたのですが毎回首をひねられる始末。最終的には「How to book?」(どのように記帳するの?)と聞くようにしてからちゃんと伝わるようになりました)

2.仕事の話をする上で大切なのは共通言語を使うこと

上記の話は経理という仕事における事例ですが、ポイントは「会計」という「共通言語」を使ってコミュニケーションを取ることです。

「会計」の中でも「仕訳」は基礎中の基礎となりますが、経理をやっていれば誰もが理解できる基礎的な知識だからこそバックグラウンドや考え方が異なる海外のメンバーと仕事の話をする上で非常に強力なツールとなります。
(仕訳で考えるという方法はコミュニケーションの場面だけではなく、処理方法について悩んだ時などに自分の頭を整理するためにも使えます。)

このことは経理に限った話ではなく、どんな仕事においても共通の知識・バックグラウンドがあるメンバーと話をする際には「共通言語」を使って話をすることが大事ということになります。

上記のイギリスでの事例では、「イギリスの会計基準は日本の考え方と違うはずだから簡単にはわかり合えないんだろう」と私が勝手に思い込んでしまったことが失敗の原因です。
「共通言語」である「仕訳」というツールを使うことによりたとえ会計基準の考え方の違いがあったとしても、まず取引をどのように理解するかという同じスタートラインに立つことが可能となります。

3.一方で税理士とお客様の関係は?

業務上のコミュニケーションで言えば当然税理士であっても違いは無く、税理士同士や税務署の方と話をするのであれば「会計」や「税法」という「共通言語」を元にして話をすることになります。

ところが、これがお客様に対してということになるとなかなかこのようにはいきません。

お客様の中には経理の知識が豊富な方もいらっしゃれば、全くそうした知識をお持ちでない方もいらっしゃいます。
税法に至っては、知識をお持ちでない方が多いからこそ税理士が仕事をいただけるわけです。

そうなりますとこうしたケースではコミュニケーションをする上での「共通言語」が無い状態で、いかに「会計」や「税法」といった内容を簡潔にわかりやすくお伝えできるかということが重要になります。

そのためには別の「共通言語」を見つけることが大切ではないかと考えています。それは単なる「共通の話題」ということになるかもしれませんが、そうした話題に絡ませて説明することができればお客様の「会計」や「税法」に対するアレルギーを少しでも減らすことができると思います。
(そうはいっても例えばゴルフ好きのお客様にどんな例えで税金の説明をするんだ、と言われてしまいそうですが・・・)

自分自身が普段からいろんなことに興味を持ってさまざまな知識やツールを数多く持っておくことができれば、お客様への説明という税理士にとって重要なコミュニケーション能力を向上させられる可能性が高まります。

日々さまざまな雑事に追われがちですが、仕事上のコミュニケーション能力を磨くためにも知識の幅を広げておく必要がありそうです。