経理のルールを整えることは、単に事務作業を効率化するだけではなく、組織全体の「数字の共通言語」を作ることでもあります。今回は、なぜ経理以外のメンバーにもルールを知ってもらう必要があるのか、その理由をお話しします。
経理のルールは経理だけが知っていればいい?
みなさん、こんにちは。京都の税理士、加藤博己です。
前回のブログ記事では、「経理をラクにするために、まずはルールを決めましょう」というお話をしました。
領収書の整理の仕方や、経費精算のサイクルなど、仕組みを整えることが効率化の第一歩になります。
自分一人で事業をされている方や、ごく少人数の組織であれば、正直なところ経理のルールは「経理を担当する本人」さえ分かっていれば十分です。自分がルールそのものですから、迷うこともありません。
ところが、組織が少しずつ大きくなってくると、そうも言っていられなくなります。
例えば、前回も取り上げた「経費精算」の話などはその典型です。
「いつまでに提出するのか」「領収書がなければどう処理するのか」「どこまでが経費として認められるのか」。こうしたルールが明確になっていて、かつ組織全体に正しく理解されていないと、現場は混乱します。
経理担当者だけが「こうあるべきだ」と思っていても、現場のスタッフがそれを知らなければ、結局は後から確認作業や修正が発生してしまいます。
これでは、せっかく決めたルールも宝の持ち腐れになりかねません。
売上のタイミング一つとっても「当たり前」ではない
では、経理以外の人は「経費精算のような事務的な内部ルール」さえ知っていればそれで十分でしょうか?
実は、一見すると専門的に思える「会計のルール」についても、ある程度は共有しておいたほうが良い場合があります。
特に組織が大きくなり、毎月の売上や利益の見通し(予実管理)を重視するようになると、その必要性は高まります。
私の会社員時代の経験をお話しします。
あるとき、営業部門の方から相談を受けました。
「懸案だった案件が決まったので、これで今月の売上目標も無事に達成できそうだわ」
それを聞いて私も安心したのですが、その方は最後にこう付け加えたのです。
「あ、ちなみに製品の出荷は来月の1日になるけど、今月の数字に入れておいていいよね?契約はもう終わってるし、問題ないでしょ?」
……さて、経理の実務に携わっている方なら、ここで少しヒヤッとするかもしれません。
売上の計上基準にはいくつか種類がありますが、その会社では「出荷基準(製品を出荷したタイミングで売上を立てる)」を採用していました。
つまり、契約がどれだけ成立していても、出荷が翌月になるのであれば、それは「来月の売上」になるのです。
経理の人間からすれば、売上は「相手との契約成立」ではなく「出荷」や「検収」のタイミングで計上されるというのは、いわば「当たり前」の常識です。
しかし、営業現場の最前線で動いている方にとっては、必ずしもそのルールが当たり前であるとは限りません。
「契約書を交わした瞬間」こそが成果だと感じている人にとって、出荷日は単なる物流のスケジュールの問題に見えてしまうこともあるのです。
こうした認識のズレがあると、
「きちんと案件をまとめたのに、トップから売上未達として怒られた」
といった、営業の方からすれば納得のいかない結果が起こるかもしれません。
だからこそ、売上や利益を月々きちんと管理しようとするならば、こうした「いつ売上が発生するのか」という基本ルールも、現場に知っておいてもらう必要があるのです。
重要なルールは内部で共有しておくべき
もちろん、経理の細かい仕訳のルールや、複雑な税法上の規定まですべてを全員が知っておく必要はありません。そんなことをしていたら、本業に支障が出てしまいます。
ですが、会社の数字に大きな影響を与えるような「基本的なルール」については、組織が大きくなる段階で、やはり内部でしっかりと共有しておくことが大事だと私は考えています。
-
何をもって「売上」が計上されるのか
-
経費として認められるための「条件」は何なのか
-
経理上の「締め日」はいつなのか
こうした点をきちんと共有することで、現場のメンバーも
「こうしたケースでは、こうしなければならない」
と納得感を持って動けるようになります。
ルールを「経理だけのもの」にせず、組織の「共通言語」にすること。 それが、結果として無駄なコミュニケーションコストを減らし、風通しの良い、数字に強い組織を作ることにつながるのではないでしょうか。
もし、「うちの現場と経理の認識がどうも噛み合わないな」と感じることがあれば、一度基本的なルールの共有から始めてみることをおすすめします。
投稿者

- 加藤博己税理士事務所 所長
-
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
最新の投稿
経理2026年2月22日経理のルールは経理だけが知っていればいいわけではない、というお話
経理2026年2月19日経理が苦手な人ほど「ルール」が必要。迷いをゼロにする3つのメリット
税金2026年2月15日お金に「名前」をつけて管理する。納税のストレスを減らすためのシンプルな習慣
弥生会計2026年2月12日摘要を「漢字」に変換したいだけなのに(弥生スマート取引取込の摘要置換の仕様についてのお話)





