経理業務における現金管理は手間がかかるものですが、これをなくすことにより業務効率化につなげられないでしょうか?
1.現金を管理することはなぜ大変か?
現金は日本において最も確実な決済手段ですが、一方で会社において手元現金を保有していると次のような課題が生じます。
・毎日数えないといけない(出納担当者は現金が合うまで帰れない)
・現金精算の手間が大変(現金を数えて精算のチェックが必要)
・現金管理の担当者が休むと現金処理ができない(代理で担当する方がいれば問題ないですが)
・盗難防止のための金庫が必要(しかも盗難防止のためには大きく重い金庫が必要)
・多額の現金を保有する場合、事故に備えて保険を掛けることの検討も必要
このように会社での手元現金の保有にはさまざまなコストや手間が発生しています。
私が大学卒業後に入社した会社は、当時キャッシュレス化を推進していました。
新入社員で右も左もわからなかった状態でしたので「なぜ現金を無くさないといけないの?そもそも現金無くすってどういうこと?」と頭の中はクエスチョンマークだらけでした。
当時は「手間がかかる」ということそのものがコストだという認識はありませんでしたので、中々キャッシュレス化のメリットが理解できませんでした。
現金をなくすということはこうした「手間」をなくすことであり、それこそがキャッシュレス化のメリットとなります。
2.手元現金をなくすにはどうすればよいか?
手元現金をなくすための方法ですが、これは各会社の実情によって変わってくると思います。
具体例としては、
・仮払金や旅費精算は現金で渡さず従業員の個人口座への振込に変更
・クレジットカードの法人カードを導入し、従業員の立替負担をなくす
・上記のような取組みを踏まえて手元現金の上限額を設定し、それ以上の現金は手元に置かない
といったものが挙げられます。
一方で、現金精算を銀行振込に変更することによる振込手数料や法人カードの契約による年会費等今まで無かったコストが生じることになりますので、現金を継続して保有する場合と比較してのメリット・デメリットを検討しながら進める必要があります。
急な出費(突然の出張やお客様とのトラブル対応など)の時にどうしても現金が必要というケースも起こりえますので、どのレベルまで手元現金をなくすかということは会社の経営判断として(割り切りも含めて)行っていただく必要があります。
しかしながら、現金が減ることにより「現金管理」という管理に係る手間は確実に減りますので、そこで浮いた工数を収益につながる活動に振り向けることによりメリットを生み出すことができます。
3.キャッシュレス化はクラウド会計との相性抜群
さらにキャッシュレス化は、もう一つ別のメリットを生み出します。
キャッシュレス化の推進に伴い、現金取引は預金取引に置き換わることになりますが、このことは、クラウド会計を導入・運用する上では大きなメリットとなります。
現金取引は、クラウド会計に引込むための元となるデータが無いため、クラウド会計を導入しても入力作業の削減にはあまり貢献しませんが、預金取引であればクラウド会計に自動的に取込むことができるため入力作業の省力化に大きく貢献します。
つまりキャッシュレス化の推進はクラウド会計との相性が抜群に良いということです。
現金を減らすという取組みを起点としてクラウド会計推進による入力作業の削減まで持っていければ、その効果は大きなものになります。
業務を効率化する上での一つの考え方として参考にしていただけたらと思います。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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