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確定申告の時期になると「これって税金かかるの?」という質問が増えます。今回は個人年金に関する贈与税・所得税について確認しておきましょう。

税理士を焦らせる怖い質問

税理士の仕事をしていると、税金について質問を受けることが多いわけですが、中には聞いた瞬間にかなり焦る質問があったりします。

そのひとつが

「子どもが毎年保険金を受け取れるよう、私(親)が保険料負担して保険に加入したんだけど、去年子どもが受取った保険金は100万円だから贈与税かからないよね」

といったもの。

この質問を受けた瞬間、顔は(引きつりつつ)笑いながらも

「えっ、それあかんやつちゃうの??」

と背中にいやーな冷や汗が流れてたりします。

なぜかと言いますと、もしこの加入した保険商品が例えば

「一定の日から10年間、毎年一定の保険金を受取ることが確定している商品」

だとすると、子どもが保険金をもらえることが確定した時点で、親から

「10年分の保険金を受取る権利」

が贈与されたことになってしまうからです。

(贈与税がかかる対象金額は、10年分の保険金の合計ではありませんが、計算方法は今回割愛します)

さらに困ったことに、子どもは「権利」を贈与されただけなので、毎年受取る保険金の一部については所得税もかかります。

ということで、最初の質問を受けた場合には

「その保険商品って、具体的にどんな内容ですか?」

という質問をして、その回答をもらうまではドキドキしっぱなし、ということになるわけです。

なお、この取扱いについては、国税庁のホームページに詳しく書かれていますので、ご興味のある方はご参照ください(所得税の計算方法については、一般の方には難解ですが・・・)

No.1610 保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金

No.1620 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係

保険商品により変わる税金の取扱い

とはいえ

「生前のうちに、子どもに資産を移転したい」

「毎年贈与したいけど、契約書作ったり振込するのが面倒だから一度にまとめて済ませたい」

といったニーズはあるようで、ニーズがあるところ対応する商品が作られたりします。

例えば、次のような保険商品です。

  • 親が保険料を負担(一時払いで支払う)
  • 被保険者も親
  • 一定期間、毎年一定の日に被保険者(親)が生きている場合には、受取人(子)が生存給付金を受取る
  • 親が亡くなった場合には、残りの期間に対応する金額が死亡保険金として支払われる

こうした商品を発売する前には、保険会社も問題がないか確認するようで、国税庁に問い合せた内容が文書回答事例として公開されています。

保険料負担者(保険契約者)以外の者が受け取る生存給付金の課税上の取扱いについて

ここでの回答は次のようになっています。

本件生存給付金については、定期金給付契約に関する権利、すなわち契約によりある期間定期的に金銭その他の給付を受けることを目的とする債権を取得し、これを行使することにより受け取るものではなく、本件生存給付金支払期間中の毎年の保険年度の満了時における被保険者の生存という支払事由(保険事故)の発生の都度、本件生存給付金の受取人が本件生存給付金を保険料負担者(保険契約者)から贈与により取得したものとみなし、贈与税の課税対象になるものと解するのが相当であると考えます。

長々と書いてありますが、要するに

  • 親の生存を条件に生存給付金が支払われる
  • 親が亡くなってしまうと生存給付金はもらえなくなる
  • だから一定期間(例えば10年間)給付金をもらう権利が確定しているわけではない

ということで、受取人(子ども)がその年に受取る生存給付金だけが、その年に保険料を負担した人(親)から贈与されたことになる(つまり贈与税の対象になる)とされています。

つまり保険商品の内容によって

  • 将来的に受取る保険金全額に一度に贈与税がかかり、さらにその後保険金を受取る度に毎年所得税もかかるケース
  • その年に受取る保険金(給付金)だけが、その年の贈与税の対象となるケース

と税金の取扱いは全く違ったものになってしまうわけです。

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専門的なことは「事前に」相談してこそ効果がある

保険商品の商品内容により税金の扱いが変わってくる点はご理解いただけたかと思います。

税理士も万能ではありませんので、保険金をもらってから質問を受けても、正直どうすることもできません。

税金の話に限ったことではありませんが、専門的な内容については「事前に」相談することがとても重要です。

「実行する前に聞いてくれれば手が打てたのに・・・」というケースは多々あります。

もちろん専門家に相談すれば費用はかかりますが、あとで取り返しがつかないことになるよりは遙かに安いはず。

『専門的な内容については「事前に」専門家に相談すべき』ということを頭の片隅に入れておいていただければと。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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