月次決算をしている会社・していない会社それぞれあると思いますが、月次決算をした方がいい理由と本当に使える資料になっているかという点について考えみたいと思います。
お客さまに月次決算資料が喜ばれた話
先日お客さまと話をしている中で、
「月次決算をして、毎月資料をもらっているので助かった」
とのお言葉をいただきました。
その会社はコロナ禍の影響をすぐには受けなかったため、新型コロナウイルス感染症特別貸付といった政府が提供する制度を利用することができませんでした。
そうはいっても、新型コロナウイルス感染症の影響で、いつ不測の事態が起きるかわからない状況でしたので、金融機関のプロパー融資を利用して手元資金を厚くしておくことを決断されました。
借入があれば、金融機関からのチェックは当然ありますが・・・
新型コロナウイルスに関連した政府の制度による融資と異なり、プロパー融資を受けている会社については、金融機関側が貸付先の財務状況が急変しないか、かなり心配されているようで、最近は毎月のように状況を聞かれる、とのことです。
今のところ重点的にヒアリングを受けるのが「売上の状況に大きな変化がないか?」という点のため、月次決算の資料として毎月お渡ししている3期比較の月別売上表を見せることで、金融機関の担当者に説明がしやすくて助かる、というお話でした。
月次決算の目的のひとつは、会社の状況を適切に他者に伝えること
規模の大きい会社であれば、月次決算を行っているところがほとんどだと思いますが、小規模零細事業者になってくると、
「そこまで手間暇かけられない」
「そんなリソースがない」
「税理士報酬が上がる・・・」
などなど様々な理由で、できていないという会社も多いかもしれません。
そうした方に、「月次決算やった方がいいですよ」とオススメする際のメリットとして、
「経営数字を早期に把握することで課題が見つかり、改善に向けたアクションを起こすことで経営が良くなる」
といった感じの堅苦しい説明をしてしまうことが(私は)あります。
こんな感じで正論めいた堅い話をしても、なかなか伝わりにくいかなと感じていましたが、融資を受けている会社であれば、今回のケースのように、
「金融機関の担当者から会社の直近の状況を聞かれても、すぐ答えることができて、金融機関からの印象が良くなりますよ」
とお伝えした方が、行動しようという気持ちにつながるのでは、と。
もちろん印象が良くなるだけで、突然融資条件が改善することはありませんが、信頼や信用を積み重ねることは、それほど容易なことではありません。
その容易でないことをする手助けになるのであれば、月次決算をきちんとやっておくということに対して意味があると感じてもらえるのではないかと。
「税理士に言われたからやる」だと行動につながりませんが、「会社の状況を適切に伝えることで、最終的に自分のメリットとして返ってくる」と理解できれば、月次決算をやることに前向きになれるのではないでしょうか。
試算表=月次決算 ではありません
実際のところは、「メリットがあるといっても、やはり毎月やるのは大変だ」と思う方も多いかもしれません。
税金の計算に使ったり、金融機関に正式なものとして提出する年次の決算書とは違うので、概算で計算すればいいとはいえ、それなりに手間がかかるのも事実です。
少しでも正確な数字を出そうと凝り出すと、いくらでも時間がかかるものでもあります。
大事なのは、「ザックリと会社の状況を把握することが目的」という点を見失わないこと。
最初は少々精度に目をつぶってでも、形としてまとめることが大切です。
使っていく中で精度に問題があるとわかれば、その点を修正する。
こうしたことを繰り返すことで、「本当に使える」月次決算ができあがっていきます。
とはいえ、月次決算といっても試算表をまとめるだけでは、その数字を見ても何も判断できませんし、金融機関の方にわかりやすい説明をすることはできません。
大事なのは、「変化」を確認できるような資料にすること。
予算との対比、前年との対比、推移の確認などにより、流れが変っていないか確認できるよう工夫することは必要です。
逆に言えば、「毎月試算表をまとめているよ」という会社についても、本当に活用できるものになっているか、見直した方がよいということです。
月次決算をする目的は「経営に活用すること」ですから、試算表をまとめるだけで終わってしまっていては、とてももったいないことになります。
会社経営者の方で、もし「金融機関からヒアリングを受けたときに、うまく答えられない」と感じている方がいらっしゃいましたら、
- 月次決算をしていなければ、まず数字をまとめる方法を検討する
- 毎月の数字があるのであれば、対比・推移がわかる資料をつくってみる
というところから始めてみてはいかがでしょうか。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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