広告

記帳作業が終わったあと、利益の数字を見て「終わったー!」と思っていませんでしょうか?意外と大事なB/Sのチェックについてのお話です。

P/Lはリセットされるが、B/Sは繰り越される

昔話になりますが、会社勤めで経理の仕事をしていた頃、月次決算や期末決算の度に、T/B照合という作業をしていました。1枚の紙に補助簿などの基礎資料の残高と試算表の残高を転記して、数字に間違いがないか確認したらハンコを押してチェック完了。

最初の頃、「こんなもの金額合って当然だろう」と思っていたのですが、伝票の作成ミスや入力ミスなど理由は様々ですが、これが意外に合いません。

このときの経験から、記帳は入力して終わりではなく、数字を基礎資料と合わせて初めて完了するということを学びました。

そして、その頃教えられたもう一つのことは、

「P/L(損益計算書)は次の年になればリセットされるが、B/S(貸借対照表)は残高が繰り越されるから、B/Sのチェックは大事」

ということでした。

これは別にP/Lについては期ずれしたり、間違ってもいいというわけではなく、ついついP/Lにばかり目が行きがちなことに対して、B/Sはミスが累積していくため、P/L以上にきちんとチェックすべき、ということだと理解しています。

このように教えられていましたので、海外会社に出向したときも、最初にやる仕事はB/Sのチェックでした。管理がきちんとできていないと、B/Sには本当に「ゴミ」が貯まります。

現物は廃棄済みなのに帳簿に残っている固定資産や、長期間回収できていない売掛金。ひどいときには長期間支払ってない買掛金など。

B/Sは意識して定期的にチェックしていないと、資産の部がゴミ溜のようになってしまいかねません。こうした経験もあり、B/Sは大事だと思い知らされました。

B/Sを確定させないと、利益は確定しない

少し極端な話をしましたが、記帳が終わったときに、その利益が間違っていないか確認するためには、B/Sのチェックは欠かせません。

P/Lは計算がわかりやすいので、数字が出たら「終わった!」という気分になりやすいのですが、そのあとB/Sをチェックしたら、処理モレに気づいてまたやり直しなんてことになりかねません。

例えばこんなミスが考えられます。

  • 仮払金:精算モレ(営業の方への精算の督促を忘れていたなど)
  • 前払費用:今期分の経費への振替が漏れていた
  • 固定資産:残高が固定資産台帳と合っていない(除却モテ、または減価償却費の計上誤りなど)

また、当期利益には影響しないケースもありますが、B/Sをチェックする上では次のような点も確認が必要です。

  • 売掛金:回収遅れ(貸倒引当金が必要になるかもしれません)
  • 棚卸資産:長期間の滞留(値下げして処分したり、廃棄の検討が必要では?)
  • 買掛金:支払い遅れ(利益には影響ありませんが、資金繰りに反映していないと、予期せぬ資金ショートのリスクがあります)

他にもいろいろありますが、B/Sの中身がきっちりしていないと、その修正で利益が変わるということはよくあります。

利益を正しく確定させるためにも、補助簿などの基礎資料との照合とともに、その中身のチェックが大切です。

広告

ミスを減らすには複数の視点からのチェックが大切

利益を確定させるためにも、B/Sのチェックが必要という話をしましたが、要するに正しい決算書を作るためには、P/LとB/Sの両面からのチェックが必要ということになります。

以前勤めていた会社では、B/Sについては補助簿などの基礎資料とチェックし、売上・利益については事前に作成した収支見通しと大きく変わっていないか、また変わっていれば、原因は何か確認することにより、P/L・B/S両面からのチェックを行っていました。

中小企業の場合、収支見通しまで作るのは難しいと思いますが、それでも決算書の正確性を向上させるためにできることはあります。

ポイントは「複数の視点からチェックする」ということ。

例えば、

  • 作成者以外の人がチェックすることでダブルチェックを行う
  • チェックリストを準備して、毎回チェックすべき項目を明確にしておく
  • ミスが起きたら、チェックリストに追加して再発防止を図る

といったことが考えられます。

帳簿を作成した人以外の目でチェックするのが一番効果的ですが、そうした人も割り当てられないケースもあるでしょう。

そんなときは、「時間をずらす」ということを意識してみてください。自分が作った資料でできた直後は完璧だと思っていても、別の日に見るとミスが簡単に見つかるという経験はありませんか?

不思議なもので、同じ自分であっても、日が変わると視点が変わります。そのため、帳簿を作成してすぐにチェックして終わりではなく、別の日にもう一度チェックすれば、複数の目でチェックするのと同様の効果が期待できます。

こうしたケースであれば、チェックリストにチェック欄を2つ作っておくとか、それぞれの日でチェックするポイントを変えるというやり方もあるでしょう。

人がいないからチェックできないではなく、精度を上げるために何ができるか是非工夫してみてください。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
広告