専門家の端くれとして仕事をしていると、「もっと上手に使ってもらえるといいのに」と感じることがあります。専門家を上手に活用している経営者とはどんな方か、私なりの考えをまとめてみます。
専門家が、細かい話をせざるを得ないやむをえない事情
京都の片隅で主に税理士としての仕事を日々しているわけですが、仕事上どうしても細かい指摘やリスクなどについて説明せざるを得ないケースがあります。
そうした時はほとんど場合、
「コイツ、細かいことばかり言いやがって」
という視線・態度・お言葉等々を受けることになります。
これは税理士に限った話ではなく、「士業」といわれる仕事をされている方であれば、多かれ少なかれ感じているのではないかと。
ではなぜ専門家と言われる人たちは、こうした細かい話をせざるを得ないか。
ひと言で言ってしまえば、専門家は「説明責任」を問われるから、ということになります。
平たくいえば、「先生、それなんで事前に説明してくれなかったの?聞いてないよ!」と言われたときに、専門家側に責任ありとされるというわけです(すべてのケースで責任があるわけではないですが、わかりやすく単純化して書いてます)。
所得する専門家団体から、そうした情報をイヤというほど見せつけられて、専門家であればやはり慎重にならざるを得ない部分があります。
また、関わりのあるお客さまについては、関わりがある以上、想定されるリスクをできる限り下げたいと考えて行動します。
そのため、気付いたリスクや問題点については、きちんとお伝えしようとする。
そうした姿勢が、指摘を受ける側からすれば「コイツ、細かいことばかり言いやがって」と感じる要因になってしまうわけです。
専門家ができるのは、最終的には選択肢の提示
次に、専門家ができることは何かということを考えてみましょう。
ある人が、自分がよく知らない分野について、手っ取り早く知るために、お金を払っていろいろと教えてもらう、もしくは作業を代行してもらう。
これが多くの方がイメージする専門家ができること、ではないでしょうか。
実際に間違ってはいないと思いますが、難しい課題などになってくると、
「これが唯一の絶対に正しい答え」
を提示できないケースも出てきます。
そうなると専門家にできることは、
「専門家の見地から、依頼者に選択肢を提示すること」
となります。
具体的にいえば、
「専門家としての立場から、この課題についての対応策として、A案・B案・C案が考えられます。それぞれのメリット・デメリットはこのようになってます。どれを選びますか?」
といった感じかと。
最後は依頼者にどれを選ぶか決めてもらうことになるのですが、その意思決定をする上でのお手伝いをすることが、専門家ができることだというのが私の考えです。
現在京都では新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が継続していますが、あれもいろんな専門家の意見を聞いた上で、最後に判断しているのは政治家の方ということになります。
そういったイメージで考えていただけるとわかりやすいんじゃないかと思います。
選択肢を選ぶには、自分なりの判断基準が必要
では、専門家をうまく使える経営者とはどんな方なのか?
専門家のできることが、
- 専門家の見地から
- 選択肢を提示して
- 依頼者の意思決定をサポートする
ことだとすると、提示を受けた選択肢から、自分なりの判断基準を持って、選択肢を選べる方、ということになります。
つまり、
「自分の経験・知識・見地から、自分なりのしっかりした判断基準をもった方」
なんじゃないかと。
このように書くと、依頼する側の方からすると、
「自分がわからないことを解決するために専門家使ってるのに、専門家使うのに自分も勉強しろってことか?」
と思われるかもしれません。
これについては、例えば税金について税理士に話を聞く場合に、同じだけの税務の知識を持つべき、というつもりはまったくありません。
それよりも、
- 提示された選択肢に、疑問点や気になる点を見つけられる「センス」
- 選択肢から自分に合ったものを選べる自分なりの「判断基準」
- 最後に自信をもって決められる「決断力」
といった要素が大事です。
これらの要素は、いってみれば経営者に求められる要素ともいえますので、経営者としての力量を磨いていただくことが、専門家をうまく活用することにつながるのではないかと。
私なりの「専門家を上手に活用できる経営者像」をまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。
異論・反論いろいろあるかとは思いますが、せっかく専門家に仕事を依頼される以上は、上手に活用していただきたいな、と。
専門家を使う側の方の参考になれば幸いです。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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