昨年途中より弥生会計のスマート取引取込で複数行となる仕訳もルール化できるようになりました。ところが設定方法が少しわかりにくいので、具体的な設定方法について確認をしておきましょう。

スマート取引取込で複合仕訳を作るには

弥生会計で銀行データなどを取り込むことができる「スマート取引取込」。

入出金などのデータに対して複数行の仕訳を作成することが従来できませんでしたが、昨年の途中から対応できるようになりました(詳細については以下の記事にまとめています)。

それまでスマート取引取込は使っていなかったのですが、上記の変更がされてからは一部使うようになりました。

使うようにはなったんですが・・・、設定画面がわかりにくい。

クラウド会計などの自動仕訳ルールをイメージして設定しようとすると少し戸惑います。

ということで今回は

  • 売掛金の回収時に手数料が引かれている
  • 税理士への報酬の支払時に源泉所得税を差し引く

というケースでの設定方法を確認しておきたいと思います。

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「加算」ルールの考え方を改めて確認する

複数行(正確に言えば2行の仕訳)を作るためには、事前にルールを登録しておく必要がありますが、その詳細については以下リンク先の12~13ページにおいて解説されています。

弥生:スマート取引取込「弥生会計へのデータ取込」運用ガイド

このルールについては

  1. 本来の金額よりも少ない金額の入出金に適用する「加算」
  2. ひとつの入出金を複数に分割する際に適用する「分割」

の2種類あります。

「分割」については、借入金の返済などで元金と利息がまとめて引き落とされる場合などに使用しますが、今回のケースでは「加算」ルールを使います。

売掛金から振込手数料が差し引かれて入金されるケース

リンク先の資料の中に

「売掛金(10万円)から振込手数料(880円)が差し引かれて、99,120円が普通預金に振込まれる」

という具体例があります。

弥生:スマート取引取込「弥生会計へのデータ取込」運用ガイド 12ページより抜粋

ルールの登録画面では

  • 左側:対象となる取引を特定するための情報を入力
  • 右側:追加する仕訳に関する情報を入力

となっていますが、左側の設定については今回割愛します。

右側で何を設定するかというと

  1. 科目を追加するのが「借方」か「貸方」かを指定(もしくは指定せず、元の仕訳をそのまま複製)・・・上記例では「借方」
  2. 1で指定した側に追加する「勘定科目」を指定・・・上記例では「支払手数料」
  3. 2の勘定科目の金額を指定・・・上記例では「880」

となります。

ここでクラウド会計などの設定ルールに慣れていると、

「設定した勘定科目の相手勘定科目(反対側の勘定科目)は指定しないの?」

と一瞬悩んでしまうわけです。

結論からいうと、設定しない相手勘定科目については元の勘定科目がそのまま適用されます。

今回の例における設定をすることにより「加算ルールにより作成」となっている部分の

支払手数料/売掛金 880

という仕訳が追加されます。

このとき貸方の「売掛金」についてはルール内に設定はありませんが、入出金データから作成された仕訳で使われている「売掛金」が相手勘定科目として使われることになります。

税理士報酬から源泉所得税を差し引いて支払うケース

次に入金ではなく出金の場合の設定についても確認しておきましょう。

例として、税理士報酬55,000円(税込)に対して源泉所得税5,105円(税抜5万円×10.21%)を差し引いた49,895円を支払うとします。

この場合、銀行口座から振込みするのは49,895円ですが、スマート取引取込で作成したい仕訳は

税理士報酬 / 普通預金 49,895
税理士報酬 / 預り金        5,105

となります。

先ほどと同じようにまとめたものが次の図です。

2行目の仕訳を追加ルールとして「加算」したいので、ルールの設定は次のようになります。

先ほどの売掛金の例と異なり、借方の勘定科目(「税理士報酬」)はそのままで、「貸方」に勘定科目「預り金」を追加します。

このように設定することで、支払の場合であっても自動的に必要な仕訳を作成することができます。

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複数行仕訳を作成する際の問題点

弥生会計のスマート取引取込で複数行の仕訳を作成する際の「加算」ルールについて確認しました。

イメージさえつかめてしまえばそれほど悩むこともなくなりますが、普段から仕訳している立場からすると、相手勘定科目の設定が省略されている点に違和感を覚え、使いづらく感じてしまいます。

複数行の仕訳を作成する機能については、他にも

  • 売掛金や税理士報酬などの勘定科目が複数行になってしまう(仕訳帳などで「売掛金:100,000円」、「税理士報酬:55,000円」と検索してもヒットしない)
  • スマート取引取込は、通常仕訳日記帳形式でインポートされるが、複数行仕訳データは振替伝票形式でインポートされる
  • 金額範囲の指定など細かい条件設定ができない

といった問題点もあります。

機能としてはないよりもあった方が大いに助かるのは事実ですが、もう少し使いやすくならないかな、と。

弥生会計は会計ソフトとデータ取込み機能が完全には一体化していないので、なかなか難しいのかもしれませんが。

今回の記事、スマート取引取込の設定に悩んでいる方の理解の一助となれば幸いです。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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