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経理業務の効率化を考える際に「このツールを導入すればすべて解決する」というように「手段」から考えてしまっていませんか?

すべての事業者がデジタル化しているわけではない

税理士としてお付き合いのある事業者は多くの場合、大企業ではありません。

中小零細企業や個人事業主の方が圧倒的に多く、経理処理などにしても必ずしもデジタル化していないこともよくあり、手書きの資料なんかも見かけることはまだまだあります。

その一方で、経理の専任者を置くのが難しいというケースも多く、経理処理に時間や手間をかけていられないのもまた事実。

ギリギリまで放置して、手元の資料をすべて税理士に丸投げなんてケースもあるかもしれませんが、それでは事業の実態をきちんと把握できず経営判断を間違ってしまう恐れがあります。

そうなると

「いかに手間をかけずに経理処理をするか」

というのは事業を行う上でひとつのポイントといえるでしょう。

経理の効率化を検討する際には、いろんなベンダーさんからいろんな提案を受けていることも多いと思われますが、一つの落とし穴として

「このツールを入れればすべて解決するはず」

という考え方があります。

今回は経理の効率化を考える際に気をつけたい点について確認しておきましょう。

業務効率化は「原因」「目標」「手段」の順に考える

経理の大きな部分を占める仕事が帳簿を作成すること、いわゆる「記帳」であるため、ついつい会計ソフトですべて解決すると考えてしまうケースがあるかもしれません。

実際には経理に関係する仕事としては

  • 現預金の残高管理(資金繰り)
  • 取引先への支払い
  • 立替経費の精算
  • 売掛金の回収チェック
  • 決算書の作成

など多岐にわたります。

効率化しようとすると、それぞれの業務について解決すべき課題がいろいろとあるはずです。

経理業務において困っている「原因」がまずあり、そこからどのように変えたいかという「目標」を明確にして、ようやくどの「手段」を選ぶべきかという話になります。

この順番を間違ってしまうと

「高いお金を払って新しいツールを導入したのに、全然仕事がラクにならない」

という状況になってしまいます。

例えば、現金による回収・支払いが多くその処理が大変で、さらに現金を数えるのにも時間がかかり、しかも帳簿の残高と合わないことが多いという状況を想定してみましょう。

このケースで経理の効率化を考えるとすると

  • 原因:現金による処理が多いこと
  • 目標:現金による処理を無くす
  • 手段:
    • 現金での支払いを銀行振込に変更
    • 従業員に法人カードを貸与して立替精算を効率化
    • 店頭決済用のキャッシュレスシステムを導入して現金以外の支払い手段を受け付ける

といった方法が考えられます。

こうした状況を解決したいのに、経理の問題だからといって会計ソフトを導入しても何一つ解決しません。

業務の流れをきちんと整理して、仕事が大変になっている「原因」を明確にして、どのように変えていきたいかという「目標」を設定することの方が、「手段」を検討するよりも遙かに大事です。

現金管理ではあまりないかもしれませんが、「原因」を明確にするために業務の流れを整理していると、実はその仕事自体する必要がなかったというのはよくある話です。

特に組織が大きかったり、担当者が何度も変わったりしていると何のためにその仕事をしているのか、いつのまにかわからなくなっていることがあります。

「手段」から検討してしまうと、そもそもやらなくてよい仕事をツールを使って効率化するということになりかねません。

検討の順序は間違えないよう気をつけましょう。

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できることからひとつずつ進めいく

経理の効率化を検討する際にもう一つ気をつけたい点は

「いきなり難しいことをやろうとしない」

ということです。

例えば先ほどの現金の例でいえば

「いきなり現金をゼロにするなんてムリだ。だから現金管理は改善できない。」

と考えてしまう必要はありません。

「キャッシュレス」という言葉がありますが、これは

キャッシュ(現金)+レス(無いこと)

であり現金をなくしてしまうことです。

レス(less)という単語には、「~が無いこと」という意味の他に、「より少ない」(littleの比較級)という意味もあります。

だからいきなりキャッシュレスではなく、まずはレスキャッシュ(今よりも現金を減らした状態)を目指せばいいのです。

例えば、現金で支払いをしている取引先があるのであれば、銀行振込に変更してみる。

「これくらいならウチでもできる」ということから始めることが大事です。

小さな改善や効率化も積上げていくと大きな効果になります。

今までやっていなかったことに挑戦することで

「ウチにはムリだ」

という気持ちの上でのカベが少しずつなくなっていきます。

繰り返しになりますが、いきなり高いハードルを掲げて「ウチにはムリだ」ではもったいないです。

「こんなことでいいの?」ということから経理の効率化を始めてみませんか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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