経営者の皆さまは、考えるべきことは尽きませんが、ご自身の事業について明確なゴールを意識する時間を確保できていますか?ゴールを意識しているかどうかで、日々の行動や判断が大きく変わってくるものです。今回は、事業の「終わり」を意識することの重要性について、私の考えをお伝えしたいと思います。

誰であっても「終わり」はやってくる

みなさん、こんにちは。京都の税理士、加藤博己です。

何ごとにも始まりがあれば、必ず終わりがあります。これは、私自身の仕事である税理士業も例外ではありません。

いつか私にとっても税理士業の終わりはやってきます。それは引退かもしれませんし、予期せぬ出来事かもしれません。

どんな形で「終わり」を迎えるかはわかりませんが、「いつか必ず来る」ということだけは確かです。

そして、これは経営者の方にとっても同じことです。立ち上げた事業や会社を、永遠にご自身が経営し続けることはあり得ません。

ただ、多くの経営者の方を見ていて感じるのは、明確なゴールをイメージして、一直線にそこまで向かう方は実は多くないということです。

もちろん、事業の成功が一番の目標ではありますが、その「成功」の最終形、つまり「最終的な終わり方」まで具体的に描いている方は少ないのではないでしょうか。

しかし、誰にとっても、その事業のゴールをイメージしておくのは非常に大事なことだと考えます。

決して後ろ向きな意味ではなく、ご自身が向かうべき方向性を明確にするために、必要となる考え方です。

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ゴールから逆算して考える

では、事業の最終的なゴールには、どのような形があるでしょうか。

「株式市場への上場を目指す!」という方もいるとは思いますが、全体の中で見れば少数派でしょう。

多くの場合、経営者にとっての会社の終わり方は、主に次の3つに集約されることが多いのではないでしょうか。

  1. M&A(合併・買収)で会社を売却する

  2. 相続や贈与で次の代(親族など)に引き継ぐ

  3. 解散して会社をたたむ(清算する)

最終的なゴールとしてどれを目指すかによって、会社の日々の経営方針は大きく変わってくることになります。

例えば、「会社を売却する」ことをゴールに考えている場合は、企業価値や株価を上げることが重要になります。成長性や収益性を重視した経営判断が多くなるでしょう。

一方で、「相続などで次の代に引き継ぐ」ことを考えている場合は、後継者の負担を減らすため、事業承継時の税負担を考慮して、株価を意図的に下げておく方が有利なケースもあります。

事業をやっている中で、このような「最後」を意識するのはなかなか難しいことです。毎日の業務に追われ、数年先の見通しを立てるだけでも大変です。

しかし、朧気ながらでも「最終的な出口」を意識しておいた方が、今、どちらの方向を向いて進むべきか、という方向性は見えやすくなります。

そして、そのゴールを意識しておくと、単に「儲かればいい」という目の前の行動だけではなく、「この行動は最終的なゴールに繋がるか?」という視点が加わり、普段の行動も変わってくるはずです。

例えば

「将来売却するなら、今から属人的な業務をなくしたり、組織化を進めておくべきだ」
「後継者にスムーズに渡すために、この事業は今のうちに整理しておこう」

といった具体的な戦略が生まれてきます。

もちろん経営者も人ですから、事業を進める中で、考えが変わることもあるでしょう。そのときは方向転換し、改めてどのように事業を運営すべきか検討すればよいのです。

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普段考えないことを考えるための時間を作る

今回、私が書いた内容、事業の「終わり」や「ゴール」について、しっかりと時間をとって考えている人は意外と少ないかもしれません。

多くの経営者の方は、日々の業務の隙間や、ふとした瞬間に思いつく程度で、「いつか考えなくては」と思いつつ、時間が過ぎていってしまっているのではないでしょうか。

もちろん、ふと思いつくことが考えることのきっかけになることもあります。

しかしながら、やはり経営戦略として考えるのであれば、多少なりとも時間を確保して、しっかりと考える時間を持った方がよいでしょう。

「毎朝30分だけ、会社の将来についてひとりで考える時間を確保する」といった形で、先にスケジュールに組み込んでしまって、予定をブロックするのもひとつの方法です。

そうして確保した時間の中で

  • 10年後、自分はどうしたいか?

  • この事業を、誰に、どういう形で渡したいか?

  • 事業を終えた後に、どのような生活を送りたいか?

といったことを考えてみてはいかがでしょうか。

こうした普段考えないことをじっくり考えることで、今後取るべき行動が明確になり、日々の経営に深みが増すはずです。

ひとりで考えても思考がうまくまとまらないという場合は、相談できる相手を探してみましょう。

こうした内容について「壁打ち相手」を見つけておくことも、事業を進めていく上では大事なポイントとなります。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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