今年の税理士試験まで、いよいよ1ヶ月を切りました。当時を思い出しながら、みんな苦手な「理論暗記」にどう向き合うべきか、私なりの考え方を整理してみます。

「理論暗記なんて不要!」と高を括って失敗した1年目

今年の初め頃のことですが、参加したセミナーの懇親会で、税理士受験コースの講師の方と受験生の方と同時にお話しする機会がありました。

予備校カリキュラムの最低限暗記すべきことも覚えずに、「どうすればいいですか?」といった質問をしてくる方が、たまにいるというお話しがありましたが、私の失敗体験も踏まえて「やはり理論は暗記すべき」とそのとき改めて感じました。

私が受験生だったときに最初にぶつかった壁も、この理論の暗記です。

受験1年目は、簿記・財諸・消費税を受けましたが、初めて消費税の授業を受けたときのことは今でも覚えています。

講師から「理論サブノートは基本全部暗記してください」と言われたときは、

「何言ってるのこの人?こんなの全部覚えるなんて頭おかしいんじゃない?」

と冗談抜きで本気で思いました。

結局、そんな考え方で「内容さえ理解していれば、きっと受かるはず」と高を括って臨んだ結果、1年目の消費税は当然のごとく不合格・・・。

そのとき使っていた理論サブノートがトップ写真ですが、今見ても汚れもほとんどなく、本当にきれいなものです。

もし当時の自分と話しができるのであれば、1時間くらい正座させて説教してやりたい気分なのですが、一度痛い目に遭わないと実感として理解できない性格なので、やはりどうあがいてもダメだったんでしょうね。

なぜはっきり「不合格通知書」と書かないのかいまだに不思議です
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理論はやっぱり覚えた方がいいと思う3つの理由

受験が終わってすでに4年ほど立ちますが、改めて思い返してみても、やはり理論は暗記すべきだという考え方は変わりません。

そう考える理由を3つ挙げてみます。

理論問題の解答精度向上・時間短縮につながる

現在の税理士試験は、資料の持ち込みが認められていない以上、暗記していた方が試験中に参照できる情報が多くなります。

そして参照できる情報が多ければ、それだけ多角的に理論問題に解答できることになり、点数アップが期待できます。

また、もし暗記があやふやだと、

「あれ、この理論どんな内容だったっけ?」

思い出すのに時間を使ってしまうことになり、解答時間が限られる試験においては圧倒的に不利となります。

こうしたことから、暗記量が多いということは、既に試験開始の時点で、暗記量の少ない受験生の方よりも、かなり有利な立場で試験を開始することができるわけです。

計算問題にも使える

税法は自然科学ではありません。あくまで人が造ったものですから、最終判断は税法の条文に基づいて判断するしかありません。

例えば、消費税の計算問題では、各取引を課税取引・非課税取引等に分類していくことになりますが、非課税取引かどうか判断するのに時間がかかっている方はいませんでしょうか?

消費税の非課税になるかどうかは、条文において限定的に列挙されていますので、もし悩んだら頭の中にある非課税の理論に照らし合わせて、該当するかどうか判断するだけです。
(実際の試験は、もう少し判断が難しいケースもありますが、原則的なケースについてとご理解ください。)

このときに、非課税の理論を曖昧に暗記していると、こうした判断に理論を活用することもできず、迷って時間を失い、さらに失点する可能性が高くなります。

理論と計算はどちらも同じ税法を元にした試験です。きちんと暗記すれば計算問題で迷ったときの判断にも使えます。

何度も覚えるために繰り返すことで、内容への理解が深まる

昔の言葉で、「読書百遍意自ら通ず」というのがあります。「難しい文章でも繰り返し読めば、意味が自然と分かってくる」という意味ですが、理論の暗記はこれに通じるものがあると思っています。

何も考えずに、単に繰り返し読んでいるだけでは、内容を理解することは期待できませんが、暗記しようとしている方は何度も暗唱などを繰り返し、同時に理論問題も解きながら、暗記している方がほとんどでしょう。

こうして問題を解いて理解を深めながら、何度も暗唱などをすることで、あるとき

「あ、これってこういうことなんだ」

とわかる瞬間があります。

こうした瞬間が訪れるためには、暗記しようとする姿勢が欠かせません。暗記しようとする努力が、理解を深めることにつながります。

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ボリュームに圧倒されないことが大事。暗記は誰でもできます。

小中高と過ごしてきた方であれば、小学校では九九を暗記し、中学校では歴史の年号を暗記し、高校では化学の元素周期表を暗記した経験があると思います。
(かなり昔の話なので、今の学校でどこまで暗記させられるかはよくわかりませんが・・・)

少なくとも、暗記をするという経験はほとんどの方が何度も経験されていることです。

「税理士試験は暗記するボリュームが違いすぎて比較できない」と仰る方もいるかもしれませんが、同じ暗記であることに変わりはありません。ボリュームが違うだけです。

小学生で九九を習ったとき、「81個も覚えられない」と思ったことはありませんでしたか?でもなんとかなりましたよね。

税理士試験の理論については、まずそのボリュームに圧倒されて、

「こんなに覚えられるわけがない」

と思ってしまった時点で負けです。

「絶対に覚えられる、覚えてみせる」と自分に言い聞かせることから始めましょう。気持ちで負けたら絶対に覚えられません。

理論暗記せずに税理士試験に臨むのは、九九を覚えずに算数の問題を解くようなものです。

もちろんボリュームが多いのは事実ですから、重要性の低いものは後回しにするとしても、予備校で指示される重要理論はきちんと覚えましょう。それが合格への近道です。

多くの諸先輩方が、この理論暗記を乗り越えて試験に合格されています。それだけ多くの方が乗り越えられたことを、今受験中の方が乗り越えられない理由はありません

精神論だけで乗り切れるほど甘い試験でないことは、重々承知していますが、理論暗記で苦しんでいる方は、まず気持ちの持ち方を見直しされてみてはいかがでしょうか。

本番までもう1ヶ月もありませんが、受験生のみなさまは、体調に気をつけて、最後まで諦めず、かつ油断せずに頑張ってください。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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