ホームページなどを開設する際に「ドメイン」を取得しているケースが多いと思いますが、いざやめるとなるとこの「ドメイン」をどうするかという問題が生じます。今回はこの件について取り上げます。

意外と見聞きする、ドメイン閉鎖後の第三者による再取得

先日税理士が所属する団体である日本税理士会連合会から、情報発信がありました。

本会が廃止したドメイン名の第三者による再取得について – 日本税理士会連合会

※リンク先に記載されているサイトには、絶対にアクセスしないでください。

内容としては、過去に「日税連成年後見支援センター」という名称で運営していたホームページがあって、そこで使用していたドメインを今年3月に廃止したものの、海外の第三者に再取得されていたことがわかったと。

そもそも、ドメインとは何でしょうか。簡単に言えば、インターネット上の「住所」のようなものです。

ウェブサイトのアドレス(URL)の「example.com」の部分がドメインにあたります。私の場合は、katoh-tax.com がドメインです。

このドメインがないと、ホームページなどにアクセスする際に、毎回IPアドレスという数字の羅列を入力しなければなりませんので、インターネットを使う際には欠かせない仕組みです。

では、閉鎖したドメインが全く関係ない第三者に取得されると、何か困ることはあるのでしょうか?

この点については、これまで使っていたドメインが、自分の意図しない形で、全くの第三者によって使われてしまう可能性があるということです。

先ほどの例でいえば、日本税理士連合会が運営する成年後見を支援するためのサイトだと思ってアクセスしたところ、全く関係のない商品を販売するサイトだったり、もっとひどいケースだと悪意のあるサイトとして運営されて、アクセスした人に何らかの被害が生じる可能性も否定できません。

実は、このようなケースは珍しいことではありません。試しにPerplexityにこのような事例を調べてもらったところ、12件も出てきました。

一例としては

ドコモ、失効した「ドコモ口座」のドメインを取り戻す、失効の原因は「社内管理の不手際」

といったものがあり、この件はご存じの方もいるのではないでしょうか。

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他人事ではない「自分のドメインどうするか問題」

小規模事業者の場合、

「自分のビジネスなんて、せいぜい自分の代で終わりだろう」

と考えている方が多いかもしれません。

私も、恐らく自分の代で税理士事務所は終わるかな、とボンヤリ考えていたります。

でもよくよく考えてみると、私のような零細事業者でなくとも、組織というものは同じ名称のまま長くは続かないものです。

大企業であっても、社名変更や合併などで会社がなくなることに伴い、ドメインが不要になる可能性は十分にあります。

そうした際に、もし何の対策もせずにドメインを放置してしまえば、上述のようなリスクが浮上してくるわけです。

また

「私のドメインなんてほとんど影響力ないから、そこまで心配する必要ない」

という考え方もあるかもしれません。

たしかに、私も自分のドメインが閉鎖されたところで、世の中に大きな影響があるとは考えていません。

ただ、生成AIの性能が上がったことで、日本語での迷惑メールが増えたといった話もあります。

つまり、悪用しようとする側からすれば、とりあえず日本で閉鎖されたドメインを片っ端から取得して、生成AIを使って日本語のサイトを運営するという可能性は否定できないわけです。

そもそも、自分が仕事を辞めた後に閉鎖したドメインが、万が一にも悪用されたり、全く意図しない形で使われたりしたら、正直なところ気分がいいものではありません。

ここまで読んで

「ドメインの再利用をできなくする手続きを整備すればいいのでは」

と思う方もいるでしょう。しかし、これも意外と難しい問題です。

もしドメインの再利用を完全に禁止するようなルールができたとすれば、今度は悪意のある第三者が企業に先回りしてドメインを取得し、「使えなくする」と脅して、高額な買い取りを求める、といった問題が発生する可能性も考えられます。

このように考えると、ドメインを最終的にどうするかは、所有する全ての人や組織に関わる問題といえるでしょう。

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具体的な対策はあるか?

実際仕事辞めるとなった場合に、自分のドメインをどうするかについては、私のケースでいえば

  • 生きている間は、お金を払ってブログだけは残しておく? →いつまで払い続けるのか、その費用対効果はどうなのか

  • 死んだ後は、しばらく子どもに管理してもらう? →親としては、そんな手間を子どもにかけさせたくないというのが本音

といった対策しか今のところ思う浮かびません。

しかも、どちらも手間がかかる割に、単に課題を先送りしているだけです。

このように考えていくと、意外と難しい問題であることに気づかされます。

単に「使わなくなったら手放す」というシンプルな選択が、あとで思わぬトラブルに繋がりかねません。

「ドメインの行く末」については、ある程度のルール整備が必要なんじゃないかと思います。

私自身はまだすぐに仕事を辞めるわけではありませんので、すぐに決断を迫られる状況ではありませんが、当面の間は、この「自分のドメインどうするか問題」を頭の片隅に意識しつつ、引き続き考えていくことになるんだろうなと。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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