国外事業者からダウンロード販売などのサービス提供を受けた場合、インボイスに関連して注意すべき点があります。今回はこの点について確認をしておきましょう。
目次
Amazonで電子書籍を購入すると・・・
10月1日からインボイス制度が始まりましたが、現在Amazonで電子書籍を購入した後に注文履歴から「支払い明細書」を選ぶと、タイトルが「適格請求書」と書かれた書類が表示されます。
登録番号も書かれていることからわかるように、この書類はインボイスに該当します。
ちなみにこの登録番号ですが、Amazonで物品を購入した場合とは異なる番号が表示されます。
同じ個人向けAmazonサイトでの購入ですが、販売元は
- 物品等の販売:アマゾンジャパン合同会社
- 電子書籍:Amazon Services International, LLC.
となっていて別の会社です。
電子書籍を販売しているAmazon Services International, LLC.はアメリカの会社となります。
国外の事業者が消費者向けに提供する電子書籍の販売など(「消費者向け電気通信利用役務の提供」と呼ばれることもあります)については、インボイス制度が始まるまでは税務署に登録した事業者(「登録国外事業者」といいます)から購入した場合のみ仕入税額控除が可能でした。
そのため従来は支払い明細書に「登録国外事業者番号」という記載がありました。
インボイス制度が始まった後は、この制度はインボイス制度に統合されましたので、Amazonで電子書籍を購入するとインボイスが発行されるようになったわけです。
外国企業からの購入で気をつけるべき2つのポイント
登録国外事業者の制度がインボイス制度に統合されたことで制度としてスッキリした部分もありますが、その一方で注意すべき点もあります。
気をつけるべき点として2つ確認しておきましょう。
落とし穴その1:未登録の国外事業者には仕入税額控除の経過措置なし
インボイス制度が始まってから6年間は、インボイスをもらえなくても従来の請求書等があれば部分的に仕入税額控除が可能です。
最初の3年間は消費税相当額の80%、その後の3年間は50%控除することができます。
ところがインボイス制度に登録していない国外事業者からの仕入等については、この経過措置を適用することができません。
多くの事業者では経理処理をする際に「インボイス」か「インボイス以外」かという判断基準で、会計ソフトに入力する際の「税区分」を決めていると思われますが、国外事業者からの電子書籍等のダウンロード購入がある場合は
- インボイス:全額仕入税額控除OK
- インボイス以外(国内事業者):部分的に仕入税額控除OK
- インボイス以外(国外事業者):仕入税額控除不可
という区分で分ける必要がある点に注意が必要です。
この点については、国税庁の質疑応答事例にも追加されていますので、ご興味のある方はご参照ください。
国税庁:いわゆる「消費者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合の仕入税額控除
落とし穴その2:インボイス番号がないのにインボイスになるケース
国外登録事業者からインボイス登録事業者に移行したケースであっても、注意が必要な点があります。
登録国外事業者については、実は次のような扱いが認められています(太字は筆者)。
早急なシステム対応が困難である等の理由により請求書等にインボイス番号を記載できない困難な事情があるときは、令和6年3月31日までは現在付番されている登録番号(00001等の5桁の番号。)を使用することができます。
インボイス制度が既に始まっているものの、システム対応がすぐには難しいなどの理由がある場合には、2024年3月末まではインボイス登録番号の代わりに、従来の登録国外事業者番号を書いておけばよいという内容です。
つまり国外事業者から受け取った請求書等については、インボイス番号が書いてなかったとしても登録国外事業者番号が記載されていないかチェックが必要です。
登録国外事業者に登録している企業は大手が多いため、実際にこのようなケースはあまりないとは思いますが、ただでさえ登録番号の記載チェックという仕事が増えたのに、こうした例外的な措置が本当に必要だったのかとは思います。
対象は電子書籍だけではありません
一般企業などで事業用に電子書籍を購入するケースはあまりないかもしれません。
「ウチは電子書籍なんて買わないから関係ないよ」と思った方もいるかもしれませんが、対象は電子書籍だけではありません。
例えば外国企業からソフトウエアをダウンロード販売で購入するケースはないでしょうか?
他にも外国企業が提供する消費者も利用可能なオンラインストレージの利用はありませんか?
このように
○ インターネット等を通じて行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲームなどの様々なアプリケーションを含みます。)の配信
○ 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
○ 顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
○ インターネット等を通じた広告の配信・掲載
○ インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)
○ インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
○ インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)
○ インターネットを介して行う英会話教室
といったサービスについて事業者以外が利用できるケースも該当しますので、意外と当てはまることがあるかもしれません。
インボイス制度は細かい点について気をつけるべき点が多々あります。
今回の内容についても、上記のような取引を自社において行っていないか一度点検することをオススメします。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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