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会計ソフトにおける自動仕訳ルールは一般的なものとなりましたが、表記の揺れに悩まされる状況は変わりません。改めて表記揺れへの対応方法を整理してみたいと思います。

自動仕訳ルールは今や欠かせないツール

取り込んだ銀行明細データなどに対して、自動仕訳ルールを事前に設定しておけば、仕訳が自動的に作成されます。

※ソフト毎に言い方が違ったりしますが、今回は「自動仕訳ルール」に統一します。

元々はクラウド会計のみで使えるものでしたが、今や弥生会計(スマート取引取込)など多くの会計ソフトで一般的に使えるようになりました。

昔は通帳を見ながら一行ごとに会計ソフトに入力していましたが、自動仕訳ルールに慣れてしまうと、もう昔の入力方法には戻れません。

とはいえ、自動仕訳ルールを使っていると

「あれ、ルール設定したはずなのに仕訳が自動的に作成されない」

というケースがあります。

原因のひとつは銀行明細データなどの摘要の表記揺れです。

この問題、古くからのテーマではありますが、改めて対処方など確認しておきたいと思います。

意外と悩ましい表記揺れへの対応

自動仕訳ルールにおける表記揺れへの対処方法についてケース毎に確認してみましょう。

システム変更等により摘要が変わってしまうケース

会計ソフトとデータ連携する代表的なものに

  • 銀行の入出金明細(通帳データ)
  • クレジットカード明細

があります。

ごく稀にですが、銀行などデータ提供側のシステム変更などにより、摘要の書き方がガラッと変わってしまうことがあります。

こうしたケースについては残念ながら対処方法はなく、新たに自動仕訳ルールを登録し直すしかありません。

全角・半角の相違について

これもシステム変更等によることが多いと思われますが、銀行振込や口座引落しの摘要が全角だったものが半角になったり、半角が全角に変わってしまうことがあります。

例としては

「テスウリョウ」

という摘要が

「テスウリョウ」

に変わってしまうケースなど。

今のところ私が使ったことあるソフトの中で、全角・半角を同じ文字列として扱ってくれるものはありません(見落としているケースがあるかもしれませんが)。

これこそAIを活用して、同じように扱ってくれると楽になるんですが・・・。こんな仕事なら人間からいくら奪ってもらってもまったく問題ありません。

具体的な対処方法としては、全角→半角、もしくは半角→全角に摘要が切り替わったタイミングで、自動仕訳ルールを「追加」することにしています。

自動仕訳ルールを「書き換え」てしまうと、逆の変化が再び起きたときに改めてルールの修正が必要となるため、全角・半角両方に対応できるよう2つルールを設定しておきます。

大文字・小文字の相違について

大文字・小文字と表現は日本語では正しくないですが、拗音・促音と呼ばれる「ャ・ュ・ョ・ッ」などについてです。

先ほどの全角・半角問題と似ていますが、こちらは

「テスウリョウ」

という摘要がある日突然

「テスウリヨウ」

に変わってしまうケース(違いは「ヨ」と「ヨ」です)。

これもAIを使ってなんとかして(以下省略)。

このケースについては、先ほどのケースと同じように自動仕訳ルールを2つ登録することも考えられますが、影響がなさそうであれば自動登録ルールの対象となる摘要を

「テスウリョウ」 → 「テスウリ」

に変えることも考えられます。

似たような自動仕訳ルールが複数存在すると、どのルールが適用されているのかわからなくなることがあるため、極力ルールを増やさずに済む方法を採用することにしています。

今回のケースで言えば、「テスウリ」が含まれるような別の摘要は思いつきませんが、もし取引先に「テスウリ」の文字が含まれる会社がある場合は、「テスウリョウ」と「テスウリヨウ」のルールを登録するしかないです。

※自動仕訳ルールに金額範囲を設定できるのであれば、金額範囲により手数料である「テスウリ」と「テスウリ」が含まれる会社に対するルールを分けられる可能性はあります。

出納帳の摘要について

ここまでは銀行明細データなどの対処方法について考えてきましたが、会計ソフトに取り込むデータとしてもう一つExcelで作成した出納帳が挙げられます。

銀行やクレカ明細については摘要の変更を防ぐことはできませんが、自社で作成するExcelの出納帳であれば、全角・半角や大文字・小文字の表記の揺れを防ぐことは可能です。

具体的には、出納帳の摘要を選択式にしてしまうこと。

Excelの「データの入力規則」という機能を使えば、出納帳の中で使用できる摘要を制限することができますので、表記の揺れを防げます。

Excel ドロップダウン リストの使い方! プルダウン作成の基本〜応用まで – Microsoft for business

この方法は、ある程度出納帳に入力する摘要が絞られていることが前提にはなりますが、自社内で作成するデータですから、工夫できる余地は他にもいろいろあります。

「データの表記揺れがあっても、自動仕訳ルールを複数登録して対応すればよい」という考え方もありますが、会計ソフトに入ってくる前にデータをキレイにしておいた方が、自動仕訳ルールの管理もスッキリするはずです。

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経理業務の効率化は細かい工夫の積み重ね

今回は会計ソフトにおける自動仕訳ルールについて整理してみました。

泥臭い内容ではありますが、経理業務を効率化しようとすると、こうした細かいメンテナンスの積み重ねは避けられません。

いかにして、こうしたメンテナンスを手間をかけずに行うかが、経理におけるひとつの大事なポイントです。

そのためにも、多少の摘要の変化にも対応できる自動仕訳ルールの設定が重要となります。

自動仕訳ルールは使っているけれど、想定したとおりに仕訳が作られないという悩みをお持ちであれば、一度自動仕訳ルールを見直してみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
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