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前回、電子帳簿保存法一問一答の改訂内容がちょっと厳しいのではという点に触れましたが、会計ソフトを選ぶ際に法令対応の観点をどこまで考慮すべきか考えてみましょう。

電子帳簿保存法の要求レベルが上がっている?

前回の記事の冒頭で、先日公表された電子帳簿保存法一問一答の改訂内容が厳しめの方向になっているのでは、という点に触れました。

税理士がこんなこと書くとよろしくないかもしれませんが、一問一答に書いてあることをすべてきちんと対応するのはかなり難しいと思ってます。

やり過ぎると「電子帳簿保存法に対応すること」自体が目的となってしまい、本来事業活動に投入すべきリソースが削られることになりかねません。

どこかで現実的な落とし所を見つけて、ムリせず対応できる方法を検討する必要があります。

そもそも「帳簿」や「書類」の保存って、日常業務の中ではそれほど負担を感じずに、意識することなくやっている作業のはず。

電子帳簿保存法が適用されるケースが増えたとはいえ、同じような感覚でできないと続けることはできません。

負担感を減らすためにも、ソフトやサービスなどのツールを上手に利用することが必要です。

「会計データ作成の効率化」と「法令対応の省力化」

電子帳簿保存法に対応するためのソフトやサービスとして、最初に候補にあがるのは会計ソフトでしょう。

電子帳簿保存法対応を謳うものも増え、日常業務の中で使っている会社も多いでしょうから、無理なく利用することができます。

一般的に会計ソフトを選ぶ基準は

「いかに効率的に会計データを作成できるか」

ではないでしょうか。

この基準を満たすために

  • 科目コードなどを利用した高速入力
  • 銀行データなどの取込みによる入力の省力化
  • AIなどの活用による仕訳処理の自動化

といった形で会計ソフトは進化してきました。

電子帳簿保存法の対応に貴重な時間を取られないためにも

「電子帳簿保存法にいかに楽に対応できるか」

という視点も今後は必要ではないかと。

一問一答の改訂内容など見ると、電子取引については

  • クレジットカードの利用明細
  • 銀行の入出金明細

なども保存が必要とされていますが、中小零細事業者ではここまで意識してデータとして保存しておくのは大変です。

電子帳簿保存法に対応した会計ソフトとデータ連携しておけば、データは自動的に取り込まれ、データ保存としても問題ありません。

最初に仕組み・ルールをきちんと作りさえすれば、あとはほぼ意識せずに法律対応ができている、という流れが理想です。

会計ソフト・サービスを選ぶ際には、「効率的な会計データ作成」という視点だけではなく、「電子帳簿保存法対応のカンタンさ」という視点も持っておくべきでしょう。

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サービス・ソフトの乗り換え問題をどう考えるか

会計ソフトを活用して電子帳簿保存法への対応を検討すべきと書きましたが、この場合ひとつ問題が残ります。

それは

「将来、会計ソフトを変更したくなった時の対応」

です。

今までは会計ソフトには「会計データ」しかありませんでした。

変更前のソフトが会計データのエクスポートに対応していれば、会計ソフトの変更はそれほど難しい問題ではなかったわけです。

ところが、会計ソフトに電子取引データなどを保存するようになると、将来会計ソフトを変更したくなったときに、保存した電子取引データをどうするかという問題が発生します。

改正された電子帳簿保存法は始まって日が浅いため、会計ソフトを変更する際の対応について公表しているサービス提供者はおそらくまだないでしょう。

そもそも電子取引の保存については、タイムスタンプや訂正削除ができないことを前提としているケースもあるため、会計ソフト間のデータ移行が法律上認められるかという問題もあります。

会計ソフトで電子帳簿保存法対応をする際には

「将来にわたって、この会計ソフトで自社業務に対応できるか?」

という視点も持った上で利用するソフト・サービスを選定すべきです。

「電子帳簿保存法への対応は楽になったけど、会計データの作成は大変になった」

「高機能なソフトを導入したければ、価格に見合うほど活用できていない」

という状態では意味がありません。

今回ご紹介したような視点を持ちつつ、電子帳簿保存法への対応を検討する際の会計ソフト選びの参考にしていただければ幸いです。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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