先日、大江千里さんの「9番目の音を探して」という本を読みました。読んでいてキャリアチェンジについていろいろ思うところがありましたので、感じたままを書いておきたいと思います。

「経理やってたんだから、税理士試験なんてカンタンでしょ」に感じる違和感

最初に告白しておきますと、高校生くらいの頃大江千里さんの曲が好きでした。

男子高校生が聞くような感じの曲ではなく、恥ずかしくて周りにはまったくいえませんでしたが、その頃出たアルバルはすべて聴いたと思います。

その後、大学生・社会人と進むうちにほとんど曲を聴くこともなくなり、

「そういえば最近テレビとかでも見なくなったな」

と思っていた頃に、ジャズピアニストとしてデビューされたというニュースを見ました。

そのニュースを聞いたときは、

「もともとピアノ弾けるから、ジャズピアニストに転向とかできるんだな」

と感じただけでしたが、ご本人がアメリカでの留学生活についてまとめられた「9番目の音を探して」(KADOKAWA)を今回読んでみて、なんて失礼なことを思ったのかと、今さらながら恥ずかしい気持ちになりました。

「●●だから、これくらいできるでしょ」というのは、私自身もついつい陥りがちな思考ですが、物事はそんなに単純じゃない。

よくよく考えれば、自分自身が税理士試験を受けるときでも、

「経理やってたんなら、税理士試験もやりやすいよね」

と言われたことは何度もありました。

そりゃ「簿記論」には入りやすいかもしれませんが、税法は経理やってたからなんとかなるとかいうものではありません。

こうした発言を聞きながら、「そうじゃないんだよな~」と違和感を感じていたことを思い出しつつ、自分が同じ思考を他人に対してしていることに気付かされました。

普通の人が、47歳でキャリアを捨てて大きなチャレンジができるか?

大江千里さんは、47歳のときに日本でのそれまでのキャリアを捨てて、アメリカに留学し、そして実際にジャズアルバムを何枚も発表されるところまで来られました。

ただ、その経過は読んでいて、「悪戦苦闘」「七転八倒」という言葉がピッタリくるような状況の連続。

最初の頃には、授業でのセッションの中で、他のメンバーから

「先生、このクラスにジャズができてない人がいます。なんだか気持ち悪くてソロが演奏できないんですけど」

「9番目の音を探して」(大江千里著)より引用

と言われたこともあると。

私自身が今48歳、恐らく氏がこの発言を言われた頃の年齢とほぼ同じかと思います。

もし今の年齢で簿記論の授業受けてて、20代か30代くらいの人から

「先生、このクラスに簿記論ができていない人がいます。」

なんて言われたら、正直心折れます。

(簿記論の授業ではセッションはないので、こんなことを言われることはまずありえませんが)

これ以外にも、それまでのポップスでの経験が邪魔をして、なかなかジャズが身に付かないといったエピソードが数多く書かれています。

それまで順調に仕事をしてきた人が50歳近くになって、キャリアを捨てて新しい大きなチャレンジができるかと言われれば、正直な感想としては難しいと思います。

そもそも、しばらく収入がなくても生活できるくらいの蓄えがあるかどうか、チャレンジしたことが成功するかどうか、などなど普通は踏み切れない人の方が多いでしょう。

私は40歳のときにそれまで勤めていた会社を辞めて、税理士試験の勉強を始めましたが、40歳でやめた理由の一つが、

「50歳になってからやめたら、そのときには試験を受ける気力がないのでは?」

という不安でした。

新しいスキルを身につけたければ、身につくまで続けること

では、なぜ大江千里さんは47歳でそれまでのキャリアを捨てて、ジャズピアニストに転向できたのか?

本を読んだ上での私の結論は、「諦めなかったから」ということです。

当たり前すぎる話ですが、どれだけうまくいかなくても、留学をやめることなく続けたというその一点に集約される気がします。

もちろん人生でチャレンジした方の中には、資金が尽きた、やむを得ない事情で中断せざるを得なかったなど、様々な理由で断念している方も多く、「運」という要素も否定はできません。

ですが、「諦めなかった」というその点がなければ、今の結果にはつながっていなかったのではないかと。

年齢が進むにつれて気力が少しずつなくなっていく感覚もありますが、最後は年齢どうこうよりも、そうした気持ちを持ち続けられるかどうかなんでしょう。

また、ここまで大きなチャレンジでなくても、今後の自分のキャリアを考えたときに、新しいスキルを身につけたいと思うことはあります。

そうしたスキルがなかなか身につかない、ということで悩まれている方も多いのではないでしょうか。

でも結局は、スキルが身につくというのは、身につくまで続けられるかどうか、その違いだけなんだろうと。

なにごとも最後までやりきった人だけが、そこにたどり着ける。

段々と50歳という年齢が見えてくる中で、今後のキャリアやスキルについて考えることもありますが、「方向性を決めたら、できるまで諦めない」そういう気持ちを持つことの大切さに、今回改めて気付かされました。

この本を読んで元気をもらいましたので、「もう50歳」ではなくて、「まだ50歳」という気持ちで頑張ってみることにしようかと思います。