税理士の仕事をしていて怖いことのひとつとして適用できる制度を漏らすなどの「見落とし」が挙げられます。こうしたミスを防ぐために普段意識していることをまとめてみます。
「こんなの使わないだろう」という知識も使うことはある
今週月曜日(4月22日)から今年の税理士試験の受験申込みが始まりました。
税理士試験の勉強って大変ですから、もう一度やりたいかと聞かれたら全力でお断りすると思いますが、こうした試験勉強は意味のあるものだと個人的には思います。
その理由のひとつが「知識を体系的に学べる」という点です。
テキストを元に勉強を進めていると
「こんな知識、税理士になってもゼッタイに使うことないだろう」
と感じる分野って結構あるのではないでしょうか(特にCランクの論点とか・・・)。
でも実際にはそうとは限りません。例えば私のケースでいえば
- 所得税:平均課税
- 消費税:国等の特例(仕入税額控除の制限計算)
などは実際に申告をしたケースがあります。
平均課税については文筆家の方でしたが、印税や原稿料が急激に増えた時期であったため平均課税を適用することで税額を抑えることができました。
消費税についても、受験中は
「こんな特殊な論点、計算問題や理論でもたまにしか出ないし、実務で使うことはないだろう」
と思っていましたが、実際に適用しなければならないケースがありました。
どちらも「知識として知っていた」からこそ気付いて適用することができたわけです。
もしこうした知識なしに該当する場面に遭遇した場合には、そもそも「気付く」ことができません。
体系的に知識を幅広く学べる機会があったからこそ気付くことができました。
ちなみに余談ですが所得税の平均課税の理論を覚えるときに
「はまち、まだい、ひらめ・・・の養殖から生じる所得」
といったものがあります。
「こんな魚の名前覚えても・・・」と思っていましたが
「理論の中に魚の名前があった」
という記憶があれば、実際にこうした事業を営む方に出会ったときに「何かあったかも」と気付く可能性は高くなるんじゃないでしょうか。
私は未だに出会ったことはありませんが・・・。
見落としがないか確認するための継続的なインプット
このように試験勉強をしている期間であれば、普段は使わない知識にも接する機会があります。
では試験勉強が終わって実務一辺倒になったときにはどうすべきか?
これについては自分で「気付くための機会」をできるだけ作るように行動する必要があります。
私がやっていることのひとつは
「毎週税金に関する専門雑誌に目を通す」
ことです。
大量に何冊も読んでいるわけではありませんが、こうした雑誌に目を通すメリットとしては
- そもそも自分が知らなかった論点が掲載されることがある
- 取材等により今まで明確でなかった取扱いがでてくることがある
- 自分が興味のない分野についても記事が掲載される
といった点があります。
目を通す中で時折
「あれ、これってこのとおり処理してたっけ?」
と思うことがあります。問題ないこともあれば、フォローが必要となることもあったりします。
まさに自分が見落としているポイントがないか気付くための手段のひとつとなっているわけです。
税理士だから税務の勉強だけやってればいいという時代ではありませんが、それでも最低限こうした対応は必要でしょう。
私自身、40歳を過ぎてから税理士になったので、長くこの世界にいる人たちには税務の知識では敵いません。
だからこそ少しでも追いつくためのものとして、毎週雑誌に目を通すことにしています。
また実を言うと、私は所得税の試験は受験していません。受験したのは「法人税・相続税・消費税」でしたが、試験が終った後に改めて受験予備校の所得税の講座に通っていました(模試が本格化したあたりでドロップアウトしましたが)。
「税務の経験が浅い状態で、所得税を知らずに実務をするのは厳しいんじゃないか」と考えて予備校に通っていたわけですが、もし通っていなかったら前述の平均課税については見落としていたかもしれません・・・。
「使わない知識かもしれないけれど、一応知っておく」ということは、この仕事をする上では本当に大事です。
ミスを「気付く」ための仕組みを増やす
専門雑誌なども、ただなんとなく読むだけではあまり意味はありませんし、逆に時間のムダとも言えます。
「自分が見落としている論点はないか」など目的意識を持って読んでいけば、気づきは得られやすくなります。
ミスについては「防ぐ」「流出させない」ことが最も大事であることは間違いありませんし、その点に最大限注力すべきです。
そのためには「気付く」ことがゼッタイに欠かせませんので、継続的なインプットを含めて「仕組み」をどのように準備できるかについては常に考えておきたいものです。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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