「何ごとも最初が肝心」とはよく言いますが、事業を行う上で経理の仕組みをつくることにも当てはまります。仕組みは最初の段階でしっかりと作っておきましょう。

「やったことないけど自分でやります」

新規開業した方からご相談を受けるケースがあります。

お話を伺う中でこちらから提供できるサービス内容についてご説明しますが、特に記帳については、支出を少しでも抑えたいとの思いから

「自分でやります」

と仰る方も一定数いらっしゃいます。

ところがよくよく話を聞いてみると

「簿記についての知識はまったくない」

「記帳なんて今まで全くやったことがない」

「会計ソフトになんとなく入力すればなんとかなると思っている」

というケースが多いものです。

「自分でやるのでわからないところだけ教えて」というご要望をいただくこともありますが、さすがに簿記の基礎から説明していては料金に見合わないので、こうしたケースでは

「当方では対応できません」

とお断りすることもあります。

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経理をテキトーにやると困ることとは

こうしたご相談、開業当初で余分なコストを掛けていられないという考え方は、何も間違っていません。

稼ぐ前からドンドン外注すればいいというのも、経営の観点からは正しいとは言えません。

「どうせ開業したばかりのところに税務調査なんて来ないんだから、テキトーでいいんだよ」という考え方もあるかもしれません。

ただ、こうしたケースを見てきて感じるのは「最初が肝心」ということです。経理も例外ではありません。

例えば事業を始めて、お店を出店する場合。

どんなコンセプトにして、どんな内装にしてなどいろいろと考えて、できる限りよいものを準備しようとするはず。

売上を上げるための攻めの投資とでもいえばいいでしょうか。こうしたことには借入をしてでもしっかりと投資するはず。

それに対して、日々事業を行った結果として、利益が出ているのかどうか。攻めの投資をした結果を確認するのが経理です。

攻めた投資をしすぎて、実は毎月赤字が続いているのに、そのことに気付いていなかった。その状態に気付かずに放置してしまい、資金がいつ足りなくなるのか気付かずに、あとで大慌てなんて可能性もあるわけです。

さらに確定申告という観点で考えてみても

  • 売上が漏れていないか(入金ベースで処理して最終月の売上計上を漏らすなど)
  • 本来、経費にできるものを処理し忘れていないか
  • 逆に、経費にしてはいけないものを経費として処理していないか

など、テキトーに処理してしまうと、余分な税金を支払ったり、支払う税金が少なくて後で追加で支払う(さらに加算税や延滞税の支払いも)なんてことになりかねません。

他にも保存しておくべき書類を知らずに捨ててしまったなど、最初にきちんとしておかないと後で取り返しがつかなくなることもあります。

「どうせすぐには税務調査なんて来ないよ」という考え方で、経理をおそろかにしていたとして、順調に事業が拡大し例えば5年後に調査があったとしても本当に慌てませんか?

こうした状況に陥らないよう、最初に経理の仕組みをきちんと作っておくことが重要です。

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最初にきちんと仕組みを作っておく

正直なところ「仕組みをつくる」という作業は大変です。

そもそも「どうやってやるか」を考える必要がありますし、さらに今まで経験がないことや普段やっていなかったことをしなければなりません。

不慣れな方にとっては大きな負担です。

ただそのような最初の「産みの苦しみ」を越えると、日常業務として回るようになり、負担感は大きく軽減されます(もちろんその後も改善は加えてくことになりますが)。

で、「どうやってやるか」という部分については、経験がそもそもないわけですから、ご自身でやろうとするとどうしても行き詰まってしまうものです。

何か新しいことを習うときに、自己流で勉強するよりも、プロに習った方が上達が通常は早いはず。経理についても同じことです。

当事務所にご相談に来られた方には

「最初に経理の仕組みをきちんと作っておきませんか?」

とお話するようにしているのですが、それはこうした思いからそのようにお伝えしています。

もちろんコストの問題もありますので、全員に当てはまることではありませんが

「最初が肝心、経理も例外ではない」

ということをアタマの片隅に入れておいていただければと思います。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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