国税の還付通知をデータで受け取ることが可能となりましたが、この変更でメリットを受ける人が果たしてどれくらいいるのか。単純に電子化するだけでメリットはあるのかといったことを考えてみましょう。

還付金の振込通知書をデータで受け取り可能に

所得税の還付申告をしたことがある方ならご存じかと思いますが、税金の還付については税務署から還付金額を知らせるハガキが届きます。

ペラっとめくると還付金額などが書いてあります。

これについて今月(2023年6月)以降、電子申告する際に希望すればハガキではなくデータで通知してもらえるようになります。

還付金の振込みに係る電子通知について

対象としては

  • 税目:法人税、所得税、消費税、贈与税、相続税など
  • 申告方法:申告や申請をe-Tax(電子申告)で行う
  • 還付方法:銀行口座への振込み

となっていますので、対象となる方はかなりいると思われます。

具体的には、e-Taxで還付申告などを作成する際に

「この申告書に係る通知等がある場合、e-Taxによる通知を希望します。」

欄の「還付金振込」を選択して送信するとのことです。

ただデータで通知といっても、e-Taxと呼ばれる仕組みの受付システムにログインしないとみることはできません。

待っていれば自動的にメールに添付して届くといったものではないのです。

しかも注意点として

  1. 電子通知を希望すると書面での通知は来なくなる
  2.  個人利用者は電子証明書が必須
    • 少なくともマイナンバーカードが必要
    • パソコンだとカードリーダーも必要
    • スマホでマイナンバーカードを読み取って閲覧できるかどうかはサイトの説明では確認できず
  3. 税理士が代理送信で電子申告しても本人しか見れない
    • 税理士に申告業務を丸投げしていても、本人しか還付通知を確認できない

といった点が挙げられます。

「データでもらえた方が便利!」ということで安易に選んでしまうと、「還付金の振込通知が来ない、見れない」といった状況になってしまう可能性があるので注意が必要です。

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マイナポータルが普及しないと意味がない?

将来的には紙での通知は徐々に減らしてデータに移行する必要があると考えていますが、今回の仕組みでいえば、そもそもe-Taxの受付システムに自分でログインしたことがある人ってどれほどいるのかという疑問があります。

例えば個人の方を例にとると、確定申告書等作成コーナーで申告書を提出する方は増えていますが、所得税の申告手続きはそこで完結できます。

そのため

「e-Taxにログインして確認してください」

といわれても

「e-Taxにログインするってどういうこと?」

という反応をする方がほとんどではないかと思います。

では今後e-Taxに自らログインする方が増えるかというと、恐らく増えることはないでしょう。だってログインするメリットがありませんので。

となると今回のような還付金の振込通知をデータでもらってもあまり意味がないのでは?

ひとつの可能性としてはマイナポータルの機能である「もっとつながる」で閲覧する人は増えていく可能性は多少はあるんじゃないかと思います。

マイナポータルの「もっとつながる」とは何ですか。 | よくある質問|マイナポータル

マイナポータルで国税庁のサイトと事前に連携しておく。

その後マイナポータルにマイナンバーカードでログインして、そこで還付通知を確認するという流れの方が、e-Taxにログインして確認するよりもまだ可能性はあるでしょう。

(これも実際に確認したわけではないので、マイナポータルからだと還付通知は見れないという可能性は否定できませんが。)

とはいえ、マイナポータルを使って税金に関する通知を確認するという状況になるには、その前提としてマイナポータルにログインするのが当たり前の状況になる必要はあります。

役所に行かずに手続きなどはマイナポータルで行うのが普通になって初めて先ほどのような流れで税金に関する電子通知をご本人が確認するようになると。

ところが現状では、私自身マイナポータルを見る機会があるかといわれれば、ブログネタで書くときくらいしかログインしません。

マイナポータルが生活インフラとして使われるには、まだまだ時間がかかりそうな気がします。

ちなみに、税金や社会保障の通知くらい自動的にマイナポータルに配信すればいいと思うんですが、情報漏えい等を心配される方が多くそこまでできないんでしょうね。

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電子化するだけではメリットが生じるとは限らない

紙よりも電子化した方が効率が上がる可能性は高まると考えていますが、単に電子化するだけで問題が解決するわけではありません。

例えば、紙の書類をスキャンしてデータにしても、仕事がラクになるかはケースバイケースです。

紙の書類をそのまま受け取り続けると、スキャンする手間がふえるだけかもしれません。

電子通知できる選択肢が増えることは歓迎すべきですが、それだけで効率化が進むものではありません。

今回の還付通知の電子化って今のままだとメリットを受ける人が限られるんじゃないか。

そんなことを感じましたので、現時点で考えていることをまとめてみました。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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