40代という年代は働き盛りである一方、心身の衰えも感じ始める年代です。
そうした年代においていかに学んでいくかについて、税理士試験の経験も踏まえて考えてみたいと思います。
1.40歳で会社を辞めて税理士を目指す
実家を継ぐために税理士になろうと決めて、当時勤めていた会社を辞めたのは私がちょうど40歳の時でした。
その時点では、税理士試験を一度も受験したことなく、試験がどの程度大変なのかあまりよくわかっていませんでした。
5科目合格するまで何年かかるかわからない状態で会社を辞めたわけですから、家業を継ぐとはいえ結構無謀なことをしたものだと今さらながら思います。
辞める際には会社の同僚から「その歳で勉強するの?大変じゃないの?大丈夫?」といったようなことを言われたりもしましたが、「40歳になってから難しい資格試験に挑むなんて・・・」というのが世間一般の感覚なのでしょう。
2.失われていくのは「記憶力」ではなく「気力」
40代での資格取得は無謀?
では、40歳を過ぎてから資格取得を目指すというのは本当に無謀なことなのでしょうか?
学術的な研究ではどうなのかは知りませんが、私見としては40歳を過ぎて無くなっていくのは「記憶力」ではなく「気力」の方だと思います。
仮に今40歳の方が「明日から仕事は一切しなくていいから、○○の資格を取得してください」といわれたとします。
このとき一番の問題は、同じ内容を繰り返し勉強するという行為に耐えうる「気力」を維持できるかどうかでしょう(「気力」がないと集中力も続きませんので、同じ内容を繰り返しているとどうしてもいやになってきます)。
暗記や記憶自体は反復練習を繰り返せばできますので、「気力」をいかに高めて維持するかがポイントになります。
「気力」を維持するために大切なこと
40代において「気力」を維持するためには、次の2点が重要です。
(1)勉強の「目的」を明確にすること(給料を増やすため、転職するため など)
(2)「期限」を明確にすること(資格取得であればいつまでに合格するか決める)
学生の頃の受験であっても「この大学に合格する!」などの明確な目標がなければ受験勉強は乗り切れなかったはずです。
その頃よりも「気力」が衰えてくる40代では、若い頃以上に「目的」と「期限」を明確にして自分を追い込まなければ資格取得は厳しいと考えます。
そういう意味では、私の場合は
・実家を継ぐ、しかも会社は辞めた→税理士の資格とらないと生活できなくなる!(目的)
・税理士試験よくわかってないけど何とか3年で合格したい(期限)
と自分の心の中では考えていました。
「気力」があれば「記憶力」はついてくる
私の経験では「気力」さえ維持できれば記憶力は何とかついてくるものです。
税法の勉強を始めた頃、理論の授業が終わったら「次回までに暗記してきてください」といわれて「こんなの一字一句全部覚えないといけないの?しかもテキスト全部?できるわけない!」と思った記憶があります。
最初の頃は内容さえ理解すれば暗記は不要と思っていましたが、2時間という限られた試験時間の中で答案を完成させるためには、暗記した方が確実で早いという結論に至りました。
暗記することの必要性(目的)を理解した上で、試験日(期限)まできちんと時間をかけてやればそれなりに暗記することはできましたので、記憶力自体が若い頃と比べて大きく衰えるとは思いません。
3.何を学ぶかを考えることは自分を知ること
40代では「何を」学ぶかも大事
勉強を続けるためには「目的」と「期限」が重要と書きましたが、これとは別に「何を」勉強するかということも、40代では重要になってきます。
40代は人生の折り返し地点かすでにそれを過ぎた世代になります。
そうなると残された時間が徐々に限られてくるわけですから、闇雲にいろいろなことに手を出すわけにはいきません。
自分を知って強みを伸ばす
「何を」勉強するかを決めるためには、まず自己分析を行い自分の強み・弱みを明確にする必要があります。
方向性としては、弱点を補う方向に進んでいくのか、それとも強みを伸ばす方向に進んでいくかの二通りあります。
残り時間が限られてくるという状況を考えれば、今から弱点を補強しても他の人には勝てませんから、やはり強みを伸ばす方向で考えるべきでしょう。
とはいえ、自分の強み・弱みを明確にするというのは口で言うのは簡単ですが、いざ実行するとなるとかなり難しい作業です。
こうしたところで若い人にはない経験を活かして、バシッと自己分析をして進めていきたいものですが、実際はこの歳になっても試行錯誤を繰り返すことになります。
学ぶことを一旦決めたら迷わず突き進む、でもしばらくやってみてダメだと判断したら潔く撤退する、そんな知恵もこの年代では必要なのかもしれません。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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