もらうとうれしい株主優待券ですが、会社として受け取った場合にどのような税金が生じるのか、売却するケースについて考えてみたいと思います。

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1.「株主優待券」は会社で受け取ると悩ましい?

個人で株式等を所有されている方もいらっしゃると思いますが、会社においても余資運用等の理由で株式を所有するケースはあると思います。

そうした場合に株式によっては「株主優待券」が交付される場合があります。

個人として受け取る株主優待券であれば生活の足しとして自由に使えば良いのですが、会社として受け取った場合には少し悩ましい問題が生じます。

【2017/5/24追記】
上記段落において「個人として受け取る株主優待券であれば生活の足しとして自由に使えば良い」と書きましたが、個人が受け取る株主優待券は本来は雑所得となり所得税の対象となります(配当する法人側の処理方法によっては、配当所得となるケースもあります)。
個人が趣味として行う投資により受け取る優待券の金額は少額であると想定し、税務署もそこまで細かく追求しないであろうということで上記のような書き方をしています。
個人が換金性の高いものなどを株主優待券として大量に受け取る場合には、雑所得として申告が必要となるケースもありますのでご注意ください。

福利厚生の一環として従業員に渡すとしても全員に行き渡らなければ社員の間で不公・不満が生じますし、渡したら渡したで経済的利益として給与課税となって源泉徴収しなければいけない?などと悩むことになります。

そのため会社で受け取った株主優待券については、金券ショップ等で売却して現金化しているケースが多いのではないかと思います。

2.株主優待券を売却したら消費税がかかる?

「物品切手等」とは何か?

実際に株主優待券を売却した場合ですが、法人税法上は時価で売却すれば雑収入等の科目で処理した上で益金に算入することになりますので特に悩むことはありません(利害関係者に低額で譲渡するといったケースは一旦無視します)。

一方で、少し悩ましいのが消費税の取扱いです。
これは株主優待券が「物品切手等」に該当するかどうかで変わってきます。

「物品切手等」というのは商品券、ギフト券、旅行券やプリペイドカードのことをいいますが、売却した場合には消費税は非課税となります。

これはこうしておかないと商品やサービスの消費に課税すべき消費税が、一つの商品について商品券などを買ったときとその商品券で商品を買ったときと二回課税されてしまうためです。

「物品切手等」に該当する場合

では株主優待券が「物品切手等」に該当するかどうかですが、これは株主優待券の内容により変わってきます。

国税庁の通達(消費税法基本通達6-4-4)では「物品切手等」に該当するかどうかの判定は次の2つの条件を満たすかどうかにより行います。

1.その優待券等と引換えに商品やサービスの提供を約束するものであること

2.優待券等との引換えにより商品やサービスの提供を受けようとする人が、その優待券等によりその対価の全部又は一部を支払わなくてよいこと

株主優待について雑誌などで特集が組まれると必ずといっていいほど取り上げられる会社として航空会社があります。

この航空会社の株主優待券ですが、割引価格で航空券の購入ができるというケースが多いと思います。

こうした割引価格で商品やサービスの提供を受けることができるものについては、上記条件の2は満たすのですが、割引券そのもので航空券を購入できるわけではありませんので1には該当しません。

従って、この株主優待券は「物品切手等」には該当しないことになり、売却した場合には消費税の課税対象となります。

「物品切手等」に該当しない場合

株主優待特集などで航空会社以外に人気の高いものとしては「QUOカード」が挙げられます。

特定の会社というわけではありませんが、個人株主を増やそうとしてQUOカードを株主優待としている場合がよくあります。

このQUOカードですが、これは先ほどの1と2の両方を満たすため「物品切手等」に該当しますので、売却した場合には非課税となるため消費税はかかりません。

余談ですが、国税庁のサイトではプリペイドカードの例示としてテレホンカードが挙げられているのですが、公衆電話自体をあまり見かけなくなった現在、例示として適切なんでしょうか?

そもそも若い方は実物を見たことすらないのでは、という気もしますが。
(ちなみにこの記事の冒頭の写真がテレホンカードです。たまたま手元に残ってました。)

3.同じ「税金」でも考え方は違う

今回は株主優待券を売却した際の税金について書きましたが、同じ税金といっても法人税では全て税金計算の対象となる一方で、消費税では課税されたり課税されなかったりということになります。

これは株主優待券に限った話ではなく、同じ税金といっても税金をかける対象が異なるため(法人税は利益に課税、消費税は消費に課税)、同じ取引についてその取扱が異なってくるわけです。

「これだから税金はムズカシイ」という考え方には全く同感ですが、一つの税目で必要な税金を全て集めようとすると公平性が保てなくなるため、税目を分散させるのはやむを得ないというのも正直な感想です。

税理士としては、ムズカシイ税金を少しでもわかりやすくお客様に説明できるよう日々研鑽を積まなければなりませんね。

なお、この文章は説明をわかりやすくするため、簡略化若しくは省略して記載している部分がありかつ筆者の私見も含まれておりますので、実際の法律の適用にあたっては専門家にご相談・ご確認されますようお願いいたします。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。