いよいよインボイス制度が始まりますが、つい最近になってETCについての取扱いが公表されました。この点について確認しておきましょう。
ETCを利用した際のインボイスの保存
来週からいよいよインボイス制度が始まりますが、先日9月15日に国税庁からETCを利用した場合のインボイス保存についての取扱いが公表されました。
ETCについてはいくつかの種類がありますが、クレジットカード会社が交付するETCカードについては、クレジットカード会社から送られてくるご利用明細は通常はインボイスにはなりません。
ETC利用照会サービスというサイトですべての利用分について、簡易インボイスをダウンロードして保存しておく必要があるというのが従来の説明でした。
このサイトを使おうとすると登録が必要なようであり、さらに定期的にデータをダウンロードする必要があります。
月に数回程度しかETCを利用しないのであればまだなんとかなりますが(それでもわざわざダウンロードする手間が生じます)、月に何十回、何百回とETCを利用する会社にとってはダウンロードするだけで大変な手間です。
恐らく
「本当にこんな対応しないといけないのか?!」
という問合せが多く寄せられたのでしょう。
そうした声を受けて、今回柔軟な対応を認める取扱いが公表されたものと思われます。
国税庁から公表された取扱いとは
今回、公表された内容は
お問合せの多いご質問(令和5年9月15日掲載)問④高速道路利用料金に係る適格簡易請求書の保存方法(16~17ページ)
です。
同様の内容が、先ほどのETC利用照会サービスのサイトでも
ETCクレジットカードを利用した高速道路利用に係るインボイス対応について
として案内されています。
公表された内容としてはまず
- クレジットカード会社が発行する利用明細書は、サービス提供者自身が作成したものではなく税率などの記載もないため、一般的にインボイスにはならない
- そのためクレジットカード会社が発行しているETCクレジットカードでETCを利用した場合は、ETC利用照会サービスを使って簡易インボイスをダウンロードして保存するのが原則
と従来の取扱いが説明されています。
その上で柔軟な取扱いとして、利用が多頻度で保存が困難なときは
- クレジットカード会社が発行するクレジットカード利用明細書を保存する(ただし、個々の高速道路の利用内容がわかる必要があります)
- aに加えて利用した高速道路会社などの任意の一取引について利用明細書をダウンロードして保存する
という方法で構わないとしています。
「高速道路の利用が多頻度にわたるなどの事情」がある場合とされていますが、「多頻度」についての基準は書いてありませんのでそこまで気にする必要はないと思います。
aの個々の利用内容がわかるという点については、例えば私が利用しているカードの利用明細を確認したところ
自○○ 至△△
と利用区間が記載されていました。こうした記載と利用日・利用金額・利用した高速道路会社がわかれば問題ないでしょう。
またbの任意の一取引ですが、これは高速道路会社ごとに2023年10月1日以降、一回のみダウンロードして保存しておけば問題ないとのことです。
例えばNEXCO西日本を利用したのであれば、NEXCO西日本について一回のみETC利用照会サービスからダウンロードした簡易インボイスを保存する、他の高速道路会社を利用した場合には別途その会社について一回だけ保存するということです。
この1回というのは月や年ごとではなく、本当に1回のみで構わないみたいです。
ただ税務調査の場面などで1回のみ保存した明細を見せてくれと言われたら対応できるのかどうか。
仮に2023年10月の利用分を保存したとして、数年後にその保存したものを見せてと言われても、いつの取引分を保存したのか覚えていないのではないでしょうか。
税務署側がわざわざ提示を求めることが実際にはないか、もしくは調査のタイミングでダウンロードして提示するような取扱いになりそうな気がします。
なお今回の取扱いはクレジットカード会社が発行するETCが対象であり、高速道路会社が発行するETCコーポレートカードやETCパーソナルカードについては取扱いが異なります。
ご利用中のETCカードがどのタイプかご確認いただいた上で、インボイス対応をご検討ください。
インフラ的な会社についてはもっと柔軟な対応でもよいのでは?
今回公表された内容も含めて、インボイスについては取扱いが徐々に緩くなってきている気がします。
そこまで緩めても問題ないと考えているのであれば、多くの人が利用するインフラ的な会社(電気・ガス・水道や今回の高速道路会社など)については、ホームページ等でインボイス登録されていることが確認できれば、インボイスなしもでいいんじゃないかと。
特にこうしたインフラ系の会社は
「インボイスが必要な事業者はサイトにアクセスして自分でダウンロードしてください」
という対応が多い気がします。
サイトにアクセスしてダウンロードする手間も積み重なれば無視できないものとなります。
現状の運用では経理の手間が増えるだけで事業者には何らメリットはありませんので、経理実務に配慮した運用・取扱いに変わっていくことを望みます。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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