経営管理資料の数字はなぜ大きな単位で丸めるのか?基本的な内容ですがその意味とそれにまつわるスキルアップについて考えてみたいと思います。
1.新入社員の頃は・・・
会社に入って経理という仕事をしていますと当然上司から経営管理のための資料のまとめを指示されます。
そうした際に、前任者が作成した資料を基に作ったりするわけですが、最初の頃はなぜ試算表などに記載されている円単位の数字を千円単位や百万円単位に変更しなければならないのか疑問でなりませんでした。
といいますのも、円単位の資料を千円単位や百万円単位にすると行や列ごとの合計が1(千円もしくは百万円など)合わなくなってしまうんですね。
若かりし頃は「基礎資料の円単位の方が正しい数字だし、なんでわざわざ縦横の合計を合うように調整する必要のある資料を作らないといけないんだ?」なんて思っていた時期がありました。
2.そもそもその資料の目的は何か?
今思えば「若かったな、未熟だったな」で終わるんですが、やはり大切なのは当たり前ですが「その資料の目的は何か?」ということです。
経営管理に使用する資料は経営者が使う資料ですから、経営状況の大枠・方向性を把握することが最も大切であり、縦横の数字が1合わないとしてもそれは経営に影響を与えるような内容では無いわけです。
それでは、経営管理のための資料は千円単位がいいのか百万円単位がいいのか、それとも億円単位がいいのかということですが、これもやはりその資料の目的による、という結論になります。
一つの目安としては企業規模に応じて使いやすい単位というのは決まってくると思いますが、私の感覚でいえば通常は3~4桁の数字が主となるように資料を作成します。
どんなに多くても5~6桁の数字までで抑えるように資料を作らないとその資料は見にくい(頭に入りづらい)ものになってしまいます。
例えば、10億円台の数字が多用されるような資料であれば基本的には百万円単位で資料を作成するようにしています。
このケースで単位を千円としてしまうと7桁の数字が大量に並ぶことになってしまい、「一体この金額はいくらなんだ?」と資料を読み込むことに時間を使ってしまい、資料を使って経営判断するという本来の目的に時間を掛けられないことになってしまいます。
(ざっくり言えば、一つの数字にコンマが2つ付くと数字が読みづらくなるというイメージです。)
もちろん決算書そのものといった経営管理資料については細かい数字を把握することが必要なケースもありますから、上記の内容がすべてというわけではありませんが私個人は見やすい資料を作る際の基準として意識しています。
3.立場が変わらないとなかなか理解できないものだけど・・・
最初に新入社員の頃の話を書きましたが、資料が使いやすいかどうかといったことは資料を使う側に回らないとなかなか理解できない部分もあります。
資料を作る側は作る側の論理でついつい考えてしまいますので、そうした思考は立場が変わらないと変えられないという面があるのも事実です。
とはいえ、特に大きな企業で働いていますと資料を作る側から使う側になるにはどれだけ時間がかかるかわかりませんから、そんな悠長なことをいっていてはいつまで経っても指示された資料を作るだけになってしまいます。
理想をいえば、こうした資料を作りながらその数字を眺めて、自分ならこの数字を見てどのように状況判断し、どのような対策・アクションをとるのか?といったことを考えていけば経営に対する視点を少しずつ養うことができますし、自分がいざ(転職等も含めて)使う側に回ったときに落ち着いて対処するための予行演習にもなります。
実際には、こうした資料を作るときというのは締切りが迫っていて資料を間に合わせるのに精一杯となり数字を眺めている余裕なんて無いのが普通なんですが・・・
仮にそうだとしても、資料作成が終わった段階でその資料や数字が語りかけるものを読取ろうとする時間を少し取るだけでもその後の自分の成長に大きな効果がありますので、資料作成に追われている方は少し立ち止まって自分のスキルアップにどう役立てるか考えてみてはいかがでしょうか?
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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